〜トレーナーの立場から見る〜日米の野球の指導の違い
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〜トレーナーの立場から見る〜日米の野球の指導の違い

今回の記事の内容は、先日オンラインで開催された第33回日本トレーニング科学会大会シンポジウム1日目『成長期の野球指導における日米の違い』にてシンポジストとしてお話しさせていただいた時の内容です。

〜〜〜以下、実際の講演のスクリプト〜〜〜

今日は『トレーナーの立場から見る日米の野球の指導の違い』と題してお話し出来ればと思います。

ただ、15分と時間も限られているのでテーマを1点に絞って現場目線で実践的な話が出来ればと思います。

今日のテーマは『キューイング』です。

キューイングは、日本語で「声かけ」であったり「言葉かけ」と訳されると思います。コーチング学を学ぶと必ず出てくるワードだと思います。今回は、スポーツの現場で、運動や技術を指導する際に使う言葉かけについて日本とアメリカの違いというのを私の経験を元にお話しできればなと思いますのでよろしくお願いします。

まずは、こちらの2つの動画をご覧ください。


1つ目はアメリカの高校生が野球をしている動画、2つ目は日本の高校生が野球をしている動画でした。

皆さんはこの2つを見比べてなにか気づいたことはありましたか?

私は日本とアメリカで野球をプレーしたり、トレーナーとして関わるなかで、日米の野球選手を比較して2つ疑問が浮かんできました。

疑問1

なぜそれぞれの国の選手の打ち方や投げ方が全く違うのか?

私はトレーナーとして人間の体の運動を勉強し、よりスポーツで使える体を作るために運動・トレーニング指導をしていますが、人間の体の運動を考えたときに日本人であろうが、アメリカ人であろうが、イギリス人であろうが、中国人であろうがみんな生まれた時は同じ人間で同じ人間の発育発達の過程を経るわけです。
しかし、野球の技術がここまで変わってしまうのはなぜなのか単純に疑問に感じました。

疑問2

なぜ日本の選手はみんな似たような投げ方、打ち方をしているのか?

答え

おそらく、皆さんの中にも答えは出ているかと思いますが、答えはシンプルに環境や指導方法の違いだと思います。

例えば、アメリカ人の子供が日本で生まれ育って、日本の指導者に野球を教えてもらうと日本的な打ち方や投げ方になると思います。その逆も同じだと思います。

なのでまさに環境や指導方法の違いがこの日米での技術の違いを生むと思います。

では、、、

日本とアメリカでは指導方法にどんな違いがあるのか?

指導方法の違いというのは具体的に何なのか?ということですが、それが今回のテーマである、『キューイング』になるかと思います。

『キューイング』だけが日米の違いということでは無いのですが、私自身、日本とアメリカでスポーツを経験して非常に顕著だった、特に成長期の子供たちへの指導方法で見られた違いをお話ししたいと思います。

ですので、たくさんある違いの中の一つだと捉えていただければと思います。

キューイング(Cueing)とは、日本語に直訳すると「ヒント」とか「手がかり」「きっかけ」となります。
コーチングの際には、「声かけ」「言葉かけ」を意味します。このキューイングと言うワードの中には内的キューイング外的キューイングという2種類のキューイングがあります。

内的キューイングというのは、体に視点をおいて声をかけること。

野球指導で例えると

脇をしめて
肘を上げて
肩が開かないように

言うような声かけが内的キューイングの例になります。

反対に外的キューイングは、体の外に視点を置く声かけを意味します。

例えば、ボールやバットを選手に渡して

このボールを30メートル先に投げてみよう
このボールをあの的に向かって投げてみよう
バットをできるだけ早くスイングしてみよう

と言うように体の外に目標を置いて声かけをすることが外的キューイングになります。

日本の指導では内的キューイングが非常に多いような印象があります。例えば、日本の野球雑誌を見るとこのような連続写真が多く載っていてるのをよく目にするかと思います。

選手や指導者はこういったフォームを「一般的に理想とされるフォーム」として練習すると思います。ですので

『日本の指導は一般的に理想とされるフォームに内的キューイングを使って選手たちを寄せていく指導』

逆にアメリカの場合は、外的キューイングが多い印象です。特にユース世代の指導には多い気がします。外的キューイングのメリットとしては選手の体の個性を活かせると言うところです。

『アメリカの指導は個性を活かし、伸ばす指導』

私はトレーナーとしていろいろな選手に関わっていますが、やっぱり100人の選手がいれば100通りの体があります。したがって、それぞれの選手の動きやすい体の使い方というのはそれぞれ異なってきます。選手は、外的キューイングによって選手自身が求められたタスクに対してどのように"体を使えばいいか"ということを考えて工夫していく作業をしていきます。

例えば、、

「このボールを30メートル先に投げてください」と言うと選手は30メートル先にボールを投げるためにどういう風に体を使って投げれば良いかという事を考えると思います。

したがって、その選手が「1番投げやすい投げ方」「力の入れやすい投げ方」を見つけることでよりその選手の体に特化した良いフォームが身に付いてきます。*もちろん細かい指導が必要な場合もあります。

その結果、アメリカではすごくユニークなフォームが生まれたりするのかなと思います。

ただ、内的キューイングが"悪"で外的キューイングが"善"ということではないので、それぞれをバランス良く使っての指導というのが求められると思います。

特に内的キューイングは、技術レベルが高く、自分の体の操作性(自分の体を思った様に動かす能力)がある選手には非常に有効とも言われています。

選手の個性を殺すのではなく、重んじて伸ばす指導というのはアメリカのユース指導では求められて重視されているなと、私の経験から強く感じたので、この内的キューイング、外的キューイングの考え方は皆さんの現場での指導の参考になればと思います。

まとめ

今回は、日米の指導の違いと言うことでキューイングに注目をしてお話しをしました。日米の違いというのは、キューイングに限らず多くのことがあると思うので、私もこれから日本で活動するにあたり、日本の成長期・ユース世代の野球選手がより良い指導環境で大好きな野球を続けていけるように、指導者として、どうした環境づくりに取り組めばいいかということをもっともっと考えていきたいと思います。

Body Updation トレーナー 中田史弥

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