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「上司だって疑う」のが良い組織の条件

先日、尊敬する投資家で経営者の方と食事をしました。仕事の関係で医療業界のことを勉強されているそうで、酒の肴として話してくれたことが示唆に富んでいたので紹介します。

「先生」と呼ばれる人たちだって間違える。学校でも医者でも弁護士でも会計士でも。だから、病院に行くなら、休診日の翌日の午前中がベストだよ。休日にリフレッシュして、疲れもないタイミングに診てもらうのが一番良いよ。午後は「先生」だって疲れてくるからお勧めしないね。

これ、会社の上司や先輩でも同じことが言えます。上司・先輩だって間違えるし、1日という短い時間の中でさえ判断にブレが生じます。

上司や先輩など、役職が上だったりキャリアが長かったりする人の発言や判断は、つい「正しい」と思いがちです。間違った判断を指摘する人がいないと、事業や会社の進路に悪影響を及ぼしかねません。また、上司や先輩へのちょっとした疑問や不満が溜まり続ければ、離職の原因となったり仕事の質が落ちたりします。

社員が上司や先輩の発言を鵜呑みにせず、時に疑い意見できる環境をつくることが良い組織の条件です。

1.良い組織の定義と条件

良い組織とは、社員が活き活き働くことで事業が成長していく組織です。自走組織とも呼ばれます。そんな組織をつくる上で欠かせない条件が「風通しの良さ」です。

円滑なコミュニケーションはチームワークを強化し、組織のスピーディーな意思決定や行動に繋がります。逆に、コミュニケーション不全や隠ぺい体質は、判断ミスや不正を招きます。

とはいえ、上司に異を唱えるのは難しいものです。立場に関わらず気兼ねなく発言できるようにするには、組織内の心理的安全性を高める必要があります。

2.組織の心理的安全性を高めるには

心理的安全性の高い環境づくりはリーダーの重要な仕事です。
これ、先述の投資家兼経営者の方がとっても上手なんです。

例えば、彼の投資先で思うような成果がみられなくても、前向きに将来の可能性やどうしたらより社会に役立てるかを議論してくれます。代表を務める会社は数年内にIPOの可能性があり苦労だらけだと思いますが、いつも明るいです。また、ひとの話をよく聞いてくれます。斬新なアイデアにも「いいじゃない、すぐやろうよ!」と背中を押してくれ、彼と異なる意見を伝えても「確かにそれもあるな」と受け止めてくれます。さらに、先述の酒の肴を披露するような愛嬌・ユーモアもあります。だから、彼との間では臆せずに活発な議論ができます。

つまり、心理的安全性を高めるために、リーダーは「社員の話をよく聞く」「挑戦を推奨する」「異なる考えや意見を歓迎する」「愛嬌やユーモアを大切にする」ことが重要といえます。

3.「上司も間違える」を前提とする

心理的安全性を高めるアプローチとして、「上司は正しい」というバイアスを排除する方法も有効です。

2002年に行動経済学への貢献でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授の著書「ノイズ」(村井 章子訳、早川書房)をご存じでしょうか。医師や法曹界のプロフェッショナルが日々起こす間違い、無意識のミスについて書いています。

これを読むと、「医者は正しい」「弁護士は正しい」といった無意識のバイアスが崩れます。

以下は医療現場での判断のブレの事例です。

心臓病
ステント挿入などの積極的治療が必要かを見極める冠動脈造形図の読み取りにバラつきが大きく、検者間の一致度は31%と低い。

乳癌
3件に2件近くについてガンではないのにガンと診断した。マンモグラフィーの結果からガンを半分以上見落とす先生もいる。

「ノイズ」ダニエル・カーネマン著、村井 章子訳、早川書房

他にも、乳癌と大腸癌の検査の調査事例に言及した次のようなコメントがあります。

複雑な症状を抱えた患者の診察には標準時間(=20分)以上の時間がかかり、そうした患者を何人も診察するうちにどうしてもスケジュールが遅れ気味になって後ろのほうの予約の患者に十分な時間が避けなくなる

同上

チーム医療によって判断ミスを防ぐ試みやガイドライン作成など、細心の注意が払われている医療現場でさえ、完全な「正しい」はありません。いわんや会社の上司をや、です。

4.まとめ

リーダーの重要な仕事である「良い組織づくり」には、上司にも疑問・異論・反論を率直に伝えられる環境が大切です。そのために、社員の話を傾聴し、挑戦を推奨し、異論を歓迎し、愛嬌とユーモアを忘れず、いつも明るく前向きなリーダーを目指していきましょう。

職場を良質にするコンセプトv6_16
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


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