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「僕らにできる7つのこと」 〜社会への手触りから考える、明日の社会と倫理観〜

こんにちは! 「ぼく倫」です 🚩

この記事は、ぼく倫チームが、社会に対してアクションを行う実践者10名へのインタビューを行い感じたことをまとめ、作成したレポートの紹介です。未曾有のパンデミックを乗り越え、その先の社会をどう生きるか? ぜひ一緒に考えましょう。

📥 レポートの閲覧はこちらから

以下のフォームにて、いくつか質問に回答いただくとダウンロードいただけるPDFデータをお送りします。ダウンロードをご希望の方は、お手数をおかけしますが以下のリンクよりお願いします。

🌱 はじめに

「ぼく倫」は、まだ表面化されていない問題意識や価値観に関する情報をまとめ、問いかけていくことで、「自分はどう生きたいか?」という一人ひとりの倫理観を考える機会やヒントの提供を目的とした活動です。
これまでの当たり前が、ある日突然当たり前では無くなってしまう。そんなことが起こり続ける現代だからこそ、どう生きたいかを考え、家族や友だちと会話したい。そういった、社会を生きる上での考え方のアップデートに繫がるきっかけ作りに取り組んでいます。

■ 語られるパンデミック後の社会

未曾有のパンデミックを乗り越え、その先の社会をよりよいものとするために、私たちはどういった生き方をとるべきか?
世界の知識人は、自己中心主義から「利他主義」への転換を提唱しています。ジャック・アタリ氏は、利他主義という最も合理的な利己主義、つまり「合理的利己主義」へ向かうことを促すために、以下のように語りました。

「人類は未来について考える力がとても乏しく、また過去の負の遺産を嫌い忘れてしまうため、それが取り除かれると、これまで通りの生活に戻ってしまう。未来を助けるためには、私たち全員が、あらゆる立場から次の世代の利益を大切にした行動を取ることが必要だ。」

また、野中郁次郎氏・小泉英明氏は、自己中心主義から、共感を含む利他主義へ向かうことを促すため、以下のように提言を出しました。

「組織のリーダーに求められるのは『何のために事業を行うか?』という目的と併せ『倫理的に恥じない事なのか?』を問いかける力である」

さらに、人に対してだけではなく、社会、環境、未来を含む「周囲」に対する想像力・共感性を持って生きることをすすめ、競争ではなく協力を取ることが重要だと説いています。

生活者視点で捉え直してみる

私たちは、上記のような「利他主義=合理的利己主義」の中でも、「他者のための行動が回りまわって自分の価値を最大化する」という考え方に強い共感を抱きました。そのうえで、マクロで長期的な視点からの提唱ではなく、より生活者に近い視点で考えたいと思いました。
そこで今回私たちが行ったのが、専門性をもって活動する同世代(20代)の実践者10名へのインタビューです。彼らが実際に感じた価値観の揺れや変化から、私たち個人が合理的利己主義に向けてできることは何か?を探りました。

🕵️‍♂️ 調査手法

「社会への手触り」から兆候を捉える
パンデミック下の社会を実感として捉えるために、地方行政から、都市工学、飲食事業、スポーツビジネス、微生物科学など、特定の領域に関する「社会への手触り」を持つ10名の実践者へインタビューを実施しました。
インタビューでは、感染拡大の渦中で変化した自身の生活スタイルや活動形態から、継続したいこと、停止したいことなどを、各人の目線から探りました。そして、彼らが活動の中で感じた、社会の反応、価値観の変化を「社会への手触り」として集め、課題・兆し・展望に分け、重ね合わせながら構造化しました。そこから、現在の延長線上にある社会の中で、持ち合わせたいマインドセットとしての倫理観に繋がるヒントを得られないかと分析しました。
今回まとめた7つは、あくまで対話のための原案です。この資料をみなさんと共有することで、一人ひとりが明日の社会をどう生きるか考え、周りの人と対話するきっかけに繋がれば嬉しいです。

①. 相手を想い自分を大切にする

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他者を支えることは、回りまわって自分自身を支えることになる。例えば働き方において、オンライン化を進めることは、様々な事情で自宅で過ごさざるを得なくなった時でも、働き続ける機会を提供するのと同じことだ。選択肢が増えることは、公平性を高めることに繋がる。そして、一時的に広がった選択肢を日常にするためには、当事者だけでなく周りの人の協力が必要だ。
未来は不確実である。助けを求める隣人は「未来の自分」であるかもしれない。自己犠牲でも自分本意でもなく、困った時の支えとなる選択肢を一緒につくる意識を持ちたい。

🚩「助けを求める側」を経験して、「助ける側」の姿勢を学んだ。

ー 今回起きた生活の変化で良いなと思うことは何ですか?

