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能登半島への旅 ~輪島塗の「沈金」体験をやってみた!

少し前の話になるが、10月8~10日の三連休に能登半島を旅した。
旅好き、かつ全国への出張取材の多い人生を送ってきたので、日本全国ありとあらゆる所へ行ったことがあるのだが、能登半島は初めて。北陸地方といえば、金沢までで、そこから先は未踏の土地だった。

輪島に憧れがあった。
能登半島の北のほう、日本海に面した位置にある輪島。「輪島塗」で有名な「漆器」の町だ。いつか行ってみたい、行ってみたいと思いながらも、なかなか足を延ばせずにいた。

ある時、ふとつけたテレビで「輪島塗」を紹介しているのを見た。それでふつふつと「輪島に行きたい」気持ちが湧き上がり、夫に相談。「じゃあ、行こっか!」ということで、能登半島旅行が決定した。こういうフットワークの軽さがありがたい。

まずは京都から金沢までサンダーバードで行き、金沢でレンタカーを借りた。これでぐるっと能登半島を一周するのだ。
ずっと「三連休は雨」と予報が出ていたが、最近の私は晴れ女(普段の行いの良い夫のおかげ、という意見もあるが……)。なぜか私たちが行く場所、それも屋外にいるときだけは雨が降らない。「祝福されてるね」と笑う。

余談だが、この「祝福されてる」というのは夫の十八番で、付き合い始めた頃、時刻表も見ずに行った駅でたまたまタイミング良く電車がホームに入って来たとき、夫が満面の笑みを浮かべ、私に「俺ら、祝福されてるなぁ!」と言ったのが聞いた最初だった。
電車がちょうど来たことを「ラッキー」くらいにしか思っていなかった私は、この「祝福されている」という言葉を聞いて、ああ、人生っていうのはこうやって自分でよりハッピーにしていくものなんだなと悟った。
「そうだね、祝福されてるね」と同意してみれば、急に自分が特別に天に愛されている存在のような気がしてきて、それだけで幸せが倍増したからだ。
以来、何か良いタイミングがあれば、私はいつも言うようにしている。「祝福されてるね」と。

話が逸れたが、そんな祝福された二人(笑)は、雨に降られることなく能登半島をまわることができた。決して良い天気ではなかったのだが。

お昼ご飯は「道の駅 雨晴」にて、サクラマスのパスタ。
ここは海を眺めながら食事ができる。
タイミングが良ければ、列車が走るのを見られることも!
のとじま水族館へ。
かわいいアザラシに癒される……
四方が海に囲まれていて、半島にいることを実感!
晴れ間も出てきたね♪

1日目の宿泊は和倉温泉の旅館にした。
ただ、最近私が旅館のコース料理を食べ切ることができないので、素泊まりにして、旅館近くの居酒屋でおいしいものを食べることに。
選んだのは、地元の人が行くような「お魚がおいしいお好み焼き屋」さん。
お好み焼き屋なのに、お魚が絶品とのこと。
実際、居酒屋メニューがいろいろあって、刺身、秋刀魚の塩焼き、イカの唐揚げ、どれもめちゃくちゃおいしかった。

お酒は福光屋さんの「風よ水よ人よ」。
北陸の酒のわりに淡麗で食中酒としてバツグン!

温泉にも晩と朝の2回、ゆっくり浸かった。さすが和倉温泉!いいお湯だった。
さあ、2日目はいよいよ輪島へ向かう。

弘法大師が発見したという見附島。
潮が引いているとこんなふうに道が現れる。
パワースポット、聖域の岬青の洞窟へ。
きれいで神秘的な場所だった。
白米千枚田。
ちょうど稲刈りが終わったところで残念!

