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ひとりじゃないから苦しかった。ひとりじゃないからうれしかった。ボカコレ2023夏

ボカロPの朴之感想文です。

8月4日~7日にかけてボーカロイドシーン最大級の投稿祭「ボカコレ」があり、自身では3回目の参加となりました。ボカコレにはランキングシステムがあって、最終ランキングの100位以内に入ることが現在の活動の一番の目標に曲を作っています。

その意気込みについては前回のnoteに書いております。

今回は参加した感想と、投稿した曲の裏話的なものを書いていきます。

そのまえに、まずは僕の曲を聴いてくれたみなさん、感想やリアクションをくれたみなさんに感謝を伝えたいです。ありがとうございます!



■最初にちょっと補足

僕にとってランキングは大事なのでここから数字の面にも触れていきます。気持ちの部分がないがしろに聴こえてしまう可能性があるので最初にすこし補足を入れておきます。

・数字にこだわるのはあくまでもっと多くの人と一緒に音楽を届け、気持ちを共有できる瞬間を作りたいという想いがあるからです。ひとりひとりが聴いてくれたことが嬉しいというのは大前提です。

kiite cafe(後述)は再生数に影響を与えて活動を後押ししてくれるので、前回のnoteでもぜひリストに入れてほしいと書いたし、今回も再生数が増えたことに触れていますが、前提として「これ好き!みんなにも聴いてほしい!!」と思った曲を持っていく場所なので、僕のことを応援していても「今回の曲はそんなだな」と思ったらもちろんやらなくてOKです。あそこにそういう気持ちを持っていくと水が濁っちゃうので…!僕の曲がいいと思ったらぜひ応援の気持ちでリストに入れてやってください。

■バズとは無縁、下道を行く。

ボカコレのランキングに載るためには再生数、いいね数、コメント数、マイリスト数が必要です。それが増える要因はいくつもあって、努力のしかたも人それぞれです。

僕はその中で「普段からの活動を地道にやって、好きになってくれる人に出会う」という一番地味で青臭い道を選びました。一発でドーンといければいいけど、そういうのとはあまり縁がないようです。ちょっと残念ですが、こうやって下道を歩いていくことが自分には似合っているのかなとも思っています。

ボカコレのランキングは1時間ごとに100位までの順位が発表されます。その中でも開始数時間の100位以内に載れるかがとても重要です。ボカコレの楽曲投稿数は異常に多く、今回は4日間で約6600曲。開始直後の投稿数が2541曲。ここから見つけてもらうには人の見えるところに居続ける必要があるのです。

これがすでに知名度がある人だったり、何らかで話題になって急上昇した場合は途中からでも追い上げられるのですが、今の僕にはその力はないのでスタートダッシュにかけるコース確定というわけですね。

検索したときにおすすめとして表示されるのももちろんリアクションが多い曲たちです。ここで埋もれてしまったら数千曲の中から掘り出されるのはなかなかに難しい。埋もれる前に存在を認知してもらう。これが大きな要素のひとつだと考えています。

■運は人が運んでくれる。

ボカコレ1回目の参加は毎時ランキングにかすりもしませんでした。ですが、ぼかれびゅという曲のレビューを投稿する企画で上位に選ばれ、それをきっかけにニコニコ代表のくりたさんのツイッタースペースに上げていただくことができました。

スペースはボカコレ参加者をピックアップする内容で、大勢の前でアピールさせていただける機会なのですが緊張しすぎてダメダメだった気がします…

ぼかれびゅ8選!


2回目の参加は、何もなければ一瞬もランキングに入れなかったと思うのですが大逆転がひとつ。

kiite cafeというリスナーがおすすめ曲を持ち寄ってDJになれる場所があって、そこにいる人の数だけ再生数が動画にも加算されるシステムになっています。そこで曲を流してくれた人のお陰で一瞬毎時ランキングに載ることができました。あとセルフで広告も打っていました。

kiite cafeの様子。何回見ても嬉しい。

このように、まだ人気がなくても日の目を浴びるきっかけがイベントの中にたくさん散りばめられています。きっかけがやってくるかは運の要素が大きいですが、運は周りの人が「運んで」くれるもの。「チャンスがあったらアイツにあげたい」と思ってもらえる楽曲を作って活動をできているかが大切だと考えています。

