就活アウトロー採用出身者をアクセンチュアはどうマネジメントしているのか?
「多様な視点をもつ人材を採用したい」という思いから、就活アウトロー採用経由で採用活動を行っているアクセンチュア株式会社様。
今回は「就活アウトロー人材の採用・育成」をテーマに、アクセンチュア株式会社の寺尾和幸さんと、特定非営利活動法人キャリア解放区の代表理事である納富順一の対談セミナーを開催しました。この記事では、その様子を再構成してレポートします。
就活アウトロー人材を採用した理由
納富:本日は、アクセンチュアの寺尾さんに、就活アウトロー採用(※以下アウトロー採用)経由での採用や育成ノウハウをおうかがいできればと思います。
寺尾:アクセンチュアの寺尾と申します。お客様のIT運用保守のアウトソーシングを行う部署に所属しており、運用品質改善とコスト最適化の実現をお客様と一緒に目指しています。
納富:アクセンチュアさんとは、9年前のキャリア解放区の設立当初から一緒に就活アウトロー採用に取り組んできました。「多様な視点、バックグラウンドをもつ人材を採用したい」というお考えのもと、これまでアウトロー人材を採用されていますね。
寺尾:海外で働いていた人、プロスポーツの世界にいた人など本当に多様な人材とお会いしてきました。
納富:面接では、どのようなポイントを重点的に評価されていますか。
寺尾:一番重視するのは、「継続して新たなスキルを獲得することに興味や喜びを持つ人か、成長し続けることにモチベーションを感じる人か」です
納富:なるほど。それをどのように見極めるのでしょうか?
寺尾:参考になるのは「アウトロー履歴書」です。キャリア解放区を通じて面接をした方は、一般的な履歴書とはまったく異なる、型にはまらない履歴書を持ってこられます。そこには、普通の履歴書では省略するようなことも書いてあります。意外な経歴だったり、前の仕事を辞めた理由だったり。その内容がきっかけになって会話が進み、相手の人となりが見えてくることが多いです。
納富:アウトロー履歴書を書く際には「自分自身のことを自由に表現してください」と伝えています。フォーマットの指定も運営側の添削もなく、読んでくれる企業様の想定もせずに、ひたすら自分と向き合って履歴書を作ってもらいます。
SOSを見逃さないための「雑談のミーティング」
納富:入社後は、どのようにコミュニケーションを取っているのでしょうか。
寺尾:2~3か月に1回、1対1の面談をして、「今の仕事、どう?」「もっと新しいチャレンジをしたいかとか、希望はある?」などといった会話を繰り返します。
それに加えて、1週間に1回、複数人で集まって雑談する時間を設けています。そういう場になかなか来てくれない人には、お菓子を持って行って話しかけたり、ランチに誘ったりといった工夫も。1~2週間に1回は、全員と会話をするようにしています。
納富:1~2週間に1回とはすごいですね!リモートでも同じですか。
寺尾:リモートの場合でも、週に1回、アジェンダを決めない打ち合わせを設定して、複数人で雑談することにしています。その場で「ケアが必要そうだな」と思った人とは、個別に話をしますね。
納富:「ケアが必要そう」というのは、元気がなさそう、ということですか。
寺尾:そうです。話したいことがある人や悩んでいる人って、雑談のミーティングに来てくれてもずっとミュート設定で、発言が少なくなります。話題を向けても、口ごもったりして。
納富:小さなSOSサインを見逃さないようにしているのですね。忙しい中、みなさんが定期的に集まるのもすごいです。
寺尾:管理職である私から声をかけられたから仕方なく……という感じじゃないでしょうか(笑)。
ただ、アジェンダを設けないのはルールにしています。アジェンダがあると、「アウトプットが求められる」「準備しなくてはいけない」という雰囲気になってしまうので。
納富:アジェンダがないと、話題に困りませんか?
寺尾:いえいえ。実は雑談のミーティングは、回を重ねるほど話が弾むんですよ。前回「資格の勉強をしています」という話をしてくれた人がいたら、「資格試験の勉強はどう?仕事との両立は大変でしょう」というふうに、会話を始められますから。
前回の話を覚えておけるように、全員分の雑談メモを用意して、記録するようにしています。
納富:仕事以外の情報が溜まれば溜まるほど、雑談が盛り上がりそうです。
寺尾:元気がない人って、プライベートの話をしなくなる傾向があります。そこも気をつけて見ていますね。
小見出し:「正社員を目指す人」と「今のままでいたい人」で育成方針を分ける
納富:部下のモチベーションアップに悩む管理職も多いと思います。寺尾さんは、どのように一人ひとりをモチベートされているのでしょうか?
