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『眉山』著:太宰治

最初に

↓青空文庫で読めるのでどうぞ。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/243_20190.html

本文

これだけ短い小説で、揺さぶってくる小説を私は他に知らない。
短いので、ぜひ読んで・・・、とだけ言って終わってもいいのだが、
少しばかり書いていく。

描写について

もちろんラストもいいが、本作が優れているところは
「眉山ごときに、僕の名前や、作品を、少しでもいじられるのが、いやでいやで、堪え切れなかった」
とあるように、「インテリ」と
文学についてよくわかっていない(?)一般人との関わりで
よくある風景が、うまく描写されているところである。

例えば、学校で好きな漫画を読んでいてそこいらのクラスメィトに十把一絡げに「それって感動するよね」と言われたときのような感覚。
これは作品当時と今とでほとんど変わらないものだ。
そんな誰でも言えることをわざわざ言いに来るな

この感覚は、みなさんと共有(この言い方は嫌いだが)できるだろう。

このような描写で、巧みに女中眉山は不愉快なキャラ付けをされていく。
読書家ほどそうなるのではなかろうか。

それで、あのラストである。
何のトリックもなく、コペルニクス的転回という奴が起こる。

正に一言では言い表せない。小説には、あのような

一言では

言い表せないことが表現できるのである。

そして、太宰は決して人の心がない人間などではない、ということも。

以上



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