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新卒採用編その5 志望動機その2の4

このタイトルのナンバリング、なんか最初はわかりやすいかもとおもって始めたんですが、かえってわかりづらいですよね。反省してます。
ただ私もnoteに慣れてないというのと、みなさんの記事をあまり読んでなくて、ああこういうのが見やすい書き方だなというインプットはほとんどしておりませんで、今回も便所の落書きを思うさま書き殴ります。

今回は、ある種の愚痴というか、採用あるあるみたいなお話になると思います。

前回だかも書きましたが、私が身をおくのは、所謂社会インフラのサービス業で、参入障壁もそんなに低くない業界です。それなりに社会公共性もあります。一方で仕事自体は業界外から見たって地味だとわかる、そしてそんなに給料も良くない業界です。そして国をあげて将来的な課題が浮き彫りにされていて、課題解決が社会全体の成長ドライバーになることもわかっていますが、具体的には大手でさえどうしていいかわかっていない、そんな業界です。

そうするとこの業界を志向する求職者の傾向もある程度絞られてきます。
まずは文系出身者。学問を文理で分けるのは個人的にはあまり好みませんが、まあ一般論として、メーカーは理系が主役みたいなところがありますので、自分が主役になろうと思ったらサービス業を志向するでしょう。
次に安定志向。社会インフラとして参入障壁もある程度高いとなると、まあまあ潰れる心配はないだろうと見込めます。
また、そこそこの社会貢献志向もあります。ただ積極的に社会奉仕がしたいのならもっと社会貢献性の高い仕事は他にもあります。この業界を志向する場合、自分の仕事が世のためになるならいいんじゃないかという程度の、ちょっと控えめなものです。
そして、仕事への情熱は弱火から中火程度です。給料もそんなにもらえない代わりにそこまでガツガツ仕事に人生を全振りしなくていいと考えていることが多いと思います。なので、全体的にギラギラしてないというか、地味です。
そしてさらに社会的な注目度にもほどよく関心があります。そこまでしょっちゅう話題に出るわけではありませんが、国が経済の要と考える程には注目されています。ですのでそれなりに面白そうだしチャンスも転がっていると考えられます。また新しい取り組みでアタマひとつ抜けられたら勝ち馬に乗れる目もあるでしょう。

個人差は当然あると思いますが、この業界を志望する方のおおまかな傾向です。かく言う私もだいたいそんな感じです。逆にこの辺が意識できているとむしろ入社後のギャップもそこまでないでしょう。

これは私の業界に限った話ではなく、他の業界でもその特性から志望者の傾向がおよそ割り出せます。逆に、自分の志向を客観視できれば自分らしく働ける業界に出会えるという論理が成り立ちます。


ここでポイントになるのは二つ。
一つは業界の特性は流動的で曖昧であること。
一つは他の特性とのトレードオフの関係です。

業界の特性は時代によって大きく変化します。ちょっとここでSFチックな空想をしてみます。
製造業は工場で既製品を大量生産をすることが主流です。開発職によるイノベーションが顧客のニーズを掴み、大規模な生産拠点で集中的に作られた製品が時に世界中へ輸送されていきます。
ですが、時代が変わってもしAIと3Dプリンターが高度に発展したとしたらどうでしょう。
多品種小ロットのカスタムオーダーが主流になり、単純な機構の製品は消費地へ直接原料を調達し現地で生産することさえあるかも知れません。
プリンターさえあれば製品が作れるので、メーカーはプリンターに流すデータを売るに留まり、顧客が自らプリンターを持った業者に原料を持ち込むかも知れません。必要に応じてカスタマイズした製品を必要な分だけ製造するかも知れません。家庭用3Dプリンターなんていうものも出てくるかも知れません。
そうなると、研究開発で新しい機能を創り出し顧客の要望に応える開発職よりも、既存の機能を組み合わせて顧客に応じた最適解を提案する営業職に重きを置くようになるかも知れません。すると、研究コストは最低限に貶められ、メーカーが提案営業に優先的に経営リソースを投入し、ある種商社のような企業文化へ変容していくかも知れません。データの知財管理も重要性を増しますので、法務系の知識が今まで以上に重視され、文系の従業員の比率が上がるかも知れません。

とまあ、ここまで全ての語尾が「かも知れません」の、なんとも根も葉もない夢と空想の入り混じった机上の空論ですが、業界の特性とは時代によって変化していくものだ、という話です。

