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ブランド・ポジショニングの話

ブランド・ポジショニングは競争戦略と密接な関係があります。つまり競合ブランドとの棲み分け、競争優位を保った状態で有利にビジネスをすることを目的とします。競争戦略に「正攻法」と「奇襲法」があるとすれば、ポジショニングは正攻法と言えるでしょう。ただし正攻法というように「攻める」と文字では書くものの、実態は「守る」ためのものだと思います。脇を固めるとでもいいましょうか、まるで城郭に似て「競合からの攻撃を防ぐ」「負けない」ために仕込むのが実態です。逆に言うなら文字通りの「攻める」機能はそれほど強くありません。攻めるのはやはり奇襲法的なものがよいのです。競合や顧客の想定外の打ち出しをする。製品やコミュニケーションを通じて競合ブランドの裏をかき顧客の求めるものを提供する発想が別途求められます。

ブランド・ポジショニングが最も問題になるのは市場で競合ブランドが群雄割拠している状況でしょう。飲料、化粧品、ヘアケア、生活雑貨、食品。昔からあるカテゴリーから新興カテゴリーまで競争のステージや市場の成熟度はそれぞれですが、いくらでもそのような市場はあります。めちゃくちゃ新しいカテゴリーですが、最近では生成AIの市場もそうです。Chat GPTの衝撃的な登場に呼応するようにGoogleのバードやマイクロソフトのBingのみならず、いまや様々な生成AIが生まれています。非常に新しい市場ですが、試しにApp Storeで検索してみてください。文字通り無数ともいえる類似アプリが検索されます。それらは得てしてChat GPTとそっくりな顔(アイコン)をしていて、一体、どれが欲しいものなのか混乱するのが実態です。正直、各社のこの開発スピードには驚嘆します。ちなみにChat GPTはアプリのダウンロードは必要ありません。ウェブからログインしてそのまま使えます。いずれにせよ、Chat GPTももはや新しくはなく、「次の生成AI」が求められ始めても不思議ではないように感じています。

このような混乱した市場で有益になるのがブランド・ポジショニングです。「これとあれ」「私とあなた」「白と黒」を明確に区別する。ものごとを分かりやすくするのが上記「城郭」の役割です。そしてそこに「ブランド」という旗印がつくことで顧客は瞬時に欲しいものとそうでないものの判断をすることが出来るわけです。強いブランドはこのことをよくわかっていますし、市場に類似品が溢れる状況になった時にポジショニングを見直し、時には再定義して、再度「私たちは何か」を発信することを心掛けています。