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ボードゲーム『花鳥風月』が完成するまでのプロセスを公開します 【写真付き】

こんにちは。ボードゲームデザイナーの山田空太といいます。

今回は、3月28日に開催されたゲームマーケット大阪2021発売した『花鳥風月』のゲームデザインの話です。

『花鳥風月』がどんなゲームなのかは、こちらからどうぞ⬇︎


今回は、特にテストプレイのプロセスに焦点を当てて、スマホの写真から、時系列を振り返っていこうと思います。

*2021年4月1日に内容補足を補足する追記しました。

花鳥風月 / Kacho-Fugetsu

ゲームデザイン:山田空太
アートワーク;イマジンゲームズ
出版:イマジンゲームズ
(2021)
10歳以上
3-4人
プレイ時間:30-45分

前回記事の繰り返しになりますが、簡単にゲームの概要を説明します。

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すごろくのように、円形の盤上の真ん中のレーンをポーン駒がぐるぐる回り、止まった先のマスの内周の効果を得たり、外周にモニュメントを建てたり、株を売買したりして、名誉点とお金を競うゲームです。

ボードにはアイコンがたくさん書かれていて、戦略が多分にあるようにも見えます。しかし、サイコロの出目に応じてポーン駒が進むので、出目の影響は大きく、いつもやりたい行動ができるとは限りません。

つまり、あくまですごろくがベースになっているということです。


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では、最初からプロセスを振り返ります。

ぼくは、ゲームの構想段階で、使える、使えないは別にして、ごちゃごちゃといろんなことを考えます。なので、最初のテストプレイを行うまで、数ヶ月とか2年とか時間をかけることも多いです。

コンセプトとかジャストアイデアとか、資料とか、テキストとか写真とかそういうのを、keynote上にまとめて、設定集のようなものを作っています。これがあると、いつでも原点に戻れるので、重宝します。

スクリーンショット 2021-04-01 13.37.34

設定集の中の1ページ。とはいえ、そのうち一部しか実現しません。ここでは、花鳥風月アイコンと。建築すると花鳥風月の価値が上がるというところは残りました。

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では、下の写真からは、実際に手を動かしてのテストプレイ。

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最初は、駒とサイコロを3つずつ使って、3重のコースをぐるぐる回るというイメージでした。外周のように、サイコロ3つの出目に応じたマスに自分のモニュメントを建てられるということを考えていました。

苦しい時期。全然面白くないです。ゲームにもなっていません。


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初期のボードとほぼ一緒。最初はサイコロ3つ振ることを前提としていました。全36マスあります(最終プロダクトは24マス)。サイコロ3つの出目に応じたマスに、自分のモニュメントを建てられるということを考えていました。

内側の数字は2つのサイコロの和。『カタンの開拓者』的なことを考えていました。でも、ボツ案。


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株のようなチップを加えましたが、あまりうまくいっていません。ここから、どうやってもうまくいかず停滞していました。


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次は、ポーン駒が内周と外周を行き来するということを考えていました。まだレーンを3重にしようと考えていたときです。1周36マスにして3重。合計108マスを移動したら勝ちみたいな感じのイメージ。

1から12のトークンを集めることを目的にしようとも思ったのですが、うまくいきませんでした。

付箋を使って、問題点とジャストアイデアを言語化しています。付箋は強粘着に限ります。


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だいぶボードが簡素になりました。36→24マスになって、レーンも3重→2重になっています。ボードが簡素になった分、建物の効果というものが現れました。ちょっとだけ芽が出てきました。でもstill 暗闇です。ゲームになっていないです。

ゲムマまで3週間となりました。この頃から焦り始めます。

ちなみに、箱サイズだけは決めていたので、このあたりで既にオーダーしています。木駒もいつものSpiel Materialさんにオーダー済です。正確ではなくて、大体って感じで色々種類多めに頼んでます。今回コロナの影響でドイツの空港で足止めくらって、ギリギリでした。


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一旦、ボードデザインから離れて、整理。思いつくことを足していきます。ギリギリパワーを使い切ってゴール(ずっとこれをしたかったのですが)、うまくいかないと内周へもどされる、そんなアイデアもあったのですが、最終的には捨てました。


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少しジャンプしました。よく覚えていませんが、考えが整理できた瞬間がありました。

ここで内周、外周、その間のレーンをポーン駒が移動するという、最終プロダクトの原型の形ができています。株チップも12種類から花鳥風月の4種類になりました。

このあたりで、ようやくイマジンゲームズの仲間に最初のテストプレイをしてもらいました。内周の効果と外周の効果のどちらかを選ぶってしていたんですが、両方でいいんじゃないというような話をしたと記憶しています。


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さらに、ちょっと進みました。手番の流れが見えたときだと思います。使うサイコロは1個になりました。株価の概念が明確になりつつあります。このときは、4つの株価が相対価値でした。なので、4つまとめて表示しています。



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テストプレイの結果を受けて、一旦、スケッチブック上で整理しています。まだサイコロを2個振る可能性は残しています。スケッチブックはマルマン、サイズは352x251mmが好き。


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テストプレイ後に、一人で調整しているときの写真。ここまでくるとかなり良い感じ。ようやく暗闇を脱しました。ゲームマーケット7日前くらいです。

この段階では、ほとんどの調整は上向き修正になるので、楽しい時間。つまり、ようやくゴールできそうと思えたときです。花鳥風月の株チップは真ん中に置いていましたが、見た目が悪くなるので、最終的には真ん中は空き地として真っ白の円にしました。

正の文字は、ターン数を表しています。だいた14-20ターンくらいで終了する感じでした。


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内周の効果と外周の効果のバランスをとる作業。「株を売るマス」の前には、「株価を上げられるマス」があったり。「3金もらえるマス」と同じマスに強い建物を置かないように配慮したり。バリ取りみたいなもの。



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ここは最終調整です。これは3人でのテストプレイのときです。

ルールの骨組は既に9割方、完成しています。コストと効果の調整や、同じマスでの内周と外周の効果のバランスなどがメインで。株価の傾斜をどこまで変えるかとか。独占ボーナスと上級建物ボーナスと、外周での破壊による独占ボーナスの崩れをどうするかみたいな話とか。

時間がなくてボードに直接書き込んで、だいぶ汚くなっています。

株価の傾斜をどうするか、答えは出なかった。もっとピーキーにもできたのだけれど、そうなると一気にゲインできるのでやり過ぎかなって。結局マイルド路線で。ちょっと日和ってしまった。


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最終的に株チップとチャートは円ボードの周囲に配することにしました。今見ると、背景も白の方が良かったですね。



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さて、写真を使ったゲームデザインプロセスの振り返り、いかがだったでしょうか? 実際は、全然面白くない暗闇の期間が長いです。そして、当初の予定とは全然違ったものになりました。

円形ボードとすごろくベースというところ以外は、どんどん変化していきました。山の頂上を目指して進んで登っていたのに、途中で天気が悪くなって、それでも上へ上へと登るうちに、到達したと思ったら別の山の頂きに着いていた、そんな感じです。

今回は、予算もターゲット層も何も考えず、自分がやりたいようにやったので、良い経験となりました。

では、このnoteは以上です。もし面白かったら、noteとtwitterのフォローをよろしくお願いします。




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