プーランク:「シャンパーニュのブランル」と「フランセーズ」
♪気に入ったピアノの小品を紹介します。演奏も録ってみたので、よかったら聴いてください。(今回は2曲あります。)
19世紀後半〜20世紀前半の、フランスの様々な作曲家について紹介されている本を読んだときに、特に興味をもったのがフランシス・プーランク(1899-1963)。彼のピアノ作品をひととおり聞いてみて、印象深かったのが「フランス組曲」です。全部で7曲あるうちの5曲目「シャンパーニュのブランル」が特に好きになりました。
この曲の旋律(メロディー)はプーランクのオリジナルではなく、16世紀の音楽家、クロード・ジェルヴェーズが作曲したものだそうです。(どおりで、古楽好きな私が惹かれるわけだ…!)1935年、プーランクは『王妃マルゴ』という、歴史上の人物を題材にしたお芝居のための音楽を手掛けることになりました。それで当時活動していたジェルヴェーズの旋律を素材として、音楽を作ったのだそうです。
「ブランル」というのは「揺れる」という語源からくる、フランスの庶民的な踊りです。数組の男女が輪になって、あるいは列を作って集団で踊るそうです。村のお祭りの踊り・・・みたいな感じでしょうか。
優美な旋律に、おしゃれな和音がついて、いい感じ♪と思って聴いていましたが、そのうち「フランス組曲」とは別なのに、妙に似ている曲があることに気づきました。
それが「フランセーズ」。
こちらも、「フランス組曲」と同じく、ジェルヴェーズの旋律を素材にした作品でした。だから似ていたんですね。(でもこの曲の資料は、全然見つかりませんでした・・・)
私ははじめ「フランセーズ」のほうが、より好きだったのでせっせと練習しました。右手から左手へ、音符がつながって流れるところが華やかで好きです。細かい音符の飾りや、強弱の変化の感じがバロックの雰囲気を出していたので、古楽器のオーケストラが、軽やかにいきいきと演奏している様子を思い浮かべて弾きました。
いっぽう「シャンパーニュのブランル」は、繰り返し弾いているうちに、なんとなく、緑と土の匂いがするような…もの悲しくてノスタルジックな空気を感じるようになり、弾くのが楽しくなってきました。
日が暮れて、徐々に深みを増していく色…はじめは旋律に彩りを添えていた左手が、途中から旋律と対比するような、低音の響きに変わるんですよね、それでなんとなくそういう感じになります。そしてお陽さまがが完全に沈む前、地平線が一瞬輝く・・・みたいな音で終わります。(※個人のイメージです)写真でしか見たことないけど、シャンパーニュの葡萄畑の空気を想って、静かな気分で弾きました。
・プーランク本人が弾いた「フランス組曲」の録音(naxos)https://ml.naxos.jp/work/4002910
・「フランス組曲」の楽譜はこちらhttps://imslp.org/wiki/Special:ReverseLookup/309038
・「フランセーズ」の楽譜はこちらhttps://imslp.org/wiki/Special:ReverseLookup/309034