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【毎週ショートショートnote】「噛ませ犬」「ごはん」

「いただきます」
目の前に広がる一汁一菜に手を合わせた。納豆ご飯にインスタント味噌汁。それに豚肉とキノコの炒め物だ。

私の自炊にはいくつかルールがある。

まずはお肉の値段。手にしていいのは百グラム百円まで。鶏肉は胸肉ならいつでも買える。豚肉は特売日とタイムセールなら手が届く。牛肉が食卓に並ぶのは小さな奇跡だ。

次に調理時間。冷凍庫ごはんを解凍するのに三分半。望ましくはその間に、せめて十分以内に済ませたい。十分程度で食べてしまう食事のためにそれ以上の時間はかけられない。

当然、手の込んだ凝った料理はできやしない。味付けは自分好みではあるが単純だ。メニューの幅は広くなく、四分の一カットの白菜を買えば三日連続で鍋になることもざらにある。自炊はするが料理ができるとは言えないだろう。

楽しむためではない。生きるための食事。平日の仕事終わりにひとりで食べる食事はこれでいい。休日に誰かと楽しく美味しいものを食べる時のための噛ませ犬で。

(410字)


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前回のお題「大増殖」「天使のキス」

以下、今回の本文作成に至るまでのアイディアめも。

アイディアの羅列
噛ませ犬:引き立て役、闘犬、引退した老犬、
ごはん:飯、食欲、米、食事

アイディアの組み合わせ
噛ませ犬のごはんの話:
ごはんが噛ませ犬の話:彼女に美味しいものを作ってもらうために、敢えて地味な料理を振る舞う彼氏の話。
ごはんが噛ませ犬の話2:休日の食事を引き立てるために、平日の食事をシンプルに済ませる話。私の平日の食事録でいいのでは。

頂いたサポートは、美味しいものを経て、私の血となり肉となる。