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色紙

ピアノ教室を卒業する高校3年生の女の子に送る色紙の作成をした。
代々引き継がれている親の作業。
先生と在籍生にメッセージカードを配っておき、記入してもらったものを
回収。昔のお母さま方が作ったドレスやスーツの着せ替え折り紙みたいなものと提出してもらった顔写真を組み合わせてそれも色紙に貼る。

発表会の練習で、子供を待っている間に数人のお母さん方と
それらの作業を行う。

私は個人的に「アルバム」とか「メッセージカード」とか、あまり大事に
しない方で「思い出」グッズは躊躇なく捨ててしまうタイプ。
ですからこの色紙を見ながら「ええ・・・これ、もらって嬉しい?」と心の中で思っていたのだ。
人の気持ちがこもっているものは捨てにくいし(捨てることが前提)
飾っても埃まみれになるし、困らない??と思っていたら
どうやら卒業生たちは色紙を大切にし、部屋に飾り時々眺めるらしい。
この色紙をもらうまで頑張る!と目標にする子供もいるとか。

今年卒業する彼女は、それはそれは遠くからピアノ教室に通っていて、なんと片道4時間かかる。2歳の頃から習いだして16年間。学校よりも長く、ピアノの先生と過ごしたわけだ。
同じ所から通っている一つ下の高校2年生の女の子がいて、二人は
姉妹のように、それぞれがそれぞれのおうちで自分の子供みたいに育てられたそうな。

その色紙を作ってみんなが寄せたメッセージを読んでいたら
1つ下の女の子が
「今までありがとう。寂しいけどこれからもお互いに頑張ろう」と書いていた。
私はそのメッセージを読む度に涙ぐみ、家に帰って来てからも
そのメッセージを思い出しては涙ぐんだ。
一つ下の女の子の心細さがひしひしと伝わったきたからだ。
ずっと一緒に遠くから通い、辛いことも楽しいことも悔しいことも
全部共有してきたのだろう。今回卒業する女の子は、いつまでも二人同じ道、音楽の道を歩むと思っていたらしいけれど、一つ下の女の子は音楽の道ヘは行かないこと、今年でいったんピアノから離れることを決めた。

先日発表会があり、そのあとの打ち上げ会場にて
卒業生の女の子の挨拶を聞き、一つ下の女の子の決意も聞いた。
笑いあり、涙ありの打ち上げなのだけれど
そこで思ったことがある。

私は残される女の子の気持ちを考えて、寂しくなって切なくなっていたけれど、二人の挨拶を聞いていたら、涙はあったけれど
とにかく幸せそうだった。
それぞれが違う道を選んだけれど、二人とも前を向き
そして仲の良いご両親に支えられ、なんの不安も感じさせないような
笑顔で卒業していった。

色んな人に支えられて巣立つことは決して心細くないんだなと思った。
いや、少しはそんな気持ちはあるだろうけれど
心細い、寂しい < 希望
なんだね。

おばさん、色紙いらないんじゃない?なんて思っちゃってごめんね。
皆にとって、ここの教室に通った証であり、これから何か辛いことが
あった時に支えてくれるものなんだね。

みんなの行く道は違うけれど
これからの人生がいつまでも素敵な音楽と共にありますように♪

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