もちろん時代が変わっても変化しない特性というものもあるかもしれませんが、それはたぶん製造業は(データを含む)モノを作っている、などのような揺らぎようのない定義のようなもので、モノを作っているから理系の人が多い、といったような、そこからくる特性とは少し性質が違うものと考えます。
また、変わりにくいものとそうでないものの差はあれど、それはそういった側面を含めて特性と考えられます。

そして、その特性の見立ては将来予測をふくむ様々な視点によるため、正解というものがありません。ゆえに、はっきりどこかのホームページなどに載っていたりはしません。
一方自分の会社を取り巻く状況はこういうものだ、という個別的な意見はそこかしこにあります。代表的なところで決算短信の定性情報があります。ここには会社が今どういう状況にあるかという説明があり、それこそオフィシャルな意見です。ただ、それはあくまで自分は自分についてそう思いますという個別の意見に過ぎず、業界全体の特性とは多少性質が異なるものです。
業界団体や関係省庁からの政府声明などはもう少し一般的な特性に言及しています。ここが一番近いですかね。総務省や経産省のHPになんとか白書みたいなものがあるのでみてみてください。
また、シンクタンクなどによる事業特性分析も役に立つでしょうが、こちらは少し個別的な言及です。
インターネットやChatGPTでヒントは手にできるでしょうが、やはりこれこそ正解ということでまとめて網羅的なものはありません。

そして業界の特性は時に他の特性とトレードオフの関係にある、というか、そういう特性にはメリットとデメリットの両面があることが多いということにも注目してください。
例えば、ハードワークかどうかと給料はおよそトレードオフの関係にあります。反例はありますが、個別的な事例ではなく業界全体の特性としての話です。
ハードワークというのは必ずしも時間外労働の長さを指すものではありませんが、一般的に労働の対価としての賃金は、基本的にその業務が生み出す価値に比例します。
生活保障の観点や労働市場の影響もありますが、賃金とは、会社の支払い能力を上限にして、労働の対価として支払われるものです。つまり、極論サラリーを稼ごうと思ったらその分の売り上げを稼がなくてはいけないということです。
ですので利益が薄い商売をしていると給料もそれなりの金額になるのが妥当です。この辺のカラクリはいつか詳しく説明します。
と、仕事のハードネスと給料がトレードオフであることを説明しましたが、これは個別的な企業の特色以上に商売の特性、業界の特性ということができます。
他にも、安定性は固定性と読み替え、流動性=成長性とトレードオフでしょう。成長曲線が緩やかな業界は急激な成長を期待できませんが、急激な成長を続ける業界は目まぐるしく仕事のフェイズを変化させますし、反動を受けやすく浮き沈みも激しくなります。メリットが、裏を返せばデメリットになるということです。そして当然どちらが良い悪いという話ではありません。

要は、どちらにベットするか、どちらが好きか、という問題です。「あれか、これか」です。キルケゴールです。

このように業界の特性は流動的で曖昧、かつメリットデメリット両面併せ持ちます。
曖昧なので自分でいろんなところに情報を取りに行くしかありません。その上で好きか嫌いか、自分の労働力を一点賭けできるか(副業ができる会社を除き会社は一つしか選べませんからね)を判断することになります。肌感覚を含めいろんな人にどう思うか聞いてみることが非常に大事です。

これはみなさん自然とやっていることで、珍しいことでもなんでもありません。ただしそれが充分でないと、やはりミスマッチの温床になりますから、ゆくゆくは後悔することになります。
私が選考を担当する時も、ミスマッチを防ぐ意味で、きちんと自分から情報を取りに行って業界のことを理解されているかという視点を持っています。これは新卒に限らず、未経験者の中途採用も同じです。
新卒の場合はいろんな業界のいろんな会社の説明会に行って、いろんな人の話を直に聞いてそれぞれに比較ができていると思いですので、ここは特に対策される必要もなく、みなさん既にやっているところです。誤解が有れば訂正しますが、自分なりの分析ができていれば充分だと思います。
ただ、やはりそもそも興味をお持ちいただけていないようなら、つまり、ろくすっぽ業界研究されてないとわかった時点で敬遠せざるを得ない、ということは強調しておきます。ここは入社後のギャップにつながるところですので、少し厳しめに見ていました。

