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グロヴレーズ:「絵の暦」より イエスの小さな連祷

♪お気に入りのピアノ小品を紹介しています。
演奏も自分で弾いて録音しています。ぜひ一緒にお楽しみください!

 今回紹介するのは祈りの曲です。「連祷」というのは、キリスト教のお祈りの形式のひとつで、詳しくはわかりませんでしたが「私的なお祈り」のようです。

 いま、世の中ではさまざまな事が起こって、たとえ自分に直接の影響がなかったとしても、やっぱり心はざわつきます。そんな時にこの曲は、窓辺から差し込む朝日のような清らかさと、静けさをくれます。

 和音のひとつひとつが、光を含んでいるような美しい曲です。でも、ただ「きれいだな」と思って弾くのは違うんだな、と…。
 最近読んだ、音楽の演奏の考え方についての本に「輝かしいだけで中身のない、薄っぺらなものにしかならないだろう」というフレーズがあって、それが今すごく刺さっています。少なくともこの曲は、宗教的な内容を多少含んでいるので、それを読み取らずして演奏するのは、あまり正しいやり方ではないなと思いました。

 では、どうやって理解するのか?というと…。実は、この曲には「詩」がついているんです。訳したものは動画の下に載せていますので、聴く前でも、後でも、(詩だけでも、)ぜひ読んでみてください。

Youtubeへのリンクはこちら

”イエスの小さな連祷”

天使とマリアのイエス、
絵に描いた木のような幼い姿
花の星の服を着て
私に微笑みかけてください。

イエス、私はおびえています
草を食む神の子羊のように
バラ園のとげ―
私に微笑みかけてください。

愛らしい花の冠のあとに
いばらの冠をかぶった不幸なイエス
私に微笑みかけてください。
..........................
十字の岐路に立つイエス、
死んだ鳥のように十字架へつるされ
釘打たれた手は薔薇の色に染まった

貧者と王のイエス、
私に微笑みかけてください。

 みなさんは、どんな印象を持ちましたか?
 

 曲の終盤―はじめの旋律に戻る直前に、遠くで鳴る鐘のように「ソラファソ」という旋律が印象的に響きます。楽譜上の話ですが、このジグザグに動く4つの音符は、線で結ぶとクロスすることから「十字架の音形」と呼ばれています。作曲家が宗教曲で使う手法のひとつです。

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 この曲は「絵の暦(L’Almanach aux images)」という8曲からなる曲集のうちの、一番最後の曲です。タイトルは「心の暦」と訳されていることもあって、”images"をどう訳すかで全く違った印象ですね。フランスの作曲家、ガブリエル・マリ・グロヴレーズ(1879-1944)が1911年に作曲しました。(当時32歳、今の私と同い年!)作曲活動のほかにも、ピアノ教師、指揮者、音楽評論家などいろいろなお仕事をしていたみたいです。作品はたくさんあったようなのですが、今はほとんど知られていません。なんてもったいない!

 曲集の8曲には、それぞれに詩があります。同時期に活躍していた詩人トリスタン・クリングゾルによるもので、もちろんフランス語です。…和訳が見つからなくて、訳詩は、無謀ですが自分でやってみました。合っているのは7割ほどでしょうか?なんとなくこんな雰囲気なんだな〜と思ってください。そしてフランス語に堪能な方、おかしな部分をみつけたら是非とも教えていただきたい…!!(フランス語の原文は、この記事の一番最後に載せておきます。)

この曲集はとても気に入っていて、いつか全曲弾けるようになりたいです!
それでは最後までお読みいただき、ありがとうございました☺️

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#音楽 #エッセイ #コラム #クラシック音楽 #ピアノ #フランス音楽  


以下、今回ご紹介した曲の、詩の原文です。
(※アクセント記号がついていません…)


PETITS LITANIES DE JESUS

Jesus des anges et des Maries,
Petite image peinte de bois,
En robe d'etoiles fleurie,
Souriez-moi.

Jesus, ma pauvre ame s'effraie
Comme un agneau divin qui broute au bois
Les epines des roseraies:
Souriez-moi.

Jesus, ma pauvre ame s'effraie
Comme un agneau divin qui broute au bois
Les epines des roseraies:
Souriez-moi.

Jesus qui avez eu le doux malheur
De la couronne de ronces des bois
Apres la couronne adorable de fleurs,
Souriez-moi.

..........................
Jesus des carrefours et des chemins,
Pendu comme un oiseau mort aux croix de bois,
Avec les roses des clous aux mains,
Jesus des gueux des rois,
Souriez-moi.

(Tristan Klingsor)