その証拠にボカコレ終了後も個人の生放送でおすすめしていただいたり、今度は僕の曲がぼかれびゅのお陰でニコニコ公式生放送で流れたりして、自分の手元から離れるほど曲は大きくなっていくんだなと実感したのでした。

はろー!にゅ〜みゅーじっくの様子。


■好きになってくれた人が増えている。

そして今回のボカコレ。実は広告も打たず、各方面参加しようと行動はしていましたがこれまでのような派手なブーストは期間中にはありませんでした。

くりたさんのスペースは全部参加してリクエストを送ったし、kiite cafeも発掘タイムはなるべく参加して(自分の曲は入れておらず、流れたときに叫びたかったw)、ぼかれびゅもエントリーしていたのですが今回は運を掴み切ることができず。

だけどボカコレ期間内の再生数は前回とほぼ同様に1000再生突破。いいね、コメント、マイリスに関しては前回よりもずっとたくさんいただけました!

しかもブーストなしで開始後、数時間のランキングに載ることができました!

スタートダッシュは成功したものの、持久力が足りずこのあと見えなくなってしまいました…でも本当に嬉しかった。

そして分かりやすいブーストはなかったと書きましたが、今回もkiite cafeで流してくれた方がいました。平日の昼間だったので完全に見逃したのですが、そのおかげでギリギリ期間内1000再生を超えることができたし、何よりもプレイリストに入れてあの場にいてくれる人が今回もいたこと、聴いてハートを押してくれたみなさんがいるということにめちゃめちゃ心が救われました。

これがどういうことかというと、前回よりも率先して聴きに来てくれる人が増えているということではないでしょうか。コメントの数もすごく多くて応援の力をじんわりと感じていました。

サムネが気になったとか、タイトル、今回は使っているボカロのキャラクターに関係する歌だったのも要素としてはあると思いますが、それを抜きにしてもこれまでで出会って好きになってくれた人たちがスタートダッシュさせてくれたんだということがしっかり伝わりました。

その力も含めた上での「ほぼ自力」で前回を超える結果を残せたことが今回参加してよかったと思える理由になったし、メンタルがぐちゃぐちゃになった時間も卑屈になることから僕を守ってくれていました。

本当にありがとうございます。

■狭く深く届いた?

前回の楽曲「忘れてしまうから」はボカコレが終わったあともじわじわと伸びて、色んなところに連れて行ってもらって、「みんなに広く好きと言ってもらえる曲」だったなあと感じています。

対して今回の「カレーうどんのうた」はすごく好きになってくれる人と、あまり響いていない人に分かれている印象です。

ボカコレが終わってからの伸びもゆるやかで、周りの活動者の方と比べると再生されるところまでたどり着いていないので、そもそも興味を持ってもらう段階でつまずいている可能性も高そうです。サムネかわいいのに!

ここから先大きく外へ広がっていく雰囲気も今のところあまりなさそうですが、前回よりもボカコレ良かった曲10選に入れてくれる人が多かったり、コメントの密度が高かったり、何度も聴きに来てくれた人がいました。

広がりやすい曲ではないけれど、届く人には深く届く。そんな楽曲が出せたのかなと思います。


■ふつうの曲を作りたい

すごくて派手な曲ではなく、どこにでもあるようなことをふつうに書いていきたいという気持ちがあります。

この「ふつう」というのは工夫をしないとか流行りのものを出すとかそういうことではなく、僕自身が当たり前に感じていることを素直に出す、そんな意味です。その中にある普遍性みたいなもので繋がれたらうれしいのです。

ボカコレはイベントの性質上すごくて派手な、一癖も二癖もある曲がおおい。それでも変わらずふつうで臨む。今回もそうしました。

ただふつうにも段階はあって、前回はドラマチック強めなふつう、対して今回はかなり素朴なふつうになりました。どんどんランキング向きじゃなくなっている気がしますが、この曲を出したくなったのだからそれが自分の正解でした。

しかし、そのふつうでありたい気持ちが今回はメンタルが崩れる原因にもなったのです。


■周りと比べてしまって苦しくなった。

活動をはじめて10ヶ月。ありがたいことに仲良くしてくれている活動者の方も多くなってきました。付き合いやなれ合いではなく、互いに刺激し合えるライバルであれるよう、友達というよりも仲間でいられるように仲良くしていけたらと思っています。

