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地上で転回する点α
自転車で出掛ける。昨日の決意通り工場地帯沖の公園目指して。雑な下調べだが、車では何度も通ったし周囲を海や運河で囲まれているから迷走しすぎることはないだろう。
と思っていたのだが、肝心の工場地帯に出る前に盛大に迷う。住宅街で「だいたいこっちに行けば道が繋がっているだろう」と進んだら、明後日の方向へ曲がっていたり自動車専用道であったり。それでもどうにか首都高を越え湾岸線を渡り、工場地帯へ到達する。
こんな時期のこんな場所に人間なんかいないと思っていたが、あにはからんや猫はいる。昨日に続き今日も遭遇するとは今年の猫運は相当大吉であるらしい。卸売市場の横の植栽に眠たげな猫が数匹、ここで可愛がれているのだろう。写真を撮りつつ代表者1名を撫でさせてもらう。
この時期この地域、確かに労働者は皆無だが通行者は多い。私もその一人なのだがよくこんな地の果てに動力無しで来るものだ。私の古い記憶では、かつてここは油っぽい埃が滞留する無彩色の空間だった。それが今やスプーンのように細いランナーが行き交い、公園の樹木は苔をまとうほどに成長している。埋め立てた砂浜は戻ってこないが、それでも土は僅かずつ育っている。
新しい自転車はスイスイ走り、上昇する体温に手袋とマフラーを外す。水筒を持ってくるべきだった、缶コーヒーは微糖でも甘すぎる。
目的地、昨日自動車でやってきた公園に辿り着く。昨日と同じく呆れるほどに車が停まっている。そして人が散歩している。これ以上遠くに行けないのだから仕方ない。深呼吸で冷えすぎないよう缶コーヒーで肺を温める。足を休めながら飛行機を眺める。本当は沢山の人達が乗るはずだった飛行機。雲も風も地上は穏やか。
スマートフォンで地平や水平の線を正しく水平に撮影するのは以外と難しい。後で見返すと残念な出来上がりのものが多い。遠近の消失点は“誤魔化し”が効くのだが。多少は腕が上がったとおもっていたのだがまだまだ。ワキが甘い。
ふと、誰も眺めていない景色に遭遇する。自分の鼓動が聞こえるほどに静か。
冬の休日は景色の撮影に向いている。空にも陸にも余分なものが少ない。空気が冴えている。またこよう、この冬また静かな時に。
今日の英語:Silence
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