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境界を感じ歩く

 色彩は豊かでもよし乏しくともよし。梢に葉がなくてもその枝振りの良さがある。

 私は葉を落とした落葉樹の姿が好きだ。その清冽なシルエットが露になるのも、空が透けてみえるのも。もうしばらくすればその枝の先端に妖艶な蕾が顕現する。

 相も変わらず同じような風景ばかり撮っているが、その魅力が尽きないのだから仕方ない。水面、空、植物。覗き込んでいるうちに自分がどこに焦点を合わせているのか分からなくなる。多層の視界、宇宙が向こう側にもある。

 春になれば歓喜を感じ、夏になれば上昇する生命に眩暈を起こす。それも全て美しい。ただ今は寡黙になっていく道と、真冬に向かい結晶化していく空の冷たさ。

 秋に夕陽が鮮烈になり冬にその鋭利が頂点になるのは夜という寒冷の領域が活性化ゆえだろうか。肺に冷気が差し込む季節、その斜光の鋭さに容赦がない。

 夜はもう間近。


今日の英語:Sharp

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