そしてその仲間たちが今回続々とランクインしていて、ランキングは逃しても僕の曲よりもずっと伸びていたりして、もうめちゃめちゃ悔しかったんです。仲は良いけどライバルだからやっぱり負けたくないのです。そう思えるから一緒にいるのです。

人と比べるのはよくないといいますが、人と比べるからこそ自分の足りない部分、逆に多く持っている部分、現在地や目標が見えてくるので比べることはいいことだと考えています。大切なのは足りないと感じたときに卑屈にならないこと。

それを心がけてはいるのですが、うまく行かないなと感じることや、なるべくイベントに参加しようと睡眠負債もたまっていたため、メンタルの制御がきかなくなって、卑屈な自分が心のなかで暴れ出そうとしていました。

いいんです。自分の中だけで思うのは。人間だからいろんなことを思って当たり前なので。でも弱っていると無意識にちょっとした態度や行動ににじみ出てしまうんですよね。それが頭では分かっているのに止められなくて、そんな自分に凹んでメンタルが更に落ちる。制御がもっときかなくなって…そんな負のループにハマってしまったのです。うざ絡みをしてしまった人もいると思います…申し訳なかったなあ。

ふつうの曲を書きたい気持ちの裏には、すごくなくてもふつうの自分で周りの人と一緒にいたい。愛してもらいたい。という人間的な欲求があります。

でもそのふつうがすごい曲たちの中で価値のないもののように感じてしまった。連鎖して自分自身の存在意義が揺らいでしまった。自分も含め誰のことも価値なんかで見たくないのに。これは人生を通して取り組んでいく自分の中の課題です。

本当はそんなことはなくてたくさん好きになってくれる人がいるのに、メンタルが崩れると見失いそうになってしまいますね。頭では分かっていたから、卑屈なことをSNSに書いて応援の気持ちを踏みにじらないようにギリギリで踏ん張っていました。そこに関しては自分によくやったぞと言いたいです。

同時にこんな中で僕のつくるふつうの曲がランキング上位にいけたら、多くの人の希望になれるんじゃないかとも思ったりしています。

あの4日間、そんな苦しさを抱えて過ごしていました。誰かにポロッと言えたらいいのだけど、グループとかスペースみたいな場所ならまだしも一対一で人に話しかけに行くというのが中々できないんですね。複数の人がいる場所、しかも相手は自分が嫉妬しているライバル自身。そんなところに弱音なんてはけるわけもなく、結局は自分の中で耐えていく事になりました。


■カレーうどんのうたができた理由

カレーうどんのうたができた背景には、そんな自分の人に頼れない弱さがあります。

僕のメインで使っているボーカロイドのキャラクターは可不(かふ)というのですが、この一年ほどで「カレーうどんが好物」というキャラ付けが浸透しました。公式ではないのでそれが嫌だという人もいるようですが、僕はおもしろいのでいいなあと思っています。

意識はしていなくても環境に影響は受けるもので、スーパーに行くとついカレーうどんが目に入ったりするようになっていました。それと同じようにある日自転車を漕いでいたらふと頭の中に「カレーうどんを食べるときにかならず服をよごしてしまう」という一行が浮かんできました。

僕はあまりカレーうどんは食べませんが、キムチ鍋スープのラーメンをよく作って食べます。食べるのが下手でいつも服を汚してしまいます。そんな自分と可不が重なって、これで一曲書けないかなと作り始めたのが最初のきっかけです。可不×カレーうどんの曲を作ろうと思って作ったのではなく、自然とそういう曲になったのでした。

白い服にスープを飛ばしてよごしてしまう。別に人生が狂うほど大したことではありません。でもちょっと落ち込むんですよね。やっちゃったって思う。そういうことって仕事でも友達関係でもあって、軽く謝れば済んだりそもそも相手は気にもしていなかったりするのに、自分の中でどんどん深刻にしてしまう。でも誰かが同じことをやっていても全然気にならない。笑って済ませられる。僕にとっては遅刻とかがそれに当てはまりますね。

カレーうどんのスープで服を汚すぐらいの失敗を深刻にしてしまう人って、案外多くないけど、汚しちゃうな~ぐらいの悩みではある人ってたくさんいると思うんです。でもそういうちょっとダメなところって安心できない人には言わないじゃないですか。だから、そういう深刻じゃないけど真剣な悩みをあなたが話してくれたら信じられてるのかなって安心できる。

