脳を共有する双子の私たち
武德です。
最近、結合双生児について調べていました。
中でも気になったのが、脳を共有する男女の双子ローリ&ジョージです。
頭部は2つあるものの、脳の一部が結合しているとのことで、脳が結合しているというケースは初めて聞きました。
二人の人間の脳が結合しているとどのようなことが起きるのか
私は、性別不合(性同一性障害/頭は男で身体は女)で生まれ、幼少期は女の子寄り、思春期以降は男の子寄りという特殊な状態で育ちました。
そのため自分の中には、女の子を担当する茉莉と、男の子を担当する武德の二人の人間が存在しています。
ひとつの脳の中に男女二人の人間が入っている状態だと、どういうことが起きているのか少し紹介します。
①基本的には片方が起きているともう片方は寝る
「片方が起きていると、もう片方が寝る」と言ったことが起きます。
表舞台に出てる人間が交代します。これは解離性人格障害などのケースでも同じことが起きます。
私の場合は、解離性人格障害とは違い人格が入れ替わっても完全に記憶が飛ぶということはありません。(若干記憶が薄くはなることはあります)
脳の中で男女の割合が変わるのです。通常は男の私80%、女の子20%くらいです。
通常の私は、100%男にはなれないんです。なぜなら私は性別適合手術はしておらず、身体は女性のままなので、「完全に男性ではない」のがデフォルトの状態だからです。
また、女の子の私が男性と性行為をするといった場合は、男の方の私は完全に寝ています。男0%、女100%です。男の私は男性には興味ないし、自分が男性に抱かれているという感覚は自分の中にはありません。身体は共有しているのに、性行為をしたという感覚は私の方には残りません。
先に挙げた男女の結合双生児のローリ&ジョージも、女の子のローリが男性と性行為しているときは、もう片方の双子の男の子は寝てしまうとのことです。お互いのプライバシーを侵害しない、なんだか知らないけどうまくできた仕組みです。
逆に、男の私が100%になるときは、試験などを受けているときです。
何か自分の力をすべて出さないと勝てないときなどは、女の子の方まったく使わないので引っ込んでもらっています。
②意見の衝突はしばしば起きる
男女なので性質が違うし、性格にも大きく差があります。
男の私は、リスクより好奇心が勝つので自分の興味の持ったことは周囲の目を気にすることなく取り組みますが、女の子の方は社会性が強いので他の人と違うことを好みません。
男の私が強いとき、女の子の私が強い時でまったく考え方が変わってきます。今は男の私が強いので、力が拮抗せず衝突が起きていません。
③どちらかをずっと出していると、もう片方はどんどん消えている
これは、今までの人生で何度か経験があります。
10年ほど前、自分が性別不合だと気づかず、本当の性別は男性の方なのに、身体の方の性別の女性で就職してしまったときのことです。
女性として立振舞ないといけないと思っていたため、本来の男の方の性別の方を使わなくなってしまいました。その結果、極端に記憶が薄くなったり、それまで自分がやってきたことがどんどん出来なくなったりしてとても困った記憶があります。
逆に、本来の性別の男性が強かった時期は、女性としての自分を全く使わなかったので、スカートを履こうとすると違和感が強くなるということはありました。もし、そのタイミングで自分が性別不合だったと気づいたら、「身体も男性して、頭と身体の性別を一致させたい」と言っていたと思います。
わたしたちふたりはどういう関係なの?
身体を共有した双子である
身体が1つで人格が複数というと解離性人格障害を想像される方が多いと思いますが、解離性人格障害の場合は、それぞれの人格が「兄弟、姉妹」というケースは通常見かけません。人格が分離するのはストレスから自分を守るための防衛機能なので、「自分ではない全くの別人」である必要があるためと考えられます。
一方、私の場合は、結合双生児の方たちのような「身体を共有した双子」の状態に近いのです。
女の子の私とは、物心ついたときから、今までずっと一緒にいました。
二人が別々の人格だったと自覚したのはごく最近ですし、お互いをどう思っているのか未だによくわからない部分が多いです。
しかし、なんとなく私が双子の兄で、女の子の方が妹という感覚があります。少なくとも女の子の方が姉ではないですね。
身内に湧く情のようなものがある
自分は女の子の私をこう思っているんだと思ったことがあります。
これまで男の私は、女の子の私が何か嫌な目に遭わされて怒ったことが2回だけあります。
1回目は、自分が性別不合だと気づかないまま、高校に進学したときのことです。その時は男性の自分が強いままなのに、女子生徒として学校に通わないと行けなかったため、性別が男女どちらにも振り切れられず、武德と茉莉が交代交代に出てなんとかその場をしのごうとしていました。
高校の同級生に、少し意地の悪い男の子がいて、女の子の私に意味もなくちょっかいを出していたんです。それを見て私は、「僕の妹をいじめる奴は許さない」とという言葉がふと心の中で湧いたのを覚えています。
ただ、このときは完全に「自分は中二病で、男女二人の自分がいるような感覚になってるんだな」と思ってました。まさか本当に男と女の自分で別れていたんだと知ったのは、その15年後でした。
2回目はごく最近です。
女の子の私にすごく好きな人ができたのですが、その人にもいろいろ考えがあって、敢えて冷たく接して、自分から女の子の私の興味を失くさせそうとしていたみたいです。
でも私は、わざわざそんなことする必要はないし、そうしたところで余計に女の子の私を傷つけるだけだと思ったのです。だからそのときは強い怒りのエネルギーが湧きました。これは自分の兄弟がいじめらたときなど、自分の身内が傷つけられているのを見たときの気持ちと同じだなと思いました。
以上、ちょっと不思議なお話でした。
最後になりますが、皆様へお伝えしたいことです。
人間、みんながみんな正しい状態で生まれてくるとは限りません。
身体がくっついた双子で生まれてくることもあれば、頭は男、身体は女の性別不合で生まれてくることもあるのです。
そんなとき、常識では考えられない不思議なことが起きます。
なかなか信じてもらえない話かもしれませんが、少しでも興味を持っていただけると嬉しいです。
28歳の時「ゴメン、本当の性別女じゃなくて男だった」を食らった性別不合の当事者です。日常的に男女の性別使い分けを強いられそのまま根付いてしまった奇妙な人生。サポートや紹介していただけるメディアさんも募集しています。