言わずもガーナ_38_ミッドサマーにてドサ回り

9月はケープコーストにおける祭りの季節である。
ぼくも同僚たちに地元の祭りの何たるかを説明され、見物を勧められた。

同僚「折角だからオレの故郷に来ないかい? 夏至の日に特別なお祭りをやるんだ」
ぼく「有難い申し出だけど…それって90年に一度、生贄を捧げたりするやつじゃないよね」
同僚「まさか! 『偉大なる輪』の中で生まれ変わってもらうだけだよ」
ぼく「やっぱりホルガの村の民じゃないか」


この祭りは現地語でFetu Afahyeと呼ばれ、一週間かけて行われる。
その期間中には様々なイベントが行われるが、メインは伝統的首長(トラディショナル•チーフ)のパレードである。

伝統的首長制度に関する詳細な説明は長くなるので今回は割愛するが、村長とか町内会長がもうちょい偉くなった感じの人々である。
民族や地域の代表を務めるが、市民選挙で選ばれるわけではなく世襲だったり内輪の会合で選ばれたりする、しかし共有地の分配とか地域の祭事とかには政治的権力を有したりしている、というわりとファジーな存在のおじいちゃんおばあちゃんである。

というわけでパレード当日。
なぜかぼくの勤務先の正門前が開始地点になってるので、警備員のおっちゃんたちとビール(ぼくはコーラ)を飲みながら行列を待つ。

ぼくが会場に近づくとすぐに大雨が降り、開始時刻は大幅に遅れた。
稀代の雨男の名は、まだしばらく名乗り続けられそうである。

勤務先の正門前に来襲するパレード列。


遠目には某夢と魔法の王国ランドのなんとかパレードに見えなくもない。
こちらとしても、カップルで手をつないでネズミのかぶりものを身につけるような輩には、九族を誅する覚悟をもって臨んできた身である。
祭の参加者が浮わついた態度を見せるなら、それ相応の考えがあるというものだ。

と妄想上の義憤に駆られていたが、パレードが近づいてくるとすぐ考えを改めた。

チーフの顔写真を印刷したTシャツを着せられた兄ちゃんたちが、チーフを輿に乗せて歩みを進める。

高齢化と年金問題の解説スライドに使いたい見栄えである。

チーフを担いで歩く兄ちゃんたち。
担がれるチーフもチーフで暑いなかスマホもいじれず大変そうである。

こんな感じで行列は街中を巡り、海辺の広場でゴールを迎える。
人混みがすごくなってしまったので途中でついていくのを断念せざるを得なかった。

ぼく「ゴールに着いたらそれで終わり? 何か続きがあるの?」
村人「海辺には手頃な岩場があるからさ…72歳になった人がいたら…わかるだろ?」
ぼく「ちなみにメイポールの周りで踊ったりもする?」

ちなみにこのあとは首長の会合と、各宗派の教会の代表が一同に会するイベントで祭りのクライマックスとなるらしい。

冗談はさておき、街の人々はこの祭りに大変誇りを持っている。
前後2週間くらいは何を見物すべきか、ちゃんと見にいったか等々問い詰められた。

議会制民主主義によらない伝統的権威
宗教と政治の交わり

これらはときに争いの火種になり得るとも思うが、少なくともこのケープコーストでは平和の祭典の主役となり、街の空気を高揚させている。

アフリカに、この街に、平穏あれかし。
月並みな言葉を胸に抱いて、ぼくは行列を見送った。

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