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「顔を上げ 少しずつ前へ」というラベルに込められたメッセージ

いま、多くの飲食店、酒販店、そして、酒蔵が大きなダメージを受けている。テレビで取り上げられるのは飲食店ばかりだが、酒蔵も本当に厳しい状況で、多少なりとも日本酒業界に関わらせていただいている身としては胸が痛い。何もできない自分がもどかしい。

先日、京都の伊勢丹のお酒売り場で、こんなお酒を見つけた。

高知県の酔鯨酒造が販売している「酔鯨 純米酒 顔を上げ 少しずつ前へ」

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青空に飛行機雲。「酔鯨」にしては珍しいラベルだなと思って手にとって見てみたら、「ラベルに込められたメッセージをバトンで繋ぐお酒」とのこと。

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『まだ先が見えないコロナ禍、いろいろな混乱だらけです。悲しいこと、めげること、山のように。ですが、少しずつ顔をあげ、少しずつ、少しずつ前に進んでいきたい。』

帰って調べてみると、富山県の桝田酒造店さんの発案で「満寿泉」からスタートし、宮城県「伯楽星」→高知県「酔鯨」→兵庫県「龍力」→大分県「八鹿」→滋賀県「松の司」にバトンを繋ぎ、同じラベルで発売したという。

ちょうど酔鯨酒造さんから毎月届く「SUIGEI JOURNAL7月号」がうちに来たところで、その誌面にもこのお酒についてこう書かれていた。

酔鯨酒造は、この度「酔鯨 純米酒 顔を上げ 少しずつ前へ」を緊急発売いたしました。新型コロナウイルスの感染拡大が収まることはなく、今もなお世界中が大きな影響を受けています。これまでに経験したことのない状況の中、全国の皆さまが不安な日々を過ごされていることと案じるばかりです。私たち酒蔵にできることは、一歩でも前進を恐れず、美味しいお酒を造っていくことだと考えております。今だからこそ皆さまにも顔を上げ、明日への
一歩を踏み出してほしい
、という「想い」を込めて地方の蔵元がリレー形式でお酒をお届けします。

これを読んだ後で、もう一度ラベルに書かれたメッセージを読むと、胸がいっぱいになってしまった。

誰に向けてのメッセージなのか。

医療従事者の方、大切な人を亡くされた方、今も厳しい状況におかれている飲食店や酒販店の方、表にはあまり取り上げられないが、大変な思いをしているさまざまな業界の方々……。おそらくこのお酒を手に取った方への応援メッセージなのだが、それだけではなく、同じようにお酒を造る蔵元さんたちへのメッセージも含まれているように思えた。

お互い大変だけど、頑張ろう!

絶対に美味しいお酒を造り続けよう!

美味しいお酒で皆を笑顔にしよう!

今は苦しいけど、顔を上げて少しずつでも前に進む方法を考えよう!

そんなふうに、全国の同業者である酒蔵さんへメッセージを送っているように思えたのだ。

このお酒をリレーしている6蔵のうち4蔵を過去に取材させていただいたが、どこも信念を持って丁寧にお酒造りをする素晴らしい酒蔵だったし、味も間違いない。

もし、どこかでこのお酒を見つけたら、ぜひ手に取ってみてほしい。ネットでもいろいろ買えるところがあったので、時間やお金、そして肝臓に余裕のある方は、

「 顔を上げ 少しずつ前へ 日本酒」

で検索してみてください。(そして、限りある肝臓を少し捧げてください)

ちなみに、私が飲んだ酔鯨は、きれいな酸と酔鯨らしいシャープなキレのあるいいお酒だった。和食に合う!!

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がんばれ! 全国のお酒に関わる人たち!! 

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