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せめて私は、それを大切にしたいんだ。

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自分が書いた詩や小説等を集めています。
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#自由詩

【自由詩】そんざいしょうめい

手のひらからこぼれ落ちていく 花びらを眺めてた 風が強く吹くもので 目を閉じては 流されていく花びらの その感覚だけを追っていた 風が。やんだ気がして 目を開けて 僕はまばたきを繰り返した ーーここには僕以外、誰もいないのだと思ってたーー 僕より少し背の高い 君をそおっと見上げてみる 目を閉じたままの その眼は見えなかった 何にも喋らず 君はただ微笑んでた 一枚だけ残ってた これは君にあげる 幻でないことを祈って 代わりにそっと 君の両の手をとった。 君はまだ な

もし、その一方の手で

坂を降ろうとする台車をしっかり掴んでいた。日々を手放すのが怖かったから。転がり落ちるのが怖かったから。でももしかしたら、片方の手でも十分だったかもしれない。不安なら、足でも何でも使って。 怖くて離せなかった、もしその一方の手で。 涙を隠すのに、いつも両手で顔を覆っていた。誰にも見られたくなかったから。どうせ、誰もいないところで泣いていたのに。 もし、立ち上がって涙を拭いて、そっと離したその一方の手で。 手持ち無沙汰で、訳もなく両手をポケットにしまっていた。自信があるよ

【自由詩】メタクリル酸メチル

かつて、同じ教室で過ごした頃 想像していたよりもずっと 貴方はよく考え、悩み 誰かを頼って ひとり生きているようでした。 他人にあげる優しさは、 自分が欲しい温もりの裏返し。 体温を共有しない私は 決して貴方の本音を聞くことはないでしょう。 貴方だって解っている。 だから私に話してくれたのでしょう? だけど 誰かの温もりを求めてしまうと言う貴方に 私と似た色を見た気がしたのです。 通話の終わり、 他に言いたいことがあれば何でも聞くよと いつも言