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【毎週ショートショートnote】「草食系男子」「に教えられたこと」

「そんなこと言ってると食べちゃうぞ、なんて」
「ははは、草食系男子は食べてもおいしくないよ」
彼は笑いながら私に教えてくれた。

視野が広くて控えめな彼。
私たちがお付き合いするに至ったのはもちろん肉食系女子の私がアプローチしたからだ。
「僕たちは相性がいいね。ずっと一緒にいられそうだ」
私たちはお互いにお互いの足りない部分を補いながらうまくやっていたと思う。
「たまに君の積極性が羨ましくなることがあるよ。どうしたらそんな風になれるの」
「一歩前に踏み出す心の持ち様かな」

こんな幸せな日々がこれからも続くと信じていた。
なのにある日、彼は突然別れを切り出した。
よりにもよって他の草食系女子を好きになってしまったと言う。
告白も成功したそうだ。
「ウソつき」
ずっと一緒って言ってくれたじゃない。
「ウソつきウソつきウソつき」
悔しくて悔しくていっぱい泣いた。
それでもどうしても彼とずっと一緒にいたかった私は――。

「ウソつき。結構おいしいじゃない」

(410字)


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前回のお題「名探偵」「ボディビルディング」

以下、今回の本文作成に至るまでのアイディアめも。

アイディアの羅列
草食系男子:草食動物(シマウマ、群れる、視野が広い)、恋愛に消極的、肉食系女子の対極、
に教えられたこと:学び、教訓、新知見、

アイディアの組み合わせ
肉食系女子が草食系男子を初めて食べる話:草食系男子はおいしくないというフリに対して実はおいしいことを教えてもらう。なぜ食べられてしまうのか。裏切られたから。おいしくないと言ったのにおいしかったことに対する「嘘」と裏切ったことに対する「嘘」を重ねる。裏切りは浮気。他の草食系女子にいかれるとつらいのでは。

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