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『2030半導体の地政学』太田泰彦

だいぶ時間がかかっていますが、読んでいます。眠くなるけど面白い本(褒めてます。)。
著者は日経新聞の編集委員だそうで、臨場感がすごく文章から伝わってきます。ドキュメンタリーを観ているよう。

読んでいて面白かったところを切りとってみました。

アジアの海底ケーブルの敷設状況。シンガポールに集中しているくだり。

現在の海底ケーブルは、15世紀からのシーレーンとピタリと重なっている。(中略)世界を結ぶインターネットの正体は海底ケーブルだ。

137ページ

歴史で習った大航海時代の航路が今も形を変えて生きているって、すごいですね。

 深圳のデジタル企業が日米欧と最も違う点は、製品、サービスを市場に投入するタイミングだ。
 開発過程でギリギリまで完成度を究め、満を持して発売するのではなく、いわば生煮えの状態で消費者の前に放り投げる。そのうえで、不満や要望の声を拾いながら、事後的に「深圳スピード」で改良を加えていく。イノベーションは研究所や工場ではなく、消費市場の中で起こる。

144ページ

ヒリヒリするような中国企業の成長の速さが感じられる文脈でした。深圳の電子部品街「華強北ファーチャンペイ」の描写も生々しくて、ちょっと現地に行ってみたくなりました。スピードについていけなそうですが…。
そして中国と日本の国民気質の違いも連想しました。日本でこんな風に事業を展開したら、顧客からのクレームがすごそうです。

現代の半導体の地政学を考えるときは、こうした地理的な空間だけでなく、仮想的なサイバー空間での国家、企業の戦略にも焦点を当てなければならない。半導体は貿易で取引されるモノであると同時に、目には見えない、技術、ノウハウ、知的財産の結晶でもある。

153ページ

最近知った「ネットワークステート」を彷彿とさせる一文です。
バーチャル世界とか平行世界ってマンガや小説の設定の定番ですが、またしてもリアルがフィクションに追いつき、追い越そうとしている感覚です。

まだ半分くらいしか読んでいませんが、とても濃くて、世界の見方が深まる本だなと思います。

今日はこの辺で。それではまた。

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