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今年もまた、桜が舞っている
思い出すのは
卒業式
職場の花見(宴会)
夜桜を見ながらの散歩
そして、悲しい後ろ姿

彼が余命宣告されてから
メールでのやり取りが始まった

闘病中
世の中から取り残されてしまった
そんな思いからなのか
「さびしい」が口癖だった

ある晴天の日
僕が実家に行く途中、電車の中で送ったメール
なんてことはない内容で
「天気が良いし、これ実家に行くところ・・・」
彼からの返信は 確か
「ご両親に孝行できるときにしてくださいね」

彼はとても親思いの人で
頻繁に実家に帰っていたし、ご両親と一緒に出掛けてもいた
そのメールには、いまはもうできない・・・
そんな気持ちが込められている気がして 切なかった

そして
彼の告別式の日 桜が満開で
式場の大きな窓からは
川に沿って並ぶ桜の木 舞う花弁

彼の母親が窓の外を見ている
僕は、以前もらったメールの話をした
そして彼女はこちらを見て
寂しそうに笑い
また窓の外を見ている(悲しい後ろ姿)

この数秒の情景が一番心に残っている

彼とのメールのやり取りは
長くは続かなかった
返信がこなくなったのだ

後でわかったことだが
癌が脳に転移して
スマホの操作が難しくなった

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