ロビーでの交流の様子 (荒木大輔)
文学には古くから”theatrum mundi”(世界劇場)という考えがあります。そのエッセンスは、シェイクスピアの『お気に召すまま』の有名な一節「世界はみな舞台、男も女もみなその役者なのだ。」に凝縮されているように思います。人生を演劇に見立て、人間は何らかの「役」を演じているのではないかということを示唆するこの思想は、一歩間違えれば「私」というものなど儚いもので、大きな「世界」においては単なる「モノ」に過ぎないという虚無主義的な考えに傾いてしまう危険をも孕んでいると私は考えています。
さて、私がこの「世界劇場」という考えを紹介したのは、シェイクスピア作品を取り上げたいからでも、この考えの素晴らしさ、あるいは危うさを紹介したいからでもありません。そうではなく、例えば上に引いたシェイクスピアの言葉を、自分の生に擬えた時(つまり、シェイクスピアが用いた文脈などを一旦保留にし、自分の日常に即してかみ砕いた時)、次のように言い換えることができるのではないかと、上映活動を続けながら感じているためです。それは、「私にとって、世界はみな真剣な舞台、私たちはみなその主人公なのだ」というものです。
「私」という人間から他者を見た時、「私」に見えているもの。それはあくまでもその人の外面であり、その人がpublicな場において見せている(もしかしたら演じているのかもしれない)一面に過ぎません。その人のprivateな側面など推して知るほかはなく、普段の交流を通してその人を「理解」することは本当に難しいことなのではないか、と常々感じています。
けれど、ではその人が「私」に見せてくれるものは所詮「外面」に過ぎないと切り捨ててよいのかと言えば、無論そんなはずはありません。その人にとって、その時「私」に見せてくれているものも、まぎれもないその人の真剣な「生」の一つの側面なのです。
そこから私は次のように考えるようになりました。たとえその人の「外面」しか最初は見えてこなくとも、まずは、自分はその人のある一面しか知らないのだという事実を受け入れ、またその人の真剣な姿勢を大切にし、そこからその人と共に生きて行く道を探すべきではないか。
先述の私の言い換えに即して言い直してみましょう。世界は「虚構」であるとか、「私」が見ているのはその人の「外面」に過ぎないなどと言って、悲嘆したりすべてを否定したりしない。そうではなく、確かに世界に向ける「私」のまなざしは事物や人物の表面をなぞるもの(=「私」が作り出した舞台)であったとしても、まずはそのような現実を認め、更に彼らの真剣な姿勢を受け止める。そしてそれぞれの現実(舞台)に一人の主人公として立ち会いながら、「私たち」は互いを知っていく。そんな模索があってもいいのではないか、と思うのです。
さて、こんなことを私が考えるようになったのは、まさに髙木監督が色々な方との交流を大切にしておられるのを近くで拝見するようになったためです。まずは相手とじっくり向き合い、その人が考えていること、語っていることを大切にする。けれど、それでもまだ見えてこないことがあることも悟っている。そして、相手との間のやりとりを通して、少しずつ相手を知っていく喜び、一緒に前を向いて歩んでいくことの大切さをかみしめている。さらに言えば、このような営みが持つ楽しさを、誰よりも大きく体現している人だと思うのです。
さて、私のしかつめらしい話はここまでにして。今回はこんな監督や、彼の姿勢に共鳴する上映委員たちが、シアターの外で、お越しくださった観客の皆様と交流している様子を上映委員・副会長の荒木君に紹介してもらいましょう。私がここまで申し上げて来たことが少しでも伝わっていればいいなあと思います。
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本日は、映画「僕とオトウト」関係者によるロビーでの交流をご紹介!
監督とお客様の距離が近さがミニシアター上映のいいところ。
名刺交換まで!
写真左の女性は京都みなみ会館館長の吉田さん。ロビーでの交流をここまで受け入れて下さる、素敵な方です。
青い服を着た奥の男性は御代田太一さん。上映後トークショーのゲストの方です。映画を観終わった後に話せるこの時間、贅沢ですよね。
この日のゲストは、頭に巻いた紺のバンダナがトレードマークの池谷薫プロデューサー。たくさんのお客様に囲まれています。
上映委員メンバーもロビーにいます。写真左はこの記事を書いている副会長の荒木です。写真右は上映に来てくださった髙田美貴さん。実は彼女、絵を描くアーティストなんです。撮影してくださったのはお母様の髙田敦子さん。
中央の女性は上映委員の寺下美子さん。多い時には1日で27名もご友人を上映に連れて来てくださいました。ロビーでの交流を豊かなものにしてくださっている陰の立役者です。
上映委員の清﨑さん(写真左)と中浦さん(写真右)。この日は僕(荒木)と寺下さん合わせて上映委員が4名も劇場にいました。
上映前、ロビーの中が溢れかえる日もありました。そんな日は…
外でお客様にお待ちいただくことがあります。そんな時、監督は…
外でサインを書いています! アグレッシブ!!
映画を観る前や観た後に映画関係者とお話が出来る、そんな愛おしい時間がミニシアターには流れています。映画「僕とオトウト」関係者一同、皆様との交流を楽しみにお待ちしております。
(上映委員・荒木大輔)
(編集担当:Linda)
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【上映委員 タレコミ】
普段お世話になっている先生方に、もしお時間があったら映画を観に来てください!ってお願いしています。どの先生も、とても気になりますので、観に行きますね!と言ってくださいます。嬉しいですよね。そしてお礼を言って、ウキウキしつつダッシュで失礼するようにしています。だって、その後にはきっと「ところで修論の方はいかがですか」という禁断の質問が待ち受けていることに私、気づいてしまったんですもの…
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【劇場公開情報】(2021年10月27日現在)
前半は本編上映、後半は監督&日替わり特別ゲストによるトークセッションを行います!詳細はこちら→https://boku-to-otouto.com/infomation/
京都 @京都みなみ会館(本編48分、トークセッション30分)
※10/29以降は上映のみ(トークセッションは引き続き神戸での上映で行います)。
10/25(月)-10/28(木) 19:00~
10/29(金) 10:00~
10/30(土)-10/31(日) 14:00~
11/1(月)-11/4(木) 10:00~
11/5(金) 14:00~
11/6(土) 12:00~
11/7(日)-11/11(木) 14:00~
https://kyoto-minamikaikan.jp/movie/12338/
神戸 @元町映画館(本編48分、トークセッション60分)
10/30(土)-11/5(金) 12:30~
https://www.motoei.com/post_schedule/
大阪 @シネ・ヌーヴォ(本編48分、トークセッション30分)
11/6(土)-11/12(金) 13:45~
http://www.cinenouveau.com/sakuhin/bokutootouto.html
「僕とオトウト」公式サイト https://boku-to-otouto.com/
お問い合わせ bokutootouto@gmail.com
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