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時代の気分とブランドの最適化

先日、病院など医療機関を顧客とするクライアントさんと話しました。コロナが始まった2020年、世の中が激変したタイミングで新たな案件をご相談頂きました。予定通り1年で所期の案件は終わりました。今回は半年ぶりくらいの、いわゆる時候の挨拶です。あまり具体的な話は出来ませんが、「少しずつ新サービスの引き合いが増えています!」と嬉しい言葉をもらいました。同時に半年前から時代のキーワードや気分も変わってきていて「そこに顧客のマインドとの乖離が出始めているかもしれない」という話もしました。この半年間、ロシアのウクライナ侵攻が始まり、企業物価があがり、あるいは安倍元首相が撃たれるなど、「危機管理」というのは社会が漠然と気付いている「共通の気分」のように感じています。これはコロナ禍が始まった頃からあったけれど、案件が終わった頃から今日まで、いよいよ顕在化したキーワードだと思います。そう考えると、医療機関でのモンスター患者のクレーム対応を専門とするこのブランドにとっては「患者のクレーム対応」から「医療機関の危機管理」へ、ブランドの見せ方をオプティマイズ(最適化)してはどうか、と話しました。

このクライアントのことではないですが、停滞しているブランドの多くは「時代の気分・時流」を捉えてブランドを最適化していくのが苦手なように思います。特にコンセプトが明確なブランドほど、ブランドを表す言葉が固定化しがちで柔軟さを失う。結果、時代の気分や流れから取り残されてしまう傾向があるようです。これは成功がもたらしたジレンマでもあるのです。新しいことに挑戦する、ブランド価値をブラッシュアップすることの難しさは、ひとえに過去の成功が足かせになることが多い。そんな落とし穴があると知っていれば、ブランドと時代を、俯瞰的に冷静に眺めて、時代からズレないよう最適化することも意識できるでしょう。

典型的な成功例はポカリスウェットだと思います。時代の空気に敏感でブランドの見せ方を創造的に変更していく様は大変勉強になる。「アルカリイオン飲料(1980年)」「イオンサプライ(1984年)」「リフレッシュメント・ウォーター(1990年)」「ボディリクエスト(1999年)」・・・。ポカリスウェットが発売当時のまま「アルカリイオン飲料」で「スポーツドリンクの一ブランド」だったら今の成功はないでしょう。「水分補給」や「健康的な清涼飲料」としてブランドのフレームを拡げてきたことが成功の一要因だったと言えます。正直、中身の変更はあまり行われていない(と思う)けれど、見せ方や打ち出し方を時代に即して変更してきたことが成功要因でしょう。

ここ2年ほど、僕たちの仕事も時代の流れのなかで変更してきました。「ブランディングをどうするか」というものから「時代が大きく変わりゆく中で、これまでとこれからを一度、じっくりと立ち止まって考えてみませんか」というものに大きくシフトしてきました。ありがたいことに、どのクライアントさんにも大変喜ばれています。これは変革期のトレンドだと思うし、そこに敏感な企業が今後も発展していくのだと思います。