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#191 2024年J1第25節 京都サンガFC vs 名古屋グランパスのマッチレビューと試合考察(Note板)


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言ってしまえばラッキーな試合でした。その部分は間違いなくて…今日の勝利は「チームとして鵜呑みにしてはいけない勝利」であり、それはこっぴどい負け方をしても会見ではポジティブな言葉を並べる事の多い曺監督ですら今日は反省の弁が先に出ていたところに見ても明白。前半の内容を見れば「11対11でも勝てていた」とはとてもじゃないが言えないです。「勝って反省できるのはいいことかなと思います」という試合後の監督のコメントが全てではあるのかなと。

まず名古屋の今日の戦い方は「対京都戦のゲームプラン」として完璧だったと思います。基本的に名古屋はプレスの整理が上手いチームという印象があるんですが、基本的にサンガはDFラインから一度3トップに当てたいと考えている中で、DF陣にはハイプレスをかけてロングボールを蹴ってもブロックされてしまう状況、横パスやバックパスしか選択肢のない状況をつくる事でサンガの前進はある程度阻む事ができる。逆に中盤がボールを持ち出した時はリトリート気味に守り、今度はボールホルダーではなく3トップへのコースを切る守備に徹する。ここのプレスの使い分けを見事にやられてしまった事で、前半のサンガはトゥーリオ辺りが頑張って個人突破するくらいしか攻め手が無くなっていました。あの部分は名古屋の前線にパトリックと山岸祐也というプレスの掛け方が以上に上手いFWが2人もいる強みも活かした形と言えるでしょう。
加えて今日のサンガのCBはアピアタウィア久と鈴木義宜のコンビでしたが、アピアタウィアが相手にぶつかり鈴木がカバー…という役割分担を明確にしている中で、中盤がハイプレスに駆り出されてしまったところをロングボールでかわされ、アピアタウィアがパトリックと山岸のどちらをケアすべきかの選択肢が絞れなくなっていました。そこに森島が入る事で、森島のゲームメイクのセンスを持ってすればパトリックや山岸が触れたボールをフォローするだけでそれが決定機の2つ前になってしまう。代表ウィーク明けの試合を異常に苦手としているサンガは良くも悪くもリズムとテンポが命のようなチームで、そういう構図に名古屋の選手のタイプとクオリティが完全に合致していた。長谷川健太監督もそれを認識していたからこそ「対京都」を強く意識したゲームプランを仕込んでいたように思います。内心、これ5月の広島戦(●0-5)みたいになるんじゃないかって過った瞬間もありましたし…。



ただ後半に関しては、試合を決定付けたのが内田の退場であった事は間違いありませんが、前半の惨状を踏まえた上での後半の入り方は素晴らしかったと思います。
監督が明確な指示と修正を与えたのか、或いは心理的なアプローチで開き直れたのか、あの状況から後半の立ち上がりにしっかりと反撃姿勢を示せた事は良かった。特に後半は金子をアンカーに戻し、平戸の位置を少し下げた。これによって前半から機能しまくっていたDFラインに対する名古屋のハイプレスの対象に中盤の平戸と金子を引き込む事ができ、リードしているはずの名古屋が若干前がかりになっていて、3トップに当てるというよりも3トップが背後を狙えるようになった。ましてや中盤省略の間を縫うように走れる松田天馬を投入した事で前と後ろをリンクさせられたのは大きかったなと。実際、内田の退場のきっかけとなった平戸→原のラインブレイクはそういう流れで訪れた場面でした。今日の名古屋は11人である事を前提としたプレスの管理をしていましたから、どう見積もれど少なくとも18位以下の訳はない戦力を持つサンガはそれで瓦解したスペースを独力でこじ開けられるだけのタレント性は持っている。ましてやサイドのスペースをどう利用するか…みたいなところはマルコ・トゥーリオの好調や、本来は中に居て欲しいけれど高精度のクロスを入れられる原のボールに飛び込めるエリアスの加入で劇的に向上した部分ですから、そこをしっかりと突けるようになったところは復調の要因ではあるでしょう。
サンガにとっては名古屋の交代策も優位に働きました。パトリックはどの道早めに下げる予定だったでしょうし、森島はあのまま放置していれば2枚目のイエローを受ける可能性もあったので、相手の長谷川監督の采配ミスと言うにはあまりにも酷と言いますか、あの時点ではあれが最善だった事は間違いないと思います。ただ、サンガにとってはパトリックと山岸と森島に怯えていた状況が「山岸だけ気にしておけばいい」という状況に変わった事は、守りやすくなったというよりもチーム全体として攻撃態勢に転じやすくなったというメリットがあった。森島がいたら、森島が受けた時に山岸に走られるカウンターが怖くて思い切った攻撃参加は難しくなっていたでしょうし。そこはもう、名古屋からしたら「不幸だった」というしかない部分はあったように感じました。


繰り返しますが、曺監督が「勝って反省できるのはいいこと」と語ったように今日の勝利は手放しで喜べるものではなく、11対11でも勝っていたとは言えないようなゲームでした。あの退場は単なる数的優位のみならず名古屋のプランの瓦解がセットになっていましたし、あそこから流れが一変した事は自然の摂理と呼ぶべきでしょう。
しかしながら、良い内容や有利な展開ながら敗れた時によく使われるフレーズが「良い時間帯で点を取れなかった」「取るべき場面で取れなかった」「数的優位を活かせなかった」などである事を考えると、少なくとも今日のサンガはよくある言い訳になり得る要素をちゃんと潰せる事が出来ていた。要はしっかりと機を捉え、風向きに乗ることができたんですね。考えてもみれば…長い歴史の中で、サンガのそういう姿を見た記憶ってあまりないんですよ。スポット的にはそういう試合があったとしても。特に今日は代表ウィーク明けの試合を苦手とするサンガだけに、前半が終わった時は「あー、またこれか…」と思った方は多くいる事でしょう。しかしながら、結局のところ大事なのは一つ一つの機をしっかり掴む事であり、一つ一つの風と流れにしっかりと乗る事であり、その2つの積み重ねが最後に勝点という形で数字になる。サンガがそういう胆力みたいなものを少なからず持てるようになった事は喜ばしいなと。
…結局、現地で観てて一番心揺さぶられるのはこういう試合だからね!

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