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宇宙を記録するレコードの上

 地球平面説。地球は球体ではなく円盤状の平面であるという説だ。我々は既に地球は自転し公転し銀河として渦を巻く球体であるということを“常識”として知っている。それでも水平線を見て、地球が円盤であるということが腑に落ちてしまうこともある。

 先日とある中洲の橋を散歩した時は、雲が地表まで膨張し、空は白い半球で包まれたような錯覚を私に引き起こした。そんな街の光景はスノードームの中に置かれた模型さながらだった。

 あの白い空間の向こうには何も無い。街が終わった先は虚無の空間、そして巨大な観察者が我々を眺めている。

 もちろん私は地図を知り地形を把握し、彼方まで地表の弧が続いているのは理解している。それでも「世界はあそこで終わり」と言われれば信じてしまうような、小さく完成した光景がそこに見えた。

 これと同じ感覚に捕らわれたのは夜の海だ。その時も雲が地表面まで満ち、月も無く吠える灯台も無く、暗黒の空間の先で海が宇宙の深淵に落ち込んでいるように見えた。ああ、かつての船乗りはこの光景に恐怖したのだろうと。

 かつての賢哲は白い闇しかない水平線を見て、この世界は平面であるという感覚に囚われたのではないだろうか。そしてその先にあるのは蓬莱か須弥山か。

 もし宇宙の法則が崩れて滅びる時は、白い闇に侵食されて消滅するのだろう。


今日の英語:DIsk

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