寺尾:「長期的なキャリアパス」と「短期的な目標」の2つを考えてもらい、定期面談で「前回立てた目標はどこまで進んだ?」「心変わりはある?」と質問して状況を確認の上、適切なアドバイスをします。
納富:目標と振り返りですね。
アウトロー採用の人材は契約社員からスタートしますが、正社員を目指す人もいれば、契約社員希望の人もいるかと思います。本人の希望に合わせて柔軟に対応されているのでしょうか。
寺尾:正社員を目指す人には、正社員になるために必要なスキルセットを伝えるなど、成長のためのアドバイスをします。契約社員を希望する人には、求められる業務水準を達成する方法を一緒に考えます。
納富:そのあたりをうまく分けているのは珍しいですね。会社としては、期待する一定以上のパフォーマンスが出ていればOKという考え方なのでしょうか。
寺尾:そうですね。昇進を希望するかどうかは本人次第ですから、そこを伝えた上で、本人に選んでもらうことにしています。
ただ「ずっと今のままでいい」という人には、そのままでいることのリスクも伝えなければなりません。家庭を持ち、子供が出来るなど、ライフステージが大きく変わった場合やはり収入は無視できないですから。その上で、最終的に自分のキャリア志向を選択してもらいます。
納富:なるほど。なんとなく同じ仕事をしているうちに年齢を重ねて、いざどこかに移ろうとしても難しい……となる可能性は大いにありますからね。
就活アウトロー採用人材の「自己開示力」で組織が変わる
納富:アウトロー採用経由で入社したメンバーについて、他の同僚となじんでもらうための工夫はされていますか。
寺尾:実は、あまり工夫の必要を感じていません。というのも、アウトロー採用で入社するメンバーは、自己開示が非常に得意です。
アウトロー採用のプログラムに参加したことで、自己開示の習慣がついたからでしょう。自分のことをよく話してくれるから、お互いのパーソナリティを理解し合えて、すぐになじんでいますね。
その結果、離職率は低いですし、お互いの得手不得手を把握して、自発的に「この仕事はこの人に任せよう」「あの仕事は得意な私がやります」と融通し合える、自立的な組織になっています。
納富:アウトロー採用の人材にはそんな特徴があるんですね。うれしいお話です。
寺尾:しかも、アウトロー採用の人材が積極的に自己開示してくれるからか、他のメンバーも自然と自己開示するようになるんです!アウトロー採用人材のおかげで、いい空気が醸成されています。
私自身も、自分の失敗や悩みを積極的に自己開示するようにしています。「寺尾さんが言ってるから、私も言ってみよう」「寺尾さんも悩んでいるし、僕も同じ悩みを持ってていいんだ」と思ってもらえるといいなと。
納富:上司も失敗しているんだ、悩んでいるんだと思うと、安心感がありますよね。
アウトロー採用人材の育成で苦労したこと
納富:入社後の教育で苦労されたことと、よかったことをお聞かせください。
寺尾:まず、苦労したことからお話ししましょう。入社後は目標を立ててもらうことにしていますが、中には目標設定が苦手な人もいます。「目標を立てたことがありません」「どういうふうに考えていいのかわからない」という人もいますので、目標設定には苦労します。
納富:それは大変そうですね。時間をかけて一緒に考えて、「まずはこれくらいやってみる?」「どう、できそう?」と聞きながら設定するんでしょうか。
寺尾:おっしゃる通りです。目標がない人には、「今の仕事は、どうなったら楽かな?」と質問します。やはり人間は楽をしたいものですから、「こうなると楽なんですけどね」とぽつりぽつりと話してくれるもの。そうすると、目標は立てられたも同然です。
納富:なるほど。目標というと難しく感じるから、違う言葉で投げかけてみるんですね。
寺尾:それから、「アクセンチュア=コンサルティング」という確固たるイメージを持って入社する人もいて、仕事の期待値合わせに苦労することがありますね。
もちろん、面接のときに実際の仕事内容を伝えているのですが、それでも現場に出てもらうと「あれ?なんだか地味な仕事を振られたぞ」という受け取り方をする人もいます。
納富:そのときはどんなふうに対応するのですか。
寺尾:「コンサルタントの仕事は、現状の業務における課題とその解決策を見つけて、クライアントの業務改善をサポートする仕事です。今あなたにやってもらおうとしている業務は、地味に見えるかもしれないけど、どこかに必ず課題、改善すべきポイントや効率化すべきポイントがあるはずです。これも、改善できるポイントを探す訓練だと考えてみてはどうだろう?」と伝えます。
納富:目の前の仕事の意義を伝えるんですね。
どんな業務でも、無駄を省いて効率化することに喜びを感じるタイプもいれば、そうではないタイプもいます。相手がどんなタイプか、面接でわかるといいですよね。
寺尾:そこはやはりアウトロー履歴書が役立ちます。先ほどお話しした、キャッチの仕事をしていた人は、改善ポイントの発見に長けていて、入社してからもどんどん業務改善を提案してくれました。
納富:面接での対話も重要ですね。「よかったこと」についてはいかがですか?
寺尾:アウトロー採用の人材に限ったことではありませんが、その人の成長に携われることですね。正社員登用されて別のプロジェクトに参画する人がいますが、そういう人とたまに話して「楽しくやっています」と言われるとうれしいですし、そのプロジェクトの管理職から「あの人、すごく活躍しています」と言われたときは、本当にうれしい気持ちになります。
納富:アウトロー人材の活躍を聞いて、私もうれしいです。寺尾さん、本日はありがとうございました!