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レコード

今、若い人たちの間でレコードがにわかに人気らしい。デジタルには無い音の深みに惹かれるのかな。分かる。

僕が初めて買ったレコードはEPだった。中学生の時だ。
おこづかいが少なくLPには手が出せなかった。そして録音機材も無い僕は同級生の家に入り浸っていた。LPレコードを借りてテープに録音させてもらっていたのだ。

当時はレンタルレコード店がにぎわっていて、同じくらいの年頃の子からオトナまでこぞって通っていた。レンタルした時に渡されるLP大のサイズの分厚いビニール製の袋には、店の洒落たロゴが入っている。それを脇に抱え「今日、レンタルしたんだ」とちょっと自慢気に歩く姿をあちこちで見かけることがあった。僕もレンタルした日は同じ気分だった。

働くようになってからなかなかレコードを買う機会がなかったのだが、去年あたりからぼちぼち買い始めた。今や毎週末漁りに行き、一度に3~4枚買うのが恒例になっていたりする。
家にいる時間が長くなったせいもあるが、5000枚を超える数のレコードを持っていた強者のことをふと思い出したからだ。

その彼は我が子のようにレコードを愛していた。家に行き、見せてもらったのだが、上の口があいた段ボールに数十枚ずつ入れ、その箱を床から天井まで積み上げている。
その列が何十とあるのだ。圧巻だった。生活スペースはほとんどない。

「ここに収まりきらない分は倉庫を借りて、そこに保管しているんです」と彼。全部で何枚あるかは分からないそう。
一体、これまでレコードに幾らかけて来ているのか想像もつかない。
聞くとオーディオにも凝っていると言う。確かに高そうなアンプとスピーカーが置いてある。

「全部足して、多分都心のマンション1部屋買えます」と6畳1間の部屋で言う彼の深い愛が伝わってきた。

「おおっ、このアルバムは!」「これの実物を見るのは初めてだ!」と興奮し、僕は感動しまくっていた。好きなジャンルも被っていたのだ。
「これ気に入ると思います」と彼はその日、ゴキゲンなLPを何枚もかけてくれた。ありがとう。
僕はかつて同級生の家に行き、レンタルレコードを聴きながらテープに録音していた時の感激を思い出していた。

まだ数えられるくらいの数しか持っていないが、新しいアルバムを買い最初に針を落とす時は胸騒ぎがする。店によっては試聴とレコードの状態を確認出来るのだが、僕はしない。例えはずれを引いても最初のドキドキの方が勝っているのだ。


針を落とした時のプツプツ音もたまらない。低音重視の僕は必ずアンプのBASSのつまみをMax近くまで回して聴く。A面からB面に変えるのもデジタルには無い、面倒だが味わいのある作業だ。

強者君には敵わないが、いつか1000枚になるまでコレクション出来たらいいなと思っている。

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