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#139 私がWEリーグをほとんど見ずに終わってしまった理由〜WEリーグが狙うべき客層はJリーグファンじゃない〜


5月22日を以って、初年度のWEリーグが終わった。
優勝はINAC神戸レオネッサ。20試合戦って失点一桁で終わるとは………。浦和とベレーザを含めた3チームで優勝争いが推移されるのは誰もが予想しただろうけど、ここまでの数字になるとは。…だって失点一桁よ?…やばくね?星川敬さんってやっぱ凄いのか…。


それはさておき、リーグ閉幕後、一つの記事をきっかけに論争が繰り広げられた。


「WEリーグはなぜブームにならなかったのか?」
…というタイトルをそのままテーマに書かれた記事である。
WE Love 女子サッカーマガジンではWEリーグやなでしこジャパンのみならず、その下部リーグを取り上げた記事なんかも多いので、それを書く立場から見える理想と現実の乖離みたいなものもあったのだろうと推察する。
そしてこのツイートにはサッカーファンからのリアクションもなかなかに大きく、特に"理念"の捉え方について多くの人が言及していた。そしてちゃっかり自分もちょっとだけ噛んだ(理念の話ではないけど)。



…で、今回は私として…というか私なりにも、この機会にちょっと考えてみようと思う。


……なんて偉そうに言ってみた。だが本来、私はWEリーグについて偉そうにモノを言う資格など微塵もない。

その理由は簡単である。なぜなら私はWEリーグをほとんど見ていないからだ。

興味と関心がまるでない…という訳ではない。
実際、ノエビアスタジアム神戸で行われたINAC神戸レオネッサvs大宮アルディージャVENTUSの開幕戦は現地に観に行った。


その後に関しても、WEリーグの結果はシーズンを通して追ってはいた。
だが、この開幕戦以降…スタジアムに行ったか?或いは試合開始の時間に合わせてDAZNの前に座ったか?そう聞かれれば答えはNOである。結果は追っていた。だが言い方を変えれば、結果を追ってしかいなかった。

なので最初はあまり、上記の記事にあるようなWEリーグ初年度の総括的な事であったり、或いは今後に向けて…的なところは首を突っ込むつもりはなかった。
ただ、少し間を置いて考えてみると……どうせこのNoteはメディアではなく個人ブログな訳で、少々好き勝手な事を書くことは出来る。であれば、WEリーグに関心はあったはずなのに、なぜ結局ほとんどリアルタイムで見なかったのか…という完全に「そんなのお前の事情だろ」的な事を振り返って文章として残すのは、意外と一つの視点として意味がない訳ではないような気もした。

ここからはうだうだ文章を書くので、先に自分なりの結論から言わせてほしい。
自分がなぜWEリーグを見なかったのか…この点をを考えれば考えるほど、自分なりの答えは一つしかなかった。WEリーグが持続可能なリーグとして発展する為に狙わなければならない層は、少なくともJリーグファンでは無い。


とは言っても、普通に考えれば最も最初に考えたいターゲット層がJリーグファンを始めとした、既にサッカーを観ている人間になるのは自然な流れであるし、既にサッカーを観る習慣がついている層を狙うのは当然の事。そこを取り込む事が重要なのは言うまでもない。浦和やベレーザが行ったような男子チームとのダブルヘッダー形式のイベントは有意義だと思うし、Jリーグファンを流入させることも十分に出来るだろう。

実際に、私が開幕戦を観に行ったのは元々現地やテレビでサッカーを観戦する習慣があるがゆえの話である。女子のプロサッカーリーグの開幕戦が、自分の行動範囲の中である神戸でやる、事前知識もある、じゃあ行ってみるか、と。
でも私はあれ以来、WEリーグの試合を観に行ってはいないし、日々の結果の確認しかしていない。DAZNでもあまり見ていない。別に開幕戦がつまらなかったとかそういう事もない。確かにスコアがスコアだったので、そういうどっちに転ぶか的なスリリングさは無かったけど…Jリーグとはまた趣の違う雰囲気を楽しむことが出来た。悪印象なんて持っていない。