そして、ようやくここからが本題、その上でみなさん各々の分析結果と自分の志向性を志望動機とされていらっしゃいますが、採用の現場からの率直な感想として、採用担当者は選考の間に同じようなフレーズを数十から数百ほど目にすることになるのです。
例えば、私の業界であれば、社会公共性の高さから、「縁の下の力持ち」「社会の土台」などです。
もし国際色の強い業界なら「社会の架け橋」「世界の人々を繋ぐ」のようなフレーズになるのではないでしょうか。

誤解しないでいただきたいのは、そういったフレーズを使うこと自体は全くもって悪いことではないということです。なんなら業界のあらゆる側面を説明できていない業界側の問題ですし、ありふれた言葉であってもむしろ業界の特性を理解しているということで評価されるべきことです。
ただ、あまりにも同じ言い回しを目にする機会が多いので、ESにそう書いてあっても自然と読み飛ばしてしまうということは覚えていただいていいと思います。 

みなさんも、スーパーで食品を買う時などに、二つ三つの商品を見比べてみることがあると思いますが、たとえばラベルを見て決めみようとなった際に、共通する記載は書いてあることの確認に留めて、内容量や原材料、成分の違いをこそ比較すると思います。

ということは、まあ一概に絶対そうだともいいきれませんが、これを書いていなければ落とす、といったような尖った審査基準の企業でない限り、ありふれたフレーズのみで構成された志望動機はほとんど読まれていないと考えていただいて結構です。

審査基準は企業によりますが、結局は比較によって合否が決まりますから、同じポテンシャルならより納得性の高く印象に残る志望動機が優先されます。まあ考えてみたら当然の話なんですがね。

では、ありふれたフレーズだけに陥ってしまわないためにはどうすればいいか。
答えは簡単、あなたのパーソナリティと意見を表現すればいいのです。
オーセンティックな志望動機が、
「①あなたはこうです、②自分はこうです、③だからいいと思いました。」
というものだとします。
「①あなたはこうです」の部分がありふれたフレーズだけになってしまうのは無理もありません。
しかし、「②自分はこうです」というパーソナリティと「③だからいいと思いました」という意見は、あなたしか持っていません。
就職をゲームのように考えその攻略方法を教えるような就活アドバイザーモドキ(注)の言うことを間に受けると、この②と③の部分もありふれたフレーズで埋め尽くされることになります。
②や③は、自分が絶対に好きなことや、絶対に譲れないこと、絶対に正しいと思うようなこと、そして自分が大切にしていることだけで構成してください。他人の意見は極論関係ありません。あなたが中学、高校、大学と過ごしていく中でターニングポイントになったこと、衝撃を受けたこと、好きになったことを書いてください。
そうするとあら不思議、あなたのパーソナリティに根差した、あなただけの素敵な志望動機の出来上がり。不思議でもなんでもないですね。

(注:労働や経済の本質を蔑ろにしてロクなことを言わない一部の不届きな連中をこう表現することにしました。もちろんきちんと就職というものの本質を捉えて適切なアドバイスをされるアドバイザーは大勢いらっしゃいます。)

絶対に好きなこと、正しいと思うこと、大切にしていること、と書きましたが、一番好きなことである必要はありません。そこは個人の価値観です。上からいくつか並べてみて、どれかに業界の特性が引っかかれば、それが志望動機です。
ただ、上から5つ目くらいになると結構みんなおんなじこと考えるものなので、やはりありきたりになります。また、引っかかりがひとつだけだとやっぱり少し弱いですね。
なのでここは組み合わせで考えてみてください。ひとつだけだと平凡でも、組み合わせ次第であなただけのものになるでしょう。

前回も書きましたが、志望動機は非常にパーソナルなもので、王道はありません。とにかく業界研究と自己分析を繰り返して、あなただけの答えを見つけてください。逆に、それができなければ入社後に後悔する可能性が高くなるということです。


実際には、超一流企業を除きほとんどの人が月並みなフレーズで志望動機を構成していますし、今思えば私自身もそうだったような気がします。
給料が高いわけではないので後悔がないと言えば嘘になりますが、なんとも面白いことに、この業界が面白いな好きだなと思った気持ちは消えていないどころかますます増していますし、やっぱりハードワークには自信がないので身の丈に合ったお手当と思って納得しています。
まあそのあたり、正解は誰にもわかりません。答えは風に吹かれています。ボブディランです。

今回も便所の落書きでしたね。次回もがんばります。



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