素数の年月を積み重ね

 声を聞いて、その声が何年の生育を基にしているか考える。
 先日は自転車で埋立て地まで遠出した。そこら一帯は比較的新しい地域で、私が幼い頃は何もない灰色の混沌という印象しかなかった。しかし何時しか真平らに均され、喧々囂々して新しい空港が作られ旧い空港は沖へ引っ越した。
 人間が人間のために造った、廃棄物を重ねて埋めた地面である。それでも着々と雑草は生え苔は広がり、夏にはセミが鳴き交わすのだ。
 その埋立て地には植え込みの植栽はあっても、背の高い街路樹は無い。ましてや大規模な公園も無い。それでも木の2、3本もあればセミが鳴いているのだ。垂直な倉庫と道路の隙間、養分など皆無の土に植えられたうらなりの樹木。それでもそこでセミは鳴いている。
 昆虫の中でも飛ぶのが下手なセミが、アスファルトだらけの街からコンクリートで覆われた島にやってきて、痩せっぽちの木と共に生きている。生命とは何てたくましいのだろう。亀裂で雨水をすするゼニゴケと共に、この島を世界を被い尽くしてくれないだろうか。
 人間が作った地面でも、人間だけのものではないと知る。いつか全てのメタルが錆びる暇で。

今日の英語:Weathering

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