どれだけ土が汚れていても

 日の沈んだ街でペダルを漕いで、急いでいないかと我に返ればそれに気付く。
 休日に適当に出掛けた。急ぎでもない用事を口実に取り敢えず。がらがらのフードコートでフライドポテトを食べながら、この日記を立て続けに書く。アイスコーヒー、生クリームばかりのクレープ。照明のきいた空間から動き続ける道路を見下ろしながら、怠けながらキーボードを叩く。
 短くなった昼を感じ早めの帰宅へ。それでも日は落ちる。ライトを点けた自転車。かつてはダイナモが重く煩かったが今では何と警戒なこと。路地を曲がりその先、月が昇っているのを知る。
 一面の茅鼠が蹲ったような街の上、そこだけは確かに月が輝いている。どうにか写真に収めたいと思うが、ただのスマートフォンでは私の見た通りの画像は写らない。いや、私の眼の彩度の通りに撮影してくれるカメラはあるだろうか。私以外にも帰宅の人が通る道。粘ったとて思う通りの写真は撮れないだろう。
 ただ私は、美しい月が通りすぎていくことを覚えている。



今日の英語:Moon

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