8 我が子に対して我々が最初にできること / はるか

 子供を迎える準備として、遺伝外来に行った。夫の網膜芽細胞腫という病気は、49パーセント子供に遺伝する。
多くの人にとっては重々しい内容になってしまうかもしれない。しかし私たちにとっては以前からわかっていた事実であり、客観的にとらえていた。
 私の体調が少し安定した7月初旬、夫と築地にあるがんセンターに行った。夫が以前ここの眼科にかかっていたことや、この病気の治療実績が多いことからここにある遺伝外来に行くことに決めていた。
当日はいつ吐き気に襲われてもいいよう楽天で買ったエチケット袋を持ち、暑さ対策をし新幹線に乗った。幸いなことにその日は調子が良かった。
新大阪の駅弁コーナーに美味しそうなカツサンドを見つけ、夫に交渉し買ってもらったほどだ。昼食として新幹線で食べた高いカツサンドは思った以上に美味しく、意気揚々と東京に向かった。
 遺伝外来では優しい先生やカウンセラーさんに迎え入れられ、暖かい雰囲気に安心した。子供が生まれてからする遺伝子検査や眼底検査、遺伝した場合にどんな治療をするのかと様々な説明を受けた。そこで遺伝しても多くは治療に寄り視力が残せることを知った。
また遺伝すれば子供だけでなく、その子供にも遺伝の可能性があるということも知った。その事実を聞いた時、私の心はずしんと重くなった。当然の話だが、私にはそこまで想像しきれていなかった。
 診察後病院の食堂でご飯を食べつつ、今まで以上にまだ見ぬわが子の遠い未来に思いを馳せた。もちろん遺伝はしてほしくない。小さなころから痛い治療をしなければならないことも辛い。
それでも遺伝したら私たちは子供に何ができるか考えていきたいと思った。もしかすると遺伝の可能性がありながらなぜ自分を生んだのか、子供自身が自分の存在に悩み、疑問を投げかける日が来るかもしれない。
それまでに子供が納得のいく答えを見つけられなかったとしても、心から望まれて生まれてきたこと、たくさんの人に愛されていることを私は伝えたい。そして病気をどうとらえ受け止めていくか、一緒に考えていきたいと思う。
(続く)

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