見出し画像

陰謀論時代へのカウンター『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(ネタバレあり)

 1960年代、アメリカとロシアは熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていた。政府関係者を名乗る怪しい男・モー(ウディ・ハレルソン)にスカウトされたマーケティングのプロ・ケリー(スカーレット・ヨハンソン)は、あらゆる手を使って失敗続きのアポロ計画を喧伝するべく動き始める。NASAの発射責任者・コール(チャニング・テイタム)は、一度は彼女に好意を寄せたものの、その身勝手なやり方に反発する。しかしケリーは秘密裏に、月面着陸のフェイク映像を作り始めてーー。

 132分のうち60分くらいまでは重い映画だった。重厚って意味じゃなくて、上滑りしている感じ。しかし徐々にエンジンがかかり始め、見終わってみるとなかなかのエンタメ作品だった。世界的に興収コケているのはもったいない。
 隆盛極める陰謀論へのカウンターになっている。よくフェイクと言われるアポロ11号の月面着陸映像だが、それを逆手にとって、フェイク動画の作成現場を取り上げる。アイデア倒れしそうにも思えるが、いやはや、手に汗握るラストが待っている。黒猫がキーモチーフになっている。冒頭、コールは黒猫が横切ると不吉と思い込み、黒猫を恐れている。しかし最後に彼を救ったのは黒猫なのだ。思い込みの罠。

 チャニング・テイタムは実直なセクシーさを表現させたら当代ナンバー1だろう。ミスの許されない今回のような職業には合う人選。スカーレット・ヨハンソンは、不幸な生い立ちで詐欺を繰り返してきたという難しい役柄だったが難なくこなしていたように思えた。

 コールの部下とケリーの秘書のエピソードがとってつけ感があったのと、モーはもっとケリーを追い詰めないと説得力がないと思った。でも最後に「全部うまくいったからいいや!」と嬉々としてダンスをしているウディ・ハレルソンの笑顔が見れただけでこの映画は満足なのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?