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むかしむかし

小さな神様があるいておられました。

ふるいふるい色あせた鳥居をみつけ、小さなお社に手を合わせると、ちょこんと座りこみました。

「長い間、いきてきたなぁ」

ほっとひといきついているうちに、八百年がすぎました。

「さあ、そろそろ出かけようか。」

神様がすわっていたところに、井戸ができていました。
ふかいふかい澄んだみずは、とおい世界へつながっているようです。

「そうだ!この井戸の中へいってみよう!」

ちゃぽん♬

かえるのようなすがたになった神様は、遠い世界へ旅にでました。

また800年がすぎました。

遠い世界からかえってきて、井戸の中の澄んだ水であそんでいた神様は、にぎやかな声にさそわれるように、顔をお出しになりました。

小さいこどものにぎやかな声。

長い人生を楽しくくらしてきたひとたちの歌い声。

神様を呼ぶ柏手がたからかにひびきます。

「そろそろお呼びですかな。」

小さい神様は、すこし大きくなって、階段の石にこしかけました。

「そういえば、あの日も鹿があるいていたなぁ。」

ふるいふるい鳥居は、色鮮やかに「朱」にぬられておりました。


おしまい

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