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家出人調査日記 東北編#3

※個人名や地域は特定を避ける為に名称を変更しています。

今回来ている東北県
ざっくり東側は海で西側が山間部という地形になっている。

東北新幹線でとある駅まで行き、そこから在来線に乗り換え到着した街は東北県の中でも内陸部に位置する。

既に調査を開始している杉原に奥さんから聞いた細かな情報を伝えた。
多少調査の方向性を変更するかもだが、それはホテルに着いてからでも遅くはない。


さて、私が受け持つエリアは基本的に山間部だ、まだ時間が早いのでロードサイドの店舗等は閉まっていない。

都心の場合、家出人の趣味嗜好によって話を聞く店舗を厳選し訪ねていくのだが、地方の場合は別だ。

とにかく開いている店舗を片っ端に訪ねて行かないと時間が経てばどんどん店が閉まっていく。


また、今回は車で失踪しているので、人を探すよりはるかにやりやすい。

例えば、渋谷のスクランブル交差点を行き交う人々の中から一人を見つけるのは困難だが、車の場合は車種、色、ナンバーと特定する要因がたくさんある。



最初に訪れたのは有名な全国展開の古本屋、棚の整理をしている大学生ぐらいの男の子に

「お忙しい時にすみません、家出した男性を探しておりまして、いくつかお聞きしたい事があるんです。
今、店長さんか社員さんっていらっしゃいますか?」

「家出ですか?!店長はさっき帰っちゃったので、社員を呼んできますね。」



初手で相手に話す際「失踪人」と言うより「家出人」と伝えた方が誰でもイメージしやすいのでその辺りも気をつけている部分でもある。

ただ、お硬い場所での聞込みには失踪人とあえて伝える場合もある。


「すみません、お待たせしました。どうされました?」

「お忙しいところすみません、実はこの近所に住んでいる30代の男性が急に失踪しまして。」


話をじっくり聞く場合は「家出」から「失踪」に変える。
失踪はいつでも「急」なのだが、あえて「急」をつける事で緊張感を伝える意図がある。


ビラを取り出し見せながら
「この人なんですが、ずっと立ち読みしているお客さんなんかで見たことってありますか?」

「うーん、確かに長時間立ち読みしてる人はいるけど、この人は見てないかなぁ。」


こういったお店の場合、ただお客さんの中でと伝えても一日で何百人も来店するのでまずわからない。
少しでも印象が残る様な「長時間の立ち読み」「コーヒーだけの注文で長時間いる人」「店内のベンチにずっと座っている人」から思い出してもらう。

また、このように聞いておけば以降、長時間の立ち読みをしている人をじっくり見てくれる効果も期待している。


「ビラにも書いてるんですが、2日前の朝から車で失踪しているんです。お店の駐車場にこの車が停まっていた記憶なんかどうですか?」

「長時間停めてる車はナンバーとかも控える様にしてるんですが、この車はリストにのってないですね。」

「そうですか。
申し遅れました、私この方の奥様から依頼を受けて動いている探偵事務所の青野と申します。」

そう言いながら名刺を渡す。

「先ほど横浜から到着したもので、この辺りの事は全くわからないんです。」

「え?探偵さん??横浜から???」



都心の人間ですら周りに探偵を生業としている人はそうそういない。

地方ともなるとドラマの中でしか存在しない職業だと思っている人も少なくない。

決して地方を馬鹿にしているのではなく、単純にインパクトを残しているのだ。

インパクトが強い分、私が立ち去った後何日間も真剣にお客さんの顔や駐車場に停まっている車のチェックをしてくれる効果が期待できる。
逆に都心だとこの様なビラを持ってくる人に慣れているので「後で見ときますね」と簡単にあしらわれ、ひどい時はそのままビラを捨てられたりもする。



「この周辺に余りお金をかけずにずっと時間潰し出来る様な場所ってありますか?」

「この方、荒巻製作所という会社に勤めているのですが
何かその会社の噂とか聞いたことあります?」

「地元の人しか知らない穴場的なキャンプ場ってご存知ですか?」

「もし、あなたが家出した場合ってどこに行きます?」


基本的な質問はこんな感じで、次の有力エリアや地元の人達しか知らない場所の探りを入れている。



だが、今回はこの質問も入れざるを得ない

「この方、自殺の可能性もあるのですが
この近辺で有名な自殺スポットとか知りませんか?」



そう、自殺スポットは規制によりネットには載らない。

ここで一つ質問です。
有名な青木ヶ原樹海や東尋坊、華厳の滝とあなたの地元で有名スポット以外でいくつ言えますか?

ほとんどの人が答えられないと思います。
なので自殺を考えている人は全国的に有名な場所か地元で有名な場所に行くしかないのです。



「自殺ですか、、、
私、隣の市から通ってるのでこの辺の自殺スポットはよくわからないんです。
ちょっとアルバイトの子達に聞いてみますね。」

「バイトの子達にも聞いたんだけど、皆知らないって返事でした。」

「いえいえ、ありがとうございます。
最後に、厚かましいお願いがありまして。
こちらのビラをスタッフさんの休憩室や事務所なんかにしばらく掲示していただけませんか?」

「もちろんです、お店の窓とかにも貼っておきましょうか?」

「大変ありがたいんですが、もし家出人がこちらの店に来た際、このビラを見てしまった場合もっと遠い所に移動してしまう事が怖いんです。
現状、まだ家の周辺にいる可能性が高いのでスタッフさんだけが見える場所でかまいません。」

「わかりました。明日店長にも話しておきますし、閉店後スタッフにも周知させておきますね。」

「お忙しい時にお話していただきありがとうございました。
些細な事でもかまいません、何か情報ありましたらビラに連絡先を書いてるのでお電話下さい。」

「わかりました、早く見つかるといいですね。」


こういった感じでどんどん聞き込みを行い情報を仕入れていく。



23時を過ぎ、小売店等の店舗はほとんど閉まりコンビニメインで聞き込みを行っている。

車とはいえ、一軒一軒の距離が離れ移動時間が多くなる。
昼から新幹線での移動もあり若干の疲労を覚え始めた頃、とあるコンビニで今回の家出人調査の流れを決定するような情報を得た。


横浜の探偵 ブルーフィールドリサーチ
〒240-0023
神奈川県横浜市保土ヶ谷区岩井町363-15
TEL:045-577-4979

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