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ユニクロのロシア事業

ファーストリテイリングがユニクロのロシア事業を一時停止することにしました。当初は「衣服は生活必需品」として継続すると発表しましたが国際社会からのロシア批判が高まる中、修正を余儀なくされた形です。ビジネスをどうするかは経営者個々人の考え方次第だと思います。有事の時なら尚更でしょう。しかし今回の「修正」はあらためて政治とビジネスは不可分であるということを思い出させました。政治的な世論と商人的思考の狭間で行われた意思決定だったと言えます。また有事下では「企業も政治的なスタンスをはっきり示さねばならない」と学びました。そこには純粋に「顧客のため」では済まされない問題、例えば「事業継承のリスク」「実際に顧客にモノを届けられるのか」「レピュテーションはどうなるのか」「売上はどれほど失うのか(ユニクロのロシア事業は欧州全体の40%を占めている)」などがあります。単純に長いものに巻かれる発想ではなく、もっと深い議論が社内で求められます。

一方、ロシア政府は、同国から撤退する外資系企業などの資産を差し押さえる検討を始めました。「企業の撤退の動きを抑え、日欧米による経済制裁の影響を緩和する狙いだ。ロシアに進出する世界の企業は試練に直面する(日経新聞3月12日)」。こうなるとウクライナとの停戦交渉と同じです。相手にYESと言わせるために相手の嫌がることを与えるという「北風戦略」。いかにもロシアらしい交渉スタイルと発想で、旅人のマントをはぎ取ろうと北風は更に冷たい風を吹き続ける。しかしイソップの物語が示すように、結局、上手くいかない結果になるのではないか。

今回の戦争は当初の「ロシアvsウクライナ」から「ロシアvs自由主義国家」という経済戦争、またはハイブリッド戦争に軸足を移しているようです。これは停戦後も続くでしょう。そしてロシアが負けると思います。戦争でも経済戦争でも「孤立したほうが必ず負ける」は真実だと思います。日本が太平洋戦争に至るまでに国際連盟を脱退、ABCD包囲網でエネルギーや資源の輸入を遮断されたのと同じです。頭のいいプーチンがそれを知らないはずはない。であれば次に考えていることは何か。そしてロシア崩壊後の漁夫の利を狙うのが中国でしょう。地政学的にもグローバル経済的にも、不気味です。