リモートワークという働き方ができるようになったこと。
昨年に体調を崩して、満員電車に乗るとパニック障害が起きるようになって、ある日突然「社会的弱者」になってしまったんですね。仕事は好きで続けたかったけど、会社の制度的に時差通勤やリモートワークが認められなくて、退職を選択せざるを得なかった。

ー それは大変でしたね。今はどうやって働かれてるんですか?

今は新しい会社でオンラインを活用しながら、のびのび働いてます。前の会社も、今回で在宅勤務が認められるようになったみたいで。今回をきっかけに「ふつう」に働くことが難しかった人にも、働き方の選択肢が増えたんだと思う。増えた選択肢は日常に戻っても無くならないで欲しい!

ー 選択肢が増えることに、懸念はあったりしますか?

選択肢と比例して、個々の責任も増えていると感じる。だからこそ、何かでつまづいた人を「自己責任でしょ」と切り捨てるのではなく、助けとなる選択肢もある世の中になって欲しい。

※本文章は、複数のインタビューを基に加筆・修正を加え、再作成しています。


②.時間の使い方や意味を自分で決める

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改めて、自分にとっての時間の使い方、時間の意味を考えてみた。先行きが不安な部分も多いが、自宅での自粛期間中、通勤時間などの自身でコントロール出来ない時間は減り、自由に使える時間は増えた。そうした中で、これまで日々の忙しさに追われ見過ごしていた、家族や友人など、自分の大事な人と過ごす時間の大切さや、常に生産的になろうとせず、肩の力を抜いて自分のペースで好きなことをやる時間の大切さに気がついた。
そして、大人だけでなく子ども達にも、自身の興味・関心を伸ばすことへの時間や機会を作るにはどうしたら良いのか考えたい。

🚩「生産的に生きること」が全てじゃない。

ー 今回起きた生活の変化で良いなと思うことは何ですか?

家族との時間が増えたこと。最初は、自分の時間が取れずにやるべきことが終わらないとか、家族とテレビを見る時間って少し無駄に感じていた。けど、ゆっくりした時間は好きだし、過ごし方は自由だとだんだん思うようになって…。もちろん、社会で何か価値を生もうと頑張ってきた時間が間違いではないけど、なんで「社会の中の一部」であろうとしたのかなという気持ちになりました。

ー たしかに、「社会に価値を生む何者か」でいようとする感覚は無意識にあるかもしれないですね。今後の活動への影響はありそうですか?

ひと月前は本を読んだりゆっくりしよう!と思っていたけど、結局、発信したい気持ちがまた生まれてきて活動しています。やること自体は同じでも、ここだけが居場所じゃないと思うようになった。「これは自分がやらなきゃ!」という使命感があったのが、気負いすぎず自分のペースでやろうと思えています。不要に思う場所には行かないと決められたり、24時間自分が好きなように使えるからかも。

ー 生活が元に戻っても、大切にしたいことを立ち止まって考える時間や、自分の時間をコントロールできている感覚は大事にしたいですね。

※本文章は、複数のインタビューを基に加筆・修正を加え、再作成しています。


③.チャレンジの幅を広げる

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音楽やスポーツなど、イベントを中心とした領域において、今までと同じ形態や内容で活動することに制限がかかっている。それならばと、制限をきっかけに新たな活動に挑戦する人たちが現れている。例えばスポーツでは、遠隔で選手が繋がり得点を競うゲームが始まった。飲食業では、料理人とファンがテレビ電話で繋がり、一緒に料理を作るようなオンライン料理教室がはじまった。教育では、休校期間中の学生に向けてオンラインでの教材が民間主導で続々と作られている。
従来の活動が行えるようになることは、もちろん必要だ。しかしこれからは、今回の制限を受けて反発的に広がった新しい楽しみ方も取り入れることで、今までよりも可能性が増えた日常へ戻ることに期待したい。

🚩今までの「当たり前」が制限され新たなチャレンジに取り組める。

― 今回起きた変化で良いなと思うことは何ですか?