じゃあなぜ見なかったのか、と言えば答えは一つしかない。
自分の中での優先順位が低かったのだ。
見ようという意欲が無かった訳じゃない。だが、自分の中でWEリーグがその上位にくる事が無かった。


一つ私自身の経験を例として挙げるとすると、2021年の6〜7月頃、普段のJ1・J2に加え、ガンバ大阪が参戦するACLがズドンと入り、ヨーロッパではEUROが始まった。更に日本代表戦もフル代表・五輪代表とやたらいっぱい試合があって、試合を見過ぎて、正直途中からしんどくなってきた。要は私は頭の中でサッカーが飽和して、ほぼパンクしかけていた。
見ようとさえ思えば、時間と物理的に視聴可能な試合を全て見る事も出来た。だが、私はサッカーが好きでも1試合に何試合も何試合も見れるタイプではないし、よっぽどの試合でも無ければ結果を知ってから見逃し配信で90分見られるタイプでもない。私の中ではガンバ大阪と京都サンガFCの試合が優先順位の頂点に常にいる。そこには日本代表戦であったり、この時であれば五輪やEUROのような国際大会がここに絡む。物理的には全部見れた。だが、自分の頭の中の「サッカーを楽しめるキャパ」を超えた私は、まずガンバ以外の3チームのACLを見なくなった。それからガンバ、サンガ、EUROを含めた代表戦に追われ、一時期はガンバのいないJ1も見なくなった。悪い言い方をすれば、優先順位の低い方から切っていったのだ。


私がWEリーグを観なかったのも、結局はそういうところが原因になってくる。そして、WEリーグが当初の期待値通りの数字を残せなかった理由と直結させようとは思っていないが、同じような理由でWEリーグをスルー状態にあるサッカーファンは少なくないんじゃないか、と想像する。
WEリーグに悪感情がある訳ではない。だが、私の中での優先順位には常にガンバとサンガがいる。この時点でWEリーグは、少なくとも私の中の優先順位の2番手以内に入ることはない。そして私の場合、次にJ1にJ2、海外サッカーと続いていく。そこに定期的に入る日本代表戦だったりが入ってくる。見たい試合、見れる試合が膨大に増えると、見る事に疲れ始めてくる。となると自分のパイの中に、WEリーグを組み込める余地はなかった。他に試合が被っていなくてWEリーグを見れる状況にあったとしても、そこに至るまでにサッカーを観すぎたせいで「今日はちょっと休むか……」みたいな感情になってくる。そもそも、各々が仕事や学業、人との交流など私用だってあるだろうし、WEリーグという存在に対して提供できるキャパシティーの空きが残っていなかったのだ。
そういう意味では、WEリーグが開幕した直後というのは、Jリーグの順位決定に緊張感が漂う季節になってきて、ルヴァン杯も4強が出揃い、ACLも決勝トーナメントが行われていた。日本代表のアジア最終予選も始まったし、欧州リーグも開幕してUEFAチャンピオンズリーグが開幕したのもこの辺りの時期。WEリーグに関心を示していた人の多くは元々サッカーを観ていた層だろうけど、果たしてこの中のどれだけの割合がWEリーグを優先順位の上位に置いていたのか…という部分もある。
これは浦和やベレーザ、大宮・千葉・新潟・長野・広島のようなJリーグ傘下クラブでもそうで、彼らは男子チームのファンだった人にもリーチがしやすい分、じゃあ男子と女子の試合の日が、時間が被った時に彼らがどちらを優先的に見るだろうか…という話になってきてしまうのだ。

