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「逃げたら一つ、進めば二つ」は私たちの背中も押してくれる便利な言葉。

「逃げたら一つ、進めば二つ」

これは「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の中で主人公のスレッタ・マーキュリーが幼き日に母親から教えられた言葉であり、彼女の行動指針の軸のひとつになっています。小説の中の具体例を借りれば、注射から逃げることで「痛くない」を手に入れられるが、注射を打てば「健康になる」「母親が喜ぶ」「周りの人が褒めてくれる」「注射が怖くなくなる」と二つ以上のメリットを享受できるということです。

私はこの言葉がいたく気に入っています。「やらない後悔よりやる後悔」など、逃げずに挑戦しようぜ的な名言格言が山ほどある中で、この言葉に惹かれる理由のひとつは「逃げてもとりあえず一つは手に入る」と、逃げることについて一旦まず肯定してくれているところです。これにより「逃げる」と「進む」は逆向きの矢印ではなく、同じ向きの矢印になります。さらに二つ以上を指折り数えることで、進んだときに具体的にどんなメリットがあるかを考えさせられることになります。「やらなきゃいけない」とか「やったほうがいいんじゃないか」とか思ってはいるけど腰が重い案件は、実はやったら自分や周りにどんなメリットがあるのか漠然としていて、やった結果の具体性を欠いていませんか? ここはそれを明確にするプロセスです。方向を揃えて具体化すると不思議なことに「逃げても進んでも得られるものがあるなら得られるものが多い方にしておくか」と、挑戦することのハードルがいくらか下がります。下がるような気がします。

もちろん理詰めで考えればそうとも限りません。逃げることのメリットも探せば二つ以上あるでしょうし、進んで二つ以上手に入れるためにはそれ相応のリスクを伴います。向く方向を同じにできるということは、どちらでも好きな方向を向くことができるということです。例えば仕事でツラいことがあった場合、そのまま勤め続けることと転職することのどちらが「逃げる」でどちらが「進む」なのでしょうか。どちらも正解で「自分がどうしたいか」のさじ加減ひとつで変わってしまうことがわかると思います。

つまりこの言葉は、自分の本心としてやりたいと思っていることの最後の一押しをするための「おまじない」に過ぎません。しかし効果は絶大。夜、寝る前に水出し麦茶を飲み切ったときに、次の水出し麦茶を作るべきか否か。作らなければすぐに眠れる。作れば翌朝に水出し麦茶を飲むことができる。眠気に負けずに作った自分を褒めてあげられる。

逃げたら一つ、進めば二つ。

呪文のように唱えながら、水出し麦茶を作りました。私偉い。容器洗って水入れてパック浮かべるだけなんですけど。もっと重大な局面で使えよという気もしますが、このように日常でも汎用性高く使えるところもお気に入りポイントのひとつです。部屋を片付けるメリットも指折り数えて具体化しなければ。

余談
「おまじない」は漢字で書くと「お呪い」だそうです。怖。知りませんでした。「逃げたら一つ、進めば二つ」も実はスレッタが母親に掛けられた呪いの言葉なのかもしれません。逃げればミオリネの命が助かるけれど、二つ以上を手にするためには……。そんな局面に立たされる展開があったりするのでしょうか。怖。

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