この後、輪島に到着し、輪島工芸長屋へ。ここでは輪島でしかできないという「沈金」でお箸を作る体験(1500円)をした。
漆を塗った器などに細い針のようなノミで模様を彫り、そこに漆を入れ、金粉を振り布で拭うと、彫った部分にだけ金粉が入るというもの。
まずは説明を受け、練習用の漆板で彫る練習をする。その後、漆を塗ったお箸をもらい、そこに本番の模様を彫っていくのだ。
老眼が進んで手元がまったく見えないので(笑)、コンタクトを外して挑む。

失敗できないので、真剣に彫る。
これが結構難しいのだ。
彫り上がると、工房の人が金粉を振ってくれる。

私は絵心のまったくない人間だが、見本があればそれなりに真似することはできるので、スマホで検索して桜の模様を彫ってみた。本当はもう少し桜吹雪のようにしたかったのだが、そこまではできず……。
仕上がったのがこれだ。

初めてにしては、まあまあの出来?
とりあえず桜には見える。

ところが、横で自信たっぷりに大胆に彫っている夫の仕上がりを見てびっくりした。びっくりするというか、ちょっと引いた。

え?何これ……?
でたらめに傷を入れただけ?

「あかん、失敗した!鳳凰を彫ってやろうとおもってたのに!」と夫。
いやいやいや……。最初からそんな難しいの無理でしょ。
私の桜を見て、「かおり、天才ちゃうん!!」と驚愕している。
いやいやいや……。コツコツ丁寧に彫ったら、これくらいはできるのよ。
こういう時、性格が出るなぁと思った。私は絶対に「失敗したくない」と思い、身の丈にあったことを一生懸命やろうとするし、夫は根拠のない自信を持って自由にふるまう。失敗しても笑い飛ばす。いいなぁと思った。(私だったら耐えられない)

なんにしろ、沈金体験はとても楽しかった。この日に作ったお箸を持って帰れるのもいい。良い思い出になった。
この後は、キリコ会館へ寄ってからホテルにチェックインした。

輪島のお祭りで使用する「キリコ」。
輪島キリコ会館にて。

この日も素泊まりなので、近くの居酒屋を探す。また地元の人が集まるような、店主一人でやっているこじんまりとしたお店を見つけて行ってみた。
壁にぐるりと貼られたメニューを見ると、「ハチメ」「ししっぽ」「ふくらぎ」など聞いたことのない魚の名前が並んでいる。
店主に「これ何ですか?」と聞きながら注文。ハチメはメバルの仲間、ししっぽはホウボウの仲間、ふくらぎはブリのこの辺りでの幼魚名とわかった。こういうのが旅の醍醐味だなぁと思う。

シマアジとふくらぎの刺身。
甘い!震える美味さ!!
分厚いハチメの干物。
ちょっと醤油を利かせていて、おいしい!!

地酒がいくつかあったので、「能登の白菊」を注文。輪島にある酒蔵だ。
正直に言うと、北陸の酒は濃いので私はあまり好まないのだが、やはりその土地へ行って、地の食材と合わせると地酒がうまい。本領を発揮するなぁと思う。
私たちは早めに店に入ったのだが、19時を過ぎると地元の常連客や団体客が押し寄せ、小さな店はすぐにいっぱいになってしまった。

どうでもいい話だが、7人ほどの団体客(たぶん同じ会社の人たち)がいて、乾杯の時にその中の女性が「乾杯だっちゃ!」と言わされているのが耳に入り、夫とこっそり笑いをこらえた。今更のラムちゃん……?それともその方言の地域から来ている人なのかな。
なんにしろ、とても良いお店で、おいしいひと時を過ごせた。

この日も温泉に浸かって体を癒し、最終日は朝市へ。
朝から大雨の予報だったが、やはり私たちが外へ出ると雨は止む。
輪島塗の漆器をいろいろ見て、お箸とカレースプーンを買い(高いのでこれくらいしか買えないのだ)、地元の漁師の奥さんたちが売る魚の干物を何枚か購入した。(アカウオ、ハチメ、ししっぽ)

金沢へ戻る途中、気多大社だけ立ち寄り、お参りして病気平癒のお守りを買った。

「万葉集」にもその名があるような歴史のある大社だ。
敷地内の森の木からは良い気が漂っていた。

14時半頃、金沢駅へ到着。お土産を買って、またサンダーバードに乗って帰ってきた。
能登半島の美しい景色の数々、パワースポット、輪島での沈金体験、おいしい地元の魚とお酒、温泉。すべてが満足のいくものだった。
念願の輪島にも行けて、本当に良かった。
やっぱり旅はいいなぁと思う。自分の感受性が開くのがわかる。
次はどこへ行こうか、そんなことを考えるのもまた楽しみだ。

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