僕ももう少し軽く考えてくだらないことをくだらないままで真剣にあなたに話せるようになりたい。ちょっとした弱さを打ち明けられる軽さと勇気を持ちたい。カレーうどんのシミからそんな気持ちに繋がっていきました。

ボカコレの荒波にメンタルが崩れて、この曲のように誰かに話したかった。でもやっぱりまだ難しくてできなかった。こんなことを話されても困るんじゃないか、僕はそこまで信用されてないんじゃないか。そういうバイアスが心の根っこにある。

自分を信じられないから人を信じ切ることができない。でも信じて安心して打ち明けたい。互いの居場所に、となりになれるような関係でいたい。そんな願いがこの歌には込められています。

そのおかげか、「ボカコレの癒やしスポット」というコメントもいただいていました。同じように弱音を出せなかった誰かの支えになれていたなら嬉しいなって思います。

■ひとりじゃなかったから

そんな風に心の扉に錆があって開きにくい僕ですが、開きたいという気持ちは持っています。

だから今回のイラストはずっと気になっていたnaptimeさん(https://twitter.com/nap_____time)に勇気を出してお願いしました。

落ち込んでいるときも、今回はひとりで作ったものじゃない。僕が作品に対して卑屈になってしまったらnapさんのイラストにまでそれを言っていることになる。それは絶対に嫌だ。こんなかわいい絵を描いてくれたのに…!と思うことで乗り切れました。

毎時ランキングに入ったときにDMで連絡をくれたりもして、ひとりじゃないんだと思える瞬間があったことで何度も救われました。

そして長くなりすぎるのでかんたんな紹介にはなってしまいますが、ボカロPのざれごとさん(埋もれたP)(https://twitter.com/the05oat)からコラボのお誘いがあり、ネタ曲枠で一曲出しました。

これも僕と一緒に曲を作りたいと思ってくれる人がいるということがすごく嬉しかったし、期限ギリギリなのに嫌な顔せず…いや、「ちょっとしんどいけどw」と笑って冗談交じりのグチを打ち明けながらイラストを描いてくれた柚木みちるさん(https://twitter.com/yuzuki_michiru)と動画を作ってくれたらるかさん(https://twitter.com/RullCu10)にも大感謝です。業務的な大丈夫じゃなく、しんどさも笑いながら打ち明けてそれでもやってくれたことに暖かさを感じますね。

おふたりはよくざれごとさんとも動画を作っているので、その信頼関係の中に入れてもらえたことも踏ん張る力になっていたかもしれません。

そしてなんとこの曲が、ネタ曲最終ランキングの67位に入りました!

最後の最後にひとついい結果を見ることができて、これも救いになりました…。

そしてなにより、カレーうどんのうたを聴いてくれた、リアクションをくれた、感想を聞かせてくれたあなたに支えられて最後までやり切ることができました。

周りと比べたり、理想と比べて凹むことは多々ありますが、どんなに苦しくてもそこにある喜びがなくなるわけじゃない。あなたがくれた喜びはずっとそこにある。視野が狭くなって見失いそうになることもあるけど、それを何度も思い出して目を向け続ける。ありがとうを見つけていくことで目の前の段差には挑んでいける。

ひとりじゃないから比べて苦しかった。でもひとりじゃないからうれしくて乗り越えられた。

ごちゃごちゃと書いてきましたが感謝を胸にまた次の曲を書いていきます。ひとりじゃなかったから歩んでいけます。あらためてありがとうございます。


■最後に

そんな必死になってしんどい思いをしてまでランキングにこだわらないで楽しめばいいのに。というような声をツイッターでたまに見かけます。そういう考えで参加するのももちろん素敵だと思います。

だけど、こんなぐちゃぐちゃになるぐらい本気で臨むから感じられる気持ちや得られる成果、見えてくる感謝があります。しんどさもあるけどその分だからこそ楽しい部分もたくさんあるのです。

人の数だけ参加する理由があります。経験の先にある思いがあります。僕にも僕の見たいものがあります。それぞれの心を否定しないでほしい。尊重しながらやっていけたらうれしい。

次回も一生懸命ランキング入りを目指して活動していこうと思います。

長い記事を読んでくれてありがとうございました!出した曲、たくさん聴いてくださいねー!

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