食品業界でいえば、オンラインでのやりとりが一般化して、生産者と消費者の直接的なコミュニケーションがこれまで以上に取れるようになったことです。
これまでは、生産品を売るときは、農家さんが商圏である東京に直接行っていた。みんな、それしか手段がないと思っていたから、それが「当たり前」になっていた。今回をきっかけに、一時的にだけど人同士が直接会えなくなって、私も農家さんとやりとりする方法を改めて模索中です。今はビデオチャットを使ったコミュニケーションを試しています。

ー 農家さんとオンラインでコミュニケーションを取るって新しいですね。

そうですね。新しい手段ができたことで、商品についての会話だけでなく、直接、オンラインで食材のレクチャーを受けつつ、みんなで楽しむような料理教室も開催できるかもしれない。これまでより多面的な活動が広がるように感じています。

※本文章は、複数のインタビューを基に加筆・修正を加え、再作成しています。


④.形式にこだわらず協力する

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苦難を乗り切るために、これまでの形式にこだわらない新たな協力の形が現れている。例えば飲食業では、料理人・農家・地域住民の間でそのケースが見られる。飲食店が軒先を農家の野菜直売所として活用することで、使われる予定だった野菜の消費を住民が助けつつ、遠方まで食材の買い出しをしなくて済むようになっている。また、テナント運営のため休業せざるをえない飲食店の料理人達が、シェアキッチンに集まり、医療従事者や地域で働く人に食事を提供している。
これからの社会では、一人一人が点として自分の専門性を活かしつつ、面としての協力形態を考えることが、私たちの大切なモノを守ることに繋がるだろう。

🚩パートナーを助けることで、自分たちの価値が最大化される

ー 今回新しく始めた活動は何ですか?

建築事業者として、飲食事業者の方々が、食品をオンラインで販売する食品製造事業の開始に必要な申請の仕方をまとめ、発信した。飲食店を助けたいという前提はありつつ、結局は自分たちのためにやっていることなんです。私たちのパートナーは飲食店の方が多く、彼らが盛り上がることで、自分たちも盛り上がることが出来る。だからこそ、飲食店の方が食事作りに集中出来るように、私たちが出来ることを、と考えて実施しました。

ー 活動の結果、どんな反応がありましたか?

発信がきっかけの声掛けはまだですが、資料作成で調べたことは、今後も飲食関係の仕事で使っていける。飲食と同時に食品製造も行えれば、ビジネスにおけるキャッシュポイントを増やせるので、より柔軟な運営が実現するのではと思っています。

ー オンライン販売となると必要なスキルはより多様になりますね

IT系のエンジニアやデザイナーなど、これまで関わることの無かった人たちとの協力が必要ですね。

※本文章は、複数のインタビューを基に加筆・修正を加え、再作成しています。


⑤.想像力を持って消費する

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消費と支援の境界が曖昧になりつつある。クラウドファンディングが普及し、従来の募金や寄付とは違う形での支援が可能になった。また、営業自粛の飲食店を救うための「みらいの食券(応援したい飲食店の食券を先払い形式でオンライン購入し、事態が落ち着いてから来店できる仕組み)」など、消費活動を通じた支援の形が新たに認知された。
日常の消費は、誰かに繋がり、時には他者を支援する手段にもできる。今回明確になった消費者意識は、誰かのために活動する企業や、社会課題解決に挑戦する企業の商品・サービスを応援するように購入する「応援消費」の加速に繋がりそうだ。

🚩今までとは異なる「応援」を軸にした消費の模索

― 今回改めて課題に感じたことは何ですか?

スポーツビジネス業界って、まだまだ未熟でキャッシュポイントが少ないんです。現状はチケットを買う試合観戦ぐらいしかない。試合が行えない今、ファンは応援したいのに、それを行動まで繋げられないことが大きな課題ですね。

― その課題について、何か動きはありましたか?

試合が行えないことで、スポーツ選手の多くがSNSなどで発信するようになりました。この動きは、試合以外でスポーツとファンの接点を作る、スポーツがもっと生活の中に溶け込む土壌になるはず。そこにチームや選手への応援としての投げ銭をオンラインで出来るような、「応援」を軸としたスポーツの楽しみ方、消費活動を増やしたいです。

ー たしかに最近は、好きなお店や素晴らしい理念を持つ事業者に、個人がお金を使おうとする傾向があったと思います。

今回の経済危機でより「応援」の意識が濃くなった印象がありますよね。色んな事業者が、今までとは異なる視点でキャッシュポイントや提供価値を見直す必要があるかもしれません。

