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0.01なぜ、イギリスの伝統的なアロマセラピーか?

このノートには1990年代後半のイギリスで学んだプロフェッショナルアロマセラピストのトレーニング内容を主観や考察、雑談も交えながら分かりやすく解説しつつ残しておきます。

イギリスの伝統的なアロマセラピーを残しておきたい理由

当時のイギリスでのトレーニング内容を「残しておきたい」と思ったのは、私自身が学んで、実践してみて、教えてみてアロマセラピストが知るべき普遍的な内容だと思ったからです。
そして、無駄なくアロマセラピーの基盤を学べる上に、いかようにも枝葉を伸ばせる可能性を持っているからです。

アロマセラピーは精油と共にその内容や技術が日本にやってきました。1990年より前のことです。しかし、アロマセラピーはインターネットの普及や物流技術の発展の中で、多様化し、希薄化し、今ではセラピー(療法)としての側面より、嗜好品としての側面の方が、広く浸透しています。

嗅覚は一人ひとり異なるわけですから、香りの分子という部分では療法的であっても、そこには嗜好が加わるのは当たり前、ですが、伝統的な療法としての側面に照準を置いたカリキュラムは今では貴重と言えると思います。

ですので、できるだけ当時の内容とその後の情報を区別して「残しておきたい」と思ったのです。私は当時学んだアロマセラピーを“トラッド・アロマセラピー”と名づけています。ネーミングの理由はノートの中に書きしるします。

イギリスの伝統的なアロマセラピー

1990年後半、私はイギリスで最初にできたアロマセラピストの団体の認定校へ入学、プロフェッショナルアロマセラピストのトレーニングコースに参加しました。

イギリスには元々精油の原料であるハーブを利用した文化が根付いていましたし、他のヨーロッパ諸国同様、香水等、香りの文化が発達していました。
日本ではまだほとんど知られていなかった精油はドラッグストアでも販売されており、すでにアロマセラピーは、補完療法・代替療法として、市民権を得つつありました。

アロマセラピストの団体が発足し、プロフェッショナルなアロマセラピストのトレーニングと資格システムを構築し始め、いくつかのスクールが認定校としてカリキュラムを提供していました。

オリジナル・アロマセラピーからトラッド・アロマセラピーへ

当時のイギリスにおいてアロマセラピーの主流は、セラピストが香りを利用し、経験的に情報を蓄積していくというもので、香りやそのメカニズムの研究や分析によるデータを重視したものではありませんでした。

しかし、それ以前のアロマセラピーは1900年代前半から中盤に活躍した、フランス人の化学者ガットフォセや、医師のジャン・バルネの研究と実践によるもので、彼らの著書からアロマセラピーがスタートしたのです。

彼らの実践は第一期のオリジナル・アロマセラピーと言えます。

1900年代後半、イギリスではオリジナル・アロマセラピーの情報を元にアロマセラピーという産業に医療従事者ではない療法家(セラピスト)や精油などの事業者も参入し、イギリスでのアロマセラピーを体系づけます。

主にフランス語の文献を参考にしたイギリスの療法家は自らも実践しながら経験を重ねてセラピスト向けや一般向けの書籍を出版します。

特徴的なのはアロママッサージを適応法の一つとして重視した点です。オイルを効率的に皮膚に塗布し、体に直接働きかける施術法が広がります。当時からの代表的なセラピストとしてワンダ・セラーやパトリシア・デービス、シャーリー・プライスなどがあげられます。

その頃のアロマセラピーを第二期として“トラッド・アロマセラピー”と呼びたいと思います。

トラッド・アロマセラピー=オリジナル・アロマセラピーではない

”トラッド・アロマセラピーはオリジナル・アロマセラピーのすべてをカバーしたわけではない”と推測できます。トラッド・アロマセラピーはオリジナル・アロマセラピーの情報にイギリスのセラピストの経験と考察がプラスされています。

…しかし、オリジナル・アロマセラピーの文献を解釈する過程で医療や化学の専門家以外には理解が難しい情報が削除されたり、間違って解釈されることもあったはずですし、一部のみを取り上げることもあったでしょう。
また、セラピストによっては宗教的な側面や、非科学的で魔術的な側面に情報を膨らませることもありました。

イギリスの社会問題の解決策の一つとしての補完療法

それでも、トラッド・アロマセラピーは当時のイギリスの社会背景の後押しもあり、オリジナル・アロマセラピーにホリスティックやヒーリングの概念を加えた補完療法(complimentary therapy)の一つとして認められ始めます。

補完療法は当時のイギリスの社会問題であった医療保険制度とその改革のための課題解決の一助として注目されていました。

また、ストレスによる心身症への西洋医学の量的、質的限界にも選択肢の一つとして受け入れられました。アロマセラピー以外にもリフレクソロジーや、指圧、霊気、フラワーレメディー等、ホリスティックヒーリングに関わる様々な療法に人々が関心を持ちました。

日本でも2000年以降同じような現象が起こります。〇〇セラピーがいくつも登場し、スピリチュアル、ヒーリング、ホリスティックという言葉を耳にするようになります。

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まとめ

☆ イギリスの伝統的なアロマセラピーのトレーニング内容は普遍的で応用性が高いので、ノートとして残しておきたい。また、アロマセラピーの拡散によって、トラッド・アロマセラピーの情報は希薄化する。
☆ イギリスの伝統的なアロマセラピーをトラッドアロマセラピーと呼び、それ以前のフランスのアロマセラピーをオリジナルアロマセラピーと呼ぶ。
☆ トラッドアロマセラピーはオリジナルアロマセラピーのある程度の情報にセラピストの経験的な情報が付け足されている。
☆ トラッドアロマセラピーは補完療法として当時のイギリスの社会背景に後押しされた。 

次回は日本に入ってきたアロマセラピーについてです。

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