河の途中に果てを感じ

 いつもより重い荷物を持って、風の吹く道を長く歩く。
 いま私はバイオリンを習っているが、その教室である先生の家は少し辺鄙な場所にある。東京23区内、素朴で閑静な住宅地であるのだが、最寄りの駅まで徒歩20分はかかる。自動車や自転車であればどうと言うことの無い距離だが、バイオリンを背負って歩くには気軽に歩ける距離ではない。
 が、それでも歩く。運動の習慣は無いが歩くのは嫌いではない。あの先生に教わるためにというプラスアルファで、往復40分をてくてく歩く。

 最短ルートは現在模索中。しかしその過程も面白い。適当に歩いても目標となる建築物や構造があるので現在位置を失うことはない。風景と新鮮な探検感覚を楽しめる。

 現時点で最も気に入ってるルートはある。最短ルートからは外れているが、最も空が広く、土と草のにおいがする。私の好きな遠近感のある写真も撮れる。
 バスに乗れば3分の距離。歩いているうちに後悔もする。もっと小さいバックにすればよかった、予備のバッテリーは不要だった、あの楽譜は持ってこなくってもよかったのに……。

 それでもこの人気の無い明るい光景の中で立ち止まれることは何物にも代えがたい。月が移ろえばまた違う色彩が見れるだろう。それを楽しみにまた私は遠回りして軽い迷子になるだろう。

今日の英語:Walking
 

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