※本文章は、複数のインタビューを基に加筆・修正を加え、再作成しています。


⑥.社会に配慮した「優しさ」にも投資する

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感染拡大を受け、世界中の工場の稼働が停止した結果、CO2排出量は減少し、気候変動の一時的な改善が見られた。今後、企業は経済を回復させるだけではなく、どのようにして経済と環境を両立させていくか、これまで以上に問われるだろう。市民が企業に示す関心は環境面にとどまらず、経済の低迷から従業員の雇用維持へ、さらにサプライチェーンの透明性など、より広い社会性にも向いている。
私たちができる最初の一歩は、何に繋がる活動なのか、活動を行う中で取りこぼしは無いかと想像し、より優しい社会の実現に向けて貢献・投資をしていくことだ。そして、誰もが安定を手にすることができ、社会、環境、未来に配慮した選択へ手を伸ばせる社会をめざしたい。

🚩経済性と公益性のバランスが取れた価値ある会社を見極める

ー 金融の世界から見て、今後当たり前になりそうなことはなんですか?

企業も投資家も、収益性と公益性のバランスを重視することがますます求められていくと思います。例えば現状、石炭火力を扱う企業には大型の投資が付きづらくなっています。彼らの決算書は収益性の観点からは魅力的なのに、事実、お金が流れにくくなっている。今後は決算書に出ない「社会や環境に対する姿勢」がより評価されていくと思います。

ー そんな中、課題に感じることはありますか?

バランスが…といいつつも明確な基準はないので、融資先の見定めは永遠の課題。自分自身で、相手を信じるに足る、材料集めをする必要があると考えています。

ー これからの金融に対して、ご自身の考えを教えてください。

個人的には、価値ある会社にはもっとリスクマネーを流していくべきに思う。私の会社は少し特殊で、他の金融機関ができないファイナンス領域を積極的に開拓して、業界の意識づけをすることも役割だと思っていて。価値への投資が盛り上がって欲しいです。

※本文章は、複数のインタビューを基に加筆・修正を加え、再作成しています。


⑦.「私」として社会と対話する

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緊急下における政策が実施され、これまでより多くの人が政治に対して当事者としての関心を高めている。これは数字としても現れ、緊急事態宣言発令中に行われた目黒区区長選挙は、過去最高の投票率を記録した。
高まる関心を具体的な政策やアクションへつなげるために、私たちに出来るコミュニケーションは、選挙への投票以外にも、大きく2つの方法がある。一つはデモのようにメッセージを発信することで、周りを巻き込みながら社会を動かそうとするもの。もう一つは課題の根本を探り、より具体的な解決策を議員などへ提案するもの。解決したい課題の性質や状況にあわせて、戦略的にコミュニケーションを使い分けたい。

🚩批評家ではなく、共にルールメイクに取り組める「共創的市民」を増やしたい

ー 今回改めて社会課題に感じたことは何でしたか?

政治に関わる身としては、SNSを見ていると、政治への関心が高まる一方で、それが感情的な批評に発散されて、建設的な会話に繋がっていないように感じている。政治とのコミュニケーションは、多くの人にとってまだまだ未知のものなんだという課題意識があります。

ー どういったコミュニケーションがあるのでしょうか?

例えば、様々な課題の当事者の方々と、課題の根本を探り、政治へ働きかける人たちがいる。彼らのような、解決策も含めて政治家・行政へ伝える「共創的市民」の提案は、政策にも繫がるように思う。SNSで政治との距離は縮まり、批評はしやすくなったけど、その先の伝え方は個人に委ねられている。デモ・提案・署名など、色々な方法を選択してくれる人が増えていって欲しい。

※本文章は、複数のインタビューを基に加筆・修正を加え、再作成しています。

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以上です。
7つをそれぞれ見てみると、言わば「当たり前」とも取れるような事が並んでるようにも感じます。しかし、こうした当たり前を改めて考え、実行に移していくのが、この先の社会をより良くするために、今こそ求められていることなのではないかと私は考えます。
冒頭にも書きましたが、当資料は対話を行うための原案です。
今後は、この資料を活用した対話の機会を作っていくことに取り組もうと考えています。
「この資料を使ったワークショップに参加してみたい」「資料を基に自分達に出来る事が無いか考えてみたい」
そう思われた方は是非、下記の連絡先までご連絡ください。
自分たちに何が出来るか、一緒に考えましょう。

そうして対話を重ね、より多くの人の意見を、このレポートの上に重ねる事で、今回提案した7つのことが具体化され、誰かの新たな活動を起こすヒントへ繋がり、実行へと移されていくと信じています。

当レポートを作成するに当たって、大変な中にも関わらず、ご協力いただいたインタビュー対象者10名と、「ぼく倫」のメンバーへの感謝を結びの言葉とします。ありがとうございました。


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