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『限りなく透明に近いブルー』著:村上龍

全体を通じて

初めて読んだのは、14歳のときだった。私はご存知の通り、
全く集団生活に馴染めていなかったので太宰とか、「陰気な」小説を読んでいた。
(私が太宰で最も推せる『眉山』はまたこちらにアップします)


その流れで、めちゃくちゃな小説がひたすら読みたかった。

しかし、ピュアさが案外多く感じられて、芥川賞に相応しい、という感想をもった。
ただ無茶苦茶なだけではないのである。
村上龍は。

本文

多くの描写はヤクと乱交、ゴキブリ嘔吐流血・・・途中で読めなくなる方がいても仕方がない。
さしもの自称濫読家の私も戸惑った記憶がある。

一方で、主人公リュウのまともな部分も見える
雨の朝、金髪の女の子と関わるシーンだ。

ここは身につまされた。
私も、大切に思う人はいたが、数え切れないほどの失敗、失言で多くの関係を失ってきた。
リュウには優しさがある。しかし、一方では電車でレイプまがいのことをする。そんな不安定さに共感した。

エピローグについて

ラストで
「自分でこのなだらかな白い起伏を映してみたいと思った」
とリュウは思うが、白い起伏は彼の考える優しさなのだろう。

ラストの少し手前で、徐々に仲間たちは行き詰まっていく。仕事に、生活に・・・。
ヤク中なのだから当然だ。まともに何かができるわけはない。

それをずっと見ていたリュウの優しさが耐えきれず、ラストに繋がるのである。ついに壊れちゃったというわけだ。
リュウは賢いから、どこかでこのままではろくなことにならないとわかっていたのだろう。

最後に2点だけ

作品を通じ、どこか他人事めいた描写が印象に残っていた。
リュウが、そうでも思わないとやっていられなかったのだろう。こんなことしている自分が受け入れられない。かといって他にすることは思いつかない。それがようやくラストで見つかるのである。

終盤「鳥」に恐怖していたリュウが、最後にはリアルの鳥をパイナップルの前で待ち受けていてハッピーエンドを感じた。鳥にパイナップルをあげるのだ(!)

リュウが何かを乗り越えた、成長したという描写であろう。

以上

私の無茶苦茶な(これほどまでではないが)10代を総括できた気がするし、村上龍という天才が名を得たという点でこの作品は価値がある。

無理せず、皆さんには読んでほしいですね。

では。

何かに使いますよ ナニかに