あかあかくろくろ

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陰謀論時代へのカウンター『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(ネタバレあり)

1960年代、アメリカとロシアは熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていた。政府関係者を名乗る怪しい男・モー(ウディ・ハレルソン)にスカウトされたマーケティングのプロ・ケリー(スカーレット・ヨハンソン)は、あらゆる手を使って失敗続きのアポロ計画を喧伝するべく動き始める。NASAの発射責任者・コール(チャニング・テイタム)は、一度は彼女に好意を寄せたものの、その身勝手なやり方に反発する。しかしケリーは秘密裏に、月面着陸のフェイク映像を作り始めてーー。  132分のうち60分くらいま

    • 何も打ち込めない私へ 映画『ルックバック』(ネタバレあり)

       各所で絶賛されている映画『ルックバック』を劇場で鑑賞した。親と観に来ている小学生もいた。  小学生の藤野は、同世代の中では絵がうまく、学級新聞に連載している4コマ漫画は評判で、クラスメイトからも一目置かれていた。  ある日、担任から呼び出された藤野は、不登校の同級生・京本の絵を学級新聞に掲載したいから枠を譲ってほしいと相談を受ける。軽い気持ちで快諾した藤野だったが、掲載された京本の絵は、藤野とは比べ物にならないクオリティのものだった。藤野はそれを機に筆を折ってしまうが……

      • 極端なトラウマ克服法 映画『FALL/フォール』(ネタバレあり)

         劇場で鑑賞しなければ正当な評価ができないであろう映画『FALL/フォール』を配信で観た。  地上600mある「か細」くて「心もとない」電波塔に、女性クライマーのベッキーとハンターが挑む。ベッキーは最愛の夫を亡くした弔いとして、ハンターは命試しとして。行って帰ってくるまでに1,2時間あれば大丈夫と鉄塔を登り始めた二人だったが、お調子者・ハンターによる余計な行動により、登頂後すぐにハシゴが落下してしまう。サバイバル生活を強いられることになった二人には、水も、食料も、何もかもな

        • 多分誰もが悪 濱口竜介『悪は存在しない』(ネタバレあり)

           ちょっと規格外の面白さだった。  長野県と思しき山奥の集落に暮らす安村巧(大美賀均)とその娘、安村花(西川玲)。巧は村の便利屋として働いており、その朴訥さと山暮らしスキルの高さで町民から頼られている。花は、迎えを忘れがちな父親に腹を立てるでもなく、一人で山道を歩き家に帰る。  ある日、東京の芸能事務所が運営元となり、村の近くにグランピング施設を建設する計画が持ち上がる。交渉役の高橋啓介(小坂竜士)と黛ゆう子(渋谷采郁)は町民への説明会を開くが、地域の環境破壊のことなど考え

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          お金をかけた悪ふざけ 北野武『首』(ネタバレあり)

           Netflixで北野武監督作『首』を観た。  前評判がそこまで高くないこともあり劇場スルーしていたが、とても面白かった。  暴虐の限りを尽くす織田信長(加瀬亮)に不満を抱く家臣の豊臣秀吉(北野武)や明智光秀(西島秀俊)たちは、荒木村重(遠藤憲一)の反乱をきっかけに、自分が織田にとって代わり天下人になるための計略を立てる。各々の思惑が動き始めるなかで、織田は跡目を餌に家臣たちを奔走させるが…。  北野武の歴史観がよくわかる。戦国時代なんていうのは、あっという間に人が斬られ

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