誤解のないように言っておきたいのは、こればっかりは「WEリーグが悪い」という話ではないし、WEリーグを批判できる話でもない。完全に私個人の話である。
ただ、特にJリーグを始めとしたサッカーが既に好きで、女子サッカーやWEリーグに興味はあるけど結局ほとんど見ませんでした、という人に集計でも取れば、私に近い理由でWEリーグを見なかった人は少なくないと思う。私がWEリーグが見ていないのはWEリーグが悪いのではないし、WEリーグに批判要素がある訳でもなく、あくまで私個人の事情。ただ、この"個人"は多分私だけじゃない。そもそも現代はコンテンツが世の中に溢れすぎている。例えばサブスクで映画や音楽を見たり、土日には好きなアーティストのコンサートに行ったり、みたいな趣味もここに入ってくる。エンターテイメントは"好きなエンタメを選ぶ"時代ではなく、"好きなエンタメのどれを切るか"という時代に入ってしまった。その点、既にJリーグや海外サッカーを好んで見ている人がWEリーグに興味を持ったところで、元々一番好きだったものを逆転するのはほぼ不可能だろう。例えば私であれば、ガンバやサンガより優先してWEリーグを見ることはまずない。更に言えば、友人にサッカーから野球に鞍替えしたような人間がいるが、それは他競技というか全くの異文化だからこそそういう現象が起きたのであって、基本的なシステムやルールは同じ競技の中にいるJリーグとWEリーグの間でそれを起こす…というとは不可能にすら近いと思っている。
何より、WEリーグ含め、全てのエンタメは土日を中心に行われる。浦和やベレーザのようにJリーグの傘下にあるクラブは主催試合に関してはその辺りの配慮もしているだろうが、基本的にJリーグとWEリーグの試合日は被るのだ。だからWEリーグは最終的にはJリーグのファン層と客を食い合わねばならない。そういう状況になると、上で書いたような優先順位の問題が発生してくる。We Love 女子サッカーマガジンを読んで、なぜ自分がWEリーグを見なかったのかを初めて考えた時、色々と議論されている理念や敷居の前に、そういうもっと"そもそも論"なところなんじゃないか…と思った。そもそもこれはWEリーグのみならず、Jリーグ、ひいては欧州のトップクラブだって少なからず直面している問題な訳で。




だからWEリーグが最も狙わなければならないのは、Jリーグファンのような既にサッカーを観ている人間以上に、現段階でサッカーにほとんど興味のない人間だと思う。なかなかに難しいことを言っているのは百も承知として。
そういう人間をWEリーグが取り込めたら、そういう人達の中の順位として、少なくともサッカーの中ではWEリーグが一番上に来る。WEリーグが考えなければならないことは「サッカーが好きな人間にどうやってWEリーグにも興味を持たせるか」より「WEリーグをサッカーの入口にすること」なんじゃなかろうか。そういう意味では、いま現在散々議論されている「理念」は角度としては案外悪くないのかも、とも少しだけ書いていて思うようにもなった。確かにそれに紐付いた流れと風潮が少し敷居を高くしてしまっているし、ましてや理念だけで客が来る訳じゃないし、それ自体はちょっとどうなんだろう…と思う部分もあるけれど、これまでJリーグにも興味を持ってこなかった人を振り向かせる為には独自色は確かに必要になってくる。

個人的に期待したいというか、WEリーグの起爆剤になれる要素があるとすれば、Jリーグクラブのない県にWEリーグのチームが生まれる事。もちろんその難易度が計り知れないのはJリーグの歴史を見ていれば明らかとはいえ「おらが町のクラブ」みたいなものが生まれて来れば、街の人達にとって彼女らは言うまでもなくオンリーワンの存在になる。そういう流れで立場を作ったクラブが一つ出てきた時、WEリーグの風向きは少しずつ変わるような気もする。


ともかく、Twitterでも記者さんも言っていたが、前述のWe Love 女子サッカーマガジンをきっかけに多くの議論が起こった事はWEリーグが持つポテンシャルの証左と形容する事が出来る。
いつの日かWEリーグが、Jリーグのサブではない確固たる独自の立ち位置を築き上げてくれるその日を期待している。


↓普段はこっちのブログでガンバ大阪やら京都サンガやらについて語ってます↓

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