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映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』

本人の発言やレア物も含めたな映像に関係者の証言を絡めたドキュメンタリーだと思っていたが、逆に本人以外のコメントで加藤和彦像を浮かび上がらせる構成だった。けれども、僕には合っていた。様々な証言者視点から語られたことが、結果的に僕自身が持っていた加藤和彦像の空欄を埋めてくれたからだ。そもそも監督の相原裕美に映画企画のきっかけを与えたのが高橋幸宏ということだし、いわゆるヨーロッパ三部作がクライマックスに置かれた構成は必然だったような気もするが、まさにそこが僕の中で抜けていたトノバンだったのだから。

きたやまおさむ、松山猛の話は興味深く聞けたのはもちろんなのだが、個人的には高中正義、つのだ☆ひろ、泉谷しげる、小原礼などミュージシャンの証言には引き込まれた。長い時間の経過もあるから、良くも悪くも美化された話だとしても、一緒に音を出し、作品を作った人たちによる説得力とリアルさを持って伝わってくる話は感動的だった。

残念だったのは、再結成したサディスティック・ミカ・バンド以降がすっぽりと抜けていたこと。特に、映画には坂崎幸之助が出演していたので、フォークルの新結成や和幸のエピソードはもちろんだし、ファンの立場からの坂崎証言やコメントをもっと聞きたかった。絶対に面白い話が満載だったはずだし、同じように思う人は決して少なくないと思うのだが…。

" トノバンって、もう少し評価されても良いんじゃないかな? "
この高橋幸宏の発言から映画が始まったようだが、この " トノバン " の部分に入れることが出来る他のミュージシャンやアーティストは少なくないのではないか。日本でも、たとえ映画というカタチではなくても、評価すべき人、評価されるべき人はまだまだたくさんいると思う。この映画がきっかけになってほしい。

P.S.
ラストに流れる「あの素晴しい愛をもう一度~2024Ver.」はさすがにグッときた。


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