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恩田陸 チョコレートコスモス #読書感想文

久々に読み返しました。
もう5回目くらいかな・・読むのは。
それでも面白いんだから大したもんです。
恩田陸さんの「チョコレートコスモス」。

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ほとんどの場面が「演劇のオーディション」みたいな小説です。

親が大スターで自身も幼い頃から天才少女と呼ばれ続けたスター女優である「東響子」と、演劇をはじめて数か月の、優秀な機械のごとく本能のままに演じる「佐々木飛鳥」という2人の天才を中心に物語がすすみます。
登場人物はすべて舞台演劇にどっぷりはまったディープな人ばかり。
彼ら・彼女らが文字通りオーディションの劇中劇などで繰り広げる「本気の戦い」は、どれも面白いのですが、やっぱり出色はメインの「東響子」と「佐々木飛鳥」が「欲望という名の電車」のブランチと影のブランチとして共演する二次オーディションの最後が最高です。

何回読んでも、物語世界に引き込まれます。
今回もやられてしまいました。
今回も電車で読んでいたはずなのに、その場面に差し掛かったところから読み終わるまでの記憶がないのが証拠です。
物語に引き込まれると、周囲の音が消えて、物語の登場人物の頭上から眺めているような錯覚を覚えます。

そのくせ、心は彼ら・彼女らとつながっていて、多重人格者になったように、彼ら・彼女らにつられて、泣いたり笑ったり怒ったりしている「内なる自分」を感じたりもしてる。
ふわふわ・ドキドキ。
落ち着かないこと甚だしい。
でも、楽しい。
読み終えて、通常モードに戻っても、しばらくは余韻にひたって、ぼーっとしてしまうくらいに。

ここまで物語世界にひたれる小説は、なかなかないです。
恩田陸さんのねっとりした文体が見事にはまってます。
個人的には最低2回か3回は読み返すのがいいと思います。
ある程度、ストーリーが頭にはいってから読むと、東響子と佐々木飛鳥が別々に登場する、それぞれのエピソードを楽しみながら、最後の競演にむかって運命の糸に手繰り寄せられていく過程のドキドキをより楽しむことができます。
そう。まるで、ゴジラ対キングコングの戦いみたいに、両雄が決戦の地へ歩み寄り、ついに激突する・・みたいなシンプルな興奮がたまらない。

今回(5回目)も楽しめました。
満足です。
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