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足音踏んで風の夕 #1

 今日もバイオリンのレッスンの帰り、河川敷を歩いた。楽器を背負って気軽に歩ける距離ではないが、この時期の間に歩いておかなければならない。

 空は晴れ日は傾きつつあるこの絶妙な間隙、いま歩かねば私の人生を何%か損をする。

 私が歩くのは観光名所でも何でもなくただの県境の河川敷だ。それでも人気が去った時間帯であれば存分に黄昏を堪能することができる。都市部のありふれた一隅が、つかの間ひらけた天空の通路となる。

 もう土のにおいがする場所も大分減った。どこもかしこも片付け過ぎている。

 かつてに比べればスマートフォンのカメラの性能も相当上がった。それでもまだ不満はある。鮮やかにしなくていい。暗いものを暗いまま捉えてくれないだろうか。私の視力レベルでいいから、空に焦点を合わせてくれないだろうか。



今日の英語:Evening

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