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風情ある投資の道しるべ

投資とは単なる実利の追求にあらず。それは人生の奥深きところを問う、詩のごとき営為なのです。

利潤の山を疊んだところで、もしこの世の無常を知らず、リスクと呼ばれる因果の綾なす理(ことわり)を解さねば、いかで幸福を手にすることができましょう。投資に明眼ならんとす人は、細部にこだわりつつ全体の構えを肌身においやしなくてはならぬ。これこそ認知心理学の「ファジートレース理論」が説く至言であります。

人は知の領域を掘り下げるとき、二重の痕跡を辿ることになる。表面的で言語に紐つく痕跡は具体の事象の姿を刻むが、その痕は次第に風化へと向かう。一方、別の深遠なる概念の痕跡は、事物の本質のみをつかみ取り、長く私たちの心に残るのである。

細部と全体、双璧の眼力

投資を賢明に弾むるには、この二重の眼力を欲しておく。

会社の財務状況や株価指標といった属題(ぐちょく)の数字をあますところなく記憶し分析する力が、具体的な言語の痕跡となる。しかし、それのみに囚われてしまえば、全体の森を見失うこととなろう。

これに対し概念の痕跡は、リスクとリターンの大局を捉える上で欠かせぬ錨(いかり)となる。だが、ただそれのみに耽溺していては、具体性を失い的はずれの判断を下してしまうであろう。

先達の投資家は、この二つの痕跡を巧みに調和させることによって、真に的確な決断を下すのである。まず概念の立脚地を決め、その上で具体の細部を検分する。そして最後に概念と具体の間隙を精査し、合理的確信に到達せねばならない。


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