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「わからないながらも一緒にいること/い続けること」の大切さ ―油田優衣さん―

【感想を送って下さった方】油田優衣さん
京都大学大学院教育学研究科修士課程一回生。脊髄性筋萎縮症(SMA)の当事者として様々な介助者と共に自立生活を送りつつ、障害者運動の実践や障害学の研究をされている。



髙木さんが弟さんのことを「知りたい」と思って撮り始めたというこの映画。でも、この映画が私たちに伝えてくれるのは、他者の「わからなさ」、他者との「つながりあえなさ」、それゆえの「さみしさ」です

私たちは、ついつい、他者を「わかった」気になって、自分の理解可能な範囲に押し込め、押し留めようとしてしまいます。私自身もこれまで、自分の行為や言動を他者の理解可能な範囲の中で解釈され、その解釈を押し付けられてきたことがあります(なお、その解釈の一部は、「障害者」や「女性」についてのステレオタイプに基づいて行われたものと言えるでしょう)。

そのような場面に出くわすたび、「私は、相手の理解可能な範囲内でしか生きることができないのだろうか……」と息苦しさを覚えます。だから、私はなんでも「わかろうとする人」「わかったと思っている人」が苦手です。しかし、かくいう私も、他者に対して、その人のことを「わかった」気になり、自分の理解可能な範囲に押し留めようとしている自分をしばしば発見します。

きっと、私たちは、他者が自分の理解可能な範囲にいてくれたら「安心」なのだと思います。だから、他者をそこに押し込め、押し留めようとしてしまう。でも、その行為は、他者が生きられる範囲を限定することでもあり、他者から「自由」を奪うことでもあります

だからこそ、私がこの映画のなかで何よりも素敵で、重要なメッセージだと思うのは、「わからないながらも一緒にいる」ということです。他者を「わかった気」にならず、わからないしんどさやつらさを受け止めながら、一緒にいること/い続けることーー他者と関わる上で非常に根本的で大事なことをこの映画は私たちに気付かせてくれます。


(編集担当:Linda)

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【上映委員 クチコミ】

池田さんの愛読書は『キリン解剖記』

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