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『3000億円の事業を生み出すビジネスプロデュース戦略』

こんにちは。青い羽のタナカです。今回はドリームインキュベータ第二弾ということで、『3000億円の事業を生み出すビジネスプロデュース戦略』です。昨今、日本の大企業は強大な資本力、信用力を持ちながら、新しい事業を生み出すことを苦手としています。そんな状況に対し、「日本企業が成長しない」という社会課題に取り組むドリームインキュベータが巨大な市場と仲間づくりをする方法を教えてくれる一冊です。

1.課題の大きさは市場の大きさ

事業というのは付加価値の総体であり、大きな事業を作るためには当然ながらそれだけ多くのニーズがある市場で価値を出す必要がある。しかし、多くの基本的なニーズに対しては既に各業界の企業たちによって打ち手が打たれている。『ビジネスの未来』風に言うと、問題偏在性が高く、解決難易度の低い課題は解決済みなのだ。

では手つかずの大きな課題はどこにあるのか?これはある種逆説的だが、手つかずだからこそ大きな課題になって顕在化してきているものがある。「社会的課題」だ。少子高齢化、待機児童、フードロス等、日本は社会課題の多さでは最先端だ。もちろんこう言った「大きく解決が難しい課題」は1社がなんとかできるものではなく、複数の力ある企業の連携が不可欠だ。トヨタ自動車が「クルマの会社からモビリティカンパニーへ」のスローガンのもと、大手通信会社からスタートアップまで様々な企業と提携していったのは記憶に新しい。

本書では、社会課題に対して業界を超えた構想を描き、その実現に向けた仲間づくりを行うことを「ビジネスプロデュース」と呼んでいる。

2.ビジネスプロデュースの5つのステップ

では早速ビジネスプロデュースの手法について見ていこう。

①構想する

取り組むテーマを検討する。この際、自社ができることや親和性が高い領域から考えるのではなく、解決すべき課題や助けたい相手から考える方が「大きな絵」を描くことができる。

②戦略を立てる

構想がある程度固まってきたら実行するために仲間にする企業を具体的に決め、交渉する順番や相手企業のメリットを明確化する。この時メリットはお金に限らず、技術の手の内化や企業のブランディングなど様々な視点で考える。

③連携する

実際に仲間にしたい企業との交渉を行う。この時、期待する企業と連携できない場合はそもそもの構想が成り立たなくなる場合も多く、その場合は構想から練り直す必要がある。また、政府に対するロビイングも連携に含まれる。法律は変えられる。

④ルールを作る

新市場、ビジネス全体で公平公正な競争を行えるルールを高い視座から作る。また、実行におけるKPIを設定し、トップと予め握っておく。

⑤実行する

新事業は実行する過程で様々なトラブルが発生するため、基となる戦略や構想を修正しながら進める必要がある。

①→⑤でスムーズに行くことはなく、行ったり来たりしながら進めていくだけの体力と適応力が求められる。

3.フックと回収エンジン

ビジネスの構想を作る際、意識したいのがフックと回収エンジンだ。フックは顧客を獲得するための撒き餌、回収エンジンがお金を得る仕組みとも言える。例えばGoogleの検索サービスは無料で使うことができるが、Googleはその検索者数を武器に広告主から広告を集め収益にしている。
このフックと回収エンジンのビジネス的距離が離れているほど事業は大きくなる傾向にある。

4.政府へのロビイング

「法律で○○と定められているのでできない」

といった壁に直面した時、日本企業はルールを変えてビジネスを発想することが極めて苦手だ。自動運転の行動試験はハードルが高く、仮想通貨の税率はいつまでも高い。一方で欧米企業はこの「ロビイング技術」に長けており、顧客へのメリットと解決できる課題を明確にすることで様々な規制緩和を進めてきた。uberの配車サービスはもともとアメリカでも規制の対象になっており、日本同様公道を走ることができなかった。しかし州政府に対して「顧客の利便性が高まる」ことを前面に押し出し交渉することで州単位で規制緩和を勝ち取った。

5.書評

例えばそのフードロスの問題を取り上げる際、「アフリカでご飯に困っている人がいるのに」という物言いが多いと思います。これは、先進国が必要な分だけ食料を買えば農地に生産余力が出てアフリカ向けに食料を作れるという理論が主ですが、では仮に農地に余力が出たとき、農家はアフリカ向けの食料を生産しようとするでしょうか?農地の選定は物流効率も加味して決めているため、今ある農地からアフリカに物を送ろうとするととんでもなく高い輸送費が発生したり、鮮度が落ちるということは想像に固くありません。上乗せされる輸送費や梱包費を買い手であるアフリカに請求しますか?
このような、事業者単位で見るとビジネスになり得ない課題に対して取り組むために求められるのがビジネスプロデュースです。余力のある土地を例えば発電所に活用し、代わりにアフリカに近いところにある発電所を農地に変える。こういった「業界を超えた事業創造」のスキルは影響力のある大企業の社員こそ持つべきスキルだと、再確認しました。


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