「僕の人生には事件が起きない」

ジャンプの巻末コメントや雑誌の編集後記が好きで、会社が運営しているインテリアショップのメールマガジンの最後に勝手に「ひっそり編集後記」というのを書いている。

友達のしのだ以外誰も読んでないだろうと思って（しのだは読んでくれてるんだって！）最近あったことや関心事をのびのびと書いてて、月１、２回、ここに何を書くか考えることで日々を振り返るいいきっかけになっている。ツイッター、インスタ、LINE、カメラロールを見返して、「何があったっけ〜」つって。

今週も配信があったのでいつものように振り返ったら、びびるほど書くことがなくて、スマホ片手に時間が止まった。ちょうどJOJO3部のアニメを見てたので「ザ・ワールド発動？」って思った。

仕事は普通にしてたし、漫画もラジオも嗜んでる。何もやってないこたないけど、フルテレワーク生活は緩急が無さすぎて、人に言いたくなるようなことが滅多に起きない。
ジャンプの巻末コメントでよく見る「（漫画しか描いてないから）巻末コメントが浮かばない」ってこんな気持ちなのかな…「セブンイレブンのスイーツが美味しくて良かったです」って定型文で書いてた藤本タツキは賢かったな…

いや藤本タツキと違って書きたくて書いてるんだから私は。

と思い直して考えても、仕事以外に何をしてたか思い出せなかったので仕事のことを書いた。そして昨日配信された。
しのだ以外読んでいない（だろう）とはいえ、書きたいことがたくさんあった頃を思うと、「書くことが無い、マジで無い」ってのはなかなかショッキングでなかなかの危機感。本棚をしげしげ眺めてみても、本すら読んでなかった。何してたんや。

この二週間とは言わないまでも、この秋、何か書けるような出来事は無かったか…
何かあるでしょうよぉ…
一つぐらいよぉ…

9月末、夫と初めてキャンプに行ったら高速間違えて降りるわ高速戻るもキャンプ場間違えて山中に入り迷って2時間遅れでチェックイン、予報外れの雨の中でテントを設営しようとしたら「テントの立て方忘れた」と夫がスマホで調べ始めて、雨に打たれながら何に使うのか分からない土に刺したポールを支えて10分ほど立ち尽くした

じわじわと腹の底から笑いが込み上げて来たけど、あれは「嬉しい！楽しい！大好き！」ではなく「笑うっきゃねえ」って感じで、エピソードトークとして人に聞いてもらって成仏させたかったけど、人と話す前に鮮度が落ちて熱量も引いちゃった。ただの哀れなキャンプ初心者夫婦になっちゃった。

多分毎日出社してたら会社で「聞いてくださいよ〜」って誰かに話してたんだろうなぁ。
あ！アウトプットの場が減ったせいでインプット欲も減ったのかもしれない。
とはいえテレワークは続く…脳が…脳が衰えていく…。

そんな焦りと無気力のある日、夫がインドカレー屋でチャイを飲みながら本を読みたいと言うので、じゃあ私も何か本買うわと紀伊國屋をふらふら歩き周ったものの食指が動かず、ならばと毎週ラジオを聞いているハライチ岩井の１作目のエッセイを買って読むことに。

岩井勇気 『僕の人生には事件が起きない』 | 新潮社

これが良かった。なんか、めちゃくちゃにちょうどよかった。

タイトルの「僕の日常には事件が起きない」よろしく、コーヒーマシーンを買った話とか、本棚を組み立てるまでに時間がかかる話とか、日常の何気ないことばかりが綴られている。
「フスッ…フスッ…」と笑いをフスフスと漏らしながら読んで、や〜、こんなんでいいよな、日常ってこんなもんだよなと安心した。と同時に、何気ないことをここまでブーストさせられるお笑い芸人は本当に最高の職業と思った。天才。超リスペクト。マジ感謝。

「常に日常生活の中で題材を探しているので、どんなことに対しても自分の視点を持てるようになった。ぬぼーっと何も考えず、耳の穴から脳みそ垂れ流しながら生きていくこともできるが、普段色々考えながら生活してみるのもそれはそれで楽しいものだ。」

と、エッセイを綴るようになってからの変化について書いていて、私が思う「暮らしを文に落とし込む良さ」がこの一文に凝縮されてるなあと。だからエッセイが好きなんだった。
そんで、書くほどのことが無くとも、誰も読まなくとも、何でもいいから文章書こ！と思って今。書いたことで、疲れて閉じてた脳がちょっと開いた気がする。

このちょっと開いた隙間からちょっとずつ刺激を与えて、脳を活性化させてもっと色々なものにときめきたいな。と思って夫と映画「DUNE」を見にいく約束をした。あ、これ違う方でときめいちゃうかも…（ティモシー・シャラメに）。

日常の何気ないことに「そんな入れんでも」というメスを入れて、石ころみたいな思い付きが、転がってくにつれ巨石のような妄想に育っていく。一言で言ってしまうと「考え過ぎ」なんだけど、視点っていくつもあっていいよなって気付きもくれる。そして楽しい。軽い。

文章はめちゃくちゃ読みやすくて開く度に一気に読み進めてしまう。そうめんぐらいつるつる入ってきます。読むそうめんです。違うか。