我が子に対して我々が最初にできること / はるか (後編)


(前編の記事はこちら)
 私たちの子供には、網膜芽細胞腫という目の病気を持って生まれる可能性があった。
遺伝しているかどうかは、生まれてからの遺伝子検査でわかる。ひなちゃんの遺伝子検査の結果が出たのは生れて1ヶ月後のことだった。
結果ひなちゃんには病気が遺伝しなかった。私は夫から報告を受けた瞬間、ただ安心した。少なくとも今後この子は検査や治療から生じる苦痛を経験しなくてよいという思いからの安堵だった。
ひなちゃんは生後4日目に眼底検査も受けていた。その時は予想通り大泣きし、目ヤニも数日続いた。私は、もしも遺伝すればこんな検査を繰り返すのかと思うと、ひなちゃんの前で明るく居続けられる自信がなかったのだ。
もちろん遺伝したことでその先不幸になるというわけでは決してない。病気や障害があったとしても、元気に生きることや幸せになることはできるからだ。
私たち夫婦に取ってもひなちゃんに取っても、病気が遺伝した人生もそうでない人生も、それぞれに辛いこと、楽しいことは同じだけやってくると考えている。
 私は病気の遺伝をあくまでひなちゃんの人生最初の分岐点ととらえていた。遺伝しなかった事実は、ひなちゃんが全盲夫婦の子供であり、自身は病気や視覚障害を持たない子供として生きていく未来を決めた。そんなひなちゃんとこれから3人で、山あり谷あり味わい深い人生を歩んでいく。

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