ペダルのきしみと呼吸音
釣行でもなく、ただ単に自転車に乗って出掛けた。
人工島の工場地帯。最初は釣りのため訪れていたのだが、釣り場を探して右往左往するうちにすっかりこの風景に魅せられしまった。
緑は無いが青がある。土は無いが水が広い。長く伸びる人間のいない道。
アスファルトを裂いて根を延ばす植物。時折通りすがる猫。地表から人間が消えた後、この地で生態系の頂点に最初に立つのは猫なのだろう。自転車の速度とともに空想は続く。こういう状況を「妄想が捗る」と言うのだろうか。
最果ての公園。自動販売機で缶コーヒーを買って歩いたりぼんやりしたり。全ての音が遠いのがいい。だが海がここにあるのに波のがしない。ほとんど消波されてしまっているのか。
空を飛んでいる飛行機を撮影したいと思うのだが、私の腕では魅力的な瞬間を捉えられない。まあでも飛行機の写真は目指す人が大勢いる。それより私は水面の鳥を。
夕暮れを感じ帰路へ。夜の人工島も面白いだろうとは思うのだが、如何せん自転車、安全を考えると日が沈みきる前に市街地へ帰らなければならない。
それでも悪あがきをして夕日や橋や黄昏を撮影する。
この美しいシルエットも、蔦と錆に覆われればもっと美しいだろう。
全てが夜に沈む。
また来る。
今日の